ゴジラ:リメーク版が米席巻 反核兵器メッセージは封印
毎日新聞 2014年06月17日 14時50分(最終更新 06月17日 16時06分)
「ゴジラ」のハリウッド・リメーク版「GODZILLA」が米全土を震撼(しんかん)させている。封切りから1カ月が過ぎた先週末(13〜15日)の興行成績もランキング7位を保ち、米国の怪獣映画としては1990年代の「ジュラシック・パーク」などに迫る歴代4位に上昇。50年代の米国の水爆実験で目覚め、核兵器の恐怖を象徴した日本版ゴジラは2004年の28作目で姿を消した。「核の落とし子」は因縁の米国で復活したのか、それとも−−。【ロサンゼルス堀山明子】
ハリウッド版は98年にも製作されたが、イグアナに似て、動きに重厚感もないと不評だった。今回はその続編ではなく、ゴジラファンを自称する英国の若手、ギャレス・エドワーズ監督(39)を抜てきし日本の第1作(54年)の原点を尊重した「リブート(再起動)版」という位置づけだ。渡辺謙さんが演じる日本人科学者「セリザワ・イシロー」は第1作の本多猪四郎(いしろう)監督と、登場人物・芹沢博士の名にちなんだ。
ハリウッドに近いサンタモニカの映画館は年配の男性客らでほぼ満席。「ドシッ、ドシッ」と足音だけが迫る緊迫感、直立で雄たけびを上げる姿……元祖ゴジラの特徴は確かに“復活”していた。エンジニアの男性(54)は「98年版と違い、日本の魂が受け継がれたゴジラだ」と熱く語った。
一方で「彼こそ核の危機から人類を守るヒーローだ」とも。今回、ゴジラは米軍の核弾頭を奪った別の怪獣と戦う。怪獣を倒すために核兵器使用が許可されるなど、原爆投下、核実験への批判がにじんだ第1作の反核色は見られない。
福島第1原発事故を連想させる場面もある。予告編では煙を上げて崩れ落ちる原子炉をバックに、日本風の小学校校舎から児童が逃げる映像がアップに。映画では99年に東京近郊で起きたとの設定だが、警戒区域の場面などは福島を参考にしたという。