【W杯】ザックにパワープレー禁止!原専務理事直言!日本流貫け
◆ブラジルW杯第13日 ▽1次リーグC組 日本―コロンビア(25日、パンタナル・アリーナ)
日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(61)が痛恨のドローに終わったギリシャ戦から一夜明けた20日、日本サッカー協会の原博実専務理事(55)と緊急会談を行った。ここまで2試合で勝ち点1で、自力での1次リーグ突破の可能性が消滅。コートジボワール戦に続き指揮官が指示したパワープレーに同専務理事は「このチームには合わない」と禁じるよう注文した。決勝トーナメント進出へ勝利が絶対条件のコロンビア戦(24日・クイアバ)へ協会が必死でバックアップした形だ。
日本サッカー協会の現場責任者がついに動いた。痛恨ドローのショックが覚めやらぬギリシャ戦の一夜明け。原専務理事がザッケローニ監督の元を訪れ、チーム立て直しへ緊急会談を持った。「監督ともきょうも話しました。僕も上から見ていて感じたことは話しました」。1次リーグ突破へ黄信号がともる中で、苦言を含め本音を伝えたという。
まずはパワープレーについてだ。コートジボワール戦、ギリシャ戦の終盤、空中戦に強いDF吉田を前線に上げ、ロングボールで攻めた。手詰まりだった初戦はともかく、良い形で攻めていた2戦目も不慣れな作戦を実行。指揮官自ら「パワープレーの文化がない」と、長身FWハーフナー(フィテッセ)らの招集を見送った決断から矛盾する采配に、原専務理事がメスを入れた。
「(吉田)麻也を上げるんであれば、そのための練習もしなくちゃいけない。でも、それは、このチームには合ってない。そういうので勝てるメンバーではないですから。そうやって選んできているので。違う方策を徹底してやるべきじゃないか」
話は起用にも及ぶ。初戦では左サイドが狙われているにもかかわらず、攻撃に持ち味を発揮するMF遠藤を左ボランチに配置した。投入後、2失点を喫し、逆転負け。ギリシャ戦ではFW岡崎を不慣れな左MFに起用。数的優位でも、最後まで交代枠を1枚残すなど多くの疑問が残った。同専務理事は「個々の良さが出ていない。チームの良さが出ていない。それはなぜか」と掲げ「いいコンビネーションとか、選手間の距離とか。そういうところのズレの方が大きいと感じる」と進言。これまで4年間で積み上げてきた戦術が本番で全く出せていない現状の分析を伝えた。
昨年10月の東欧遠征で2連敗後、2人は同じように会談を持っている。新しい選手を起用するよう求めたところ、ザックは受け入れた。2人には信頼関係があり、今回も「内紛」「亀裂」のたぐいではない。コロンビア戦へ「共闘」の姿勢の表れだ。ザックもこれまで通り、意見を受け入れるとみられる。
さらに、状況に応じて「右サイドを使うこと」、試合までの「生活習慣を見直すこと」、「結果を恐れずに戦う」などの要望を伝えた原専務理事。「反省をしなければいけない。でも、やらなきゃいけないのはコロンビア戦で自分たちがまず勝利する。そのための準備をやる」。1次リーグ突破へ、勝利が絶対条件のコロンビア戦まであと3日。時間は少ないが、協会も現場と一体となって「奇跡」へ全力を尽くす。(内田 知宏)
◆パワープレー 前線に多くの選手を配置して後方からロングパスを放り込み得点を狙う戦術。多くの場合リードされた試合の後半に用いられる。今回のW杯で日本のDF吉田がそうだったように、身長の高いDFが失点のリスク覚悟で前線に上がるのが特徴的。
◆原 博実(はら・ひろみ)1958年10月19日、栃木・那須塩原市(現黒磯市)生まれ。55歳。矢板東高―早大を経て三菱重工。早大時代に代表デビューし、国際Aマッチ通算75試合37得点(歴代4位)。92年に引退し、浦和、F東京の監督を歴任。09年に日本サッカー協会技術委員長。昨年12月、同委員長を兼ね専務理事に就任した。
SAMURAI BLUE