江差線脱線:「旅行台無し」乗客ら怒りと不満

毎日新聞 2014年06月22日 22時42分(最終更新 06月22日 23時27分)

貨物列車の脱線現場から数百メートル函館側の踏切付近で、脱線によって壊れたとみられるレール周辺を調べる国交省運輸安全委員会の鉄道事故調査官ら=北海道木古内町で2014年6月22日、手塚耕一郎撮影
貨物列車の脱線現場から数百メートル函館側の踏切付近で、脱線によって壊れたとみられるレール周辺を調べる国交省運輸安全委員会の鉄道事故調査官ら=北海道木古内町で2014年6月22日、手塚耕一郎撮影

 「こんな会社に新幹線の運行ができるのか」「旅行が台無し」。22日早朝、JR江差線札苅(さつかり)駅近くで起きた貨物列車の脱線事故。同日だけで列車59本が運休、約6000人に影響が出て、乗客らからは怒りと不満の声が上がった。同線は本州と北海道を結ぶ物流の大動脈で、経済への影響も懸念される。レール異常放置などが発覚し、再生途上のJR北海道。近くでは2年前にも2件の脱線事故が発生しており、記者会見したJR北海道の幹部は苦渋の表情を浮かべた。【小川祐希、日下部元美、久野華代、酒井祥宏】

 大阪を21日午前11時50分に出発した札幌行き寝台特急「トワイライトエクスプレス」(乗客121人)に乗っていた人によると、列車が本来は止まらない木古内駅に停車したのは午前5時前だった。車掌から状況説明があったのはそれから1時間半たってから。札幌までの代行バスは午前7時ごろに用意されたが、出発したのは午前8時だった。理由は「乗客を誘導するJR社員が到着していない」。バスがようやく札幌に到着したのは、列車の到着予定から3時間半遅れの午後1時半ごろだった。

 東京都港区の会社員、那谷(なた)忠宏さん(43)は「乗客に配られた食料は、朝から栄養補助食品1個だけ。バスは売店のないサービスエリアにしか止まらなかった。脱線事故は初めてじゃないのに、対応が悪すぎる」と指摘。「こんな会社に北海道新幹線の運行ができるとは思わない。JR東日本と合併した方がいいのではないか」と憤った。

 22日午後に札幌からトワイライトエクスプレスに乗る予定だった京都市西京区の主婦(65)は、新潟空港経由で伊丹空港まで帰ることになった。「JRは代わりの交通手段を手配してくれないし、補償もない。せっかくの旅行が台無し。この怒りをどこにぶつければいいのか」と疲れ切った様子だった。

 一方、札幌市中央区のJR北海道本社で記者会見した西野史尚副社長は「事故を少なくする取り組みのスピードが、まだ足りない」と嘆いた。

 西野副社長によると、札苅駅とその周辺でレールを最後に点検したのは6月4日。徐行や運行を中止する同社の基準値を超えたデータはなかったが、西野副社長は「異常なし」との明言は避け、原因についても「あらゆる可能性について、予断を持たず究明にあたる」と慎重な言い回しに終始した。

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