集団的自衛権:中村哲氏、「NGOを道具」と首相批判
毎日新聞 2014年05月26日 07時15分
アフガニスタンで医療や農業の支援活動をしている福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の中村哲現地代表が一時帰国し、25日、同市内で毎日新聞のインタビューに応じた。安倍晋三首相が海外のNGOのために自衛隊の任務拡大の必要性を唱えたことに「NGOを道具にしている」と批判。首相が集団的自衛権の行使容認に踏み切れば、現地での危険は増すとして撤退を検討せざるをえないとの考えも示し、非軍事による国際貢献の重要性を訴えた。
ペシャワール会は1984年からアフガンやパキスタンで医療活動を開始。米軍のアフガン攻撃開始後も活動を継続し、同地の干ばつ対策として農業用の用水路建設にも取り組んでいる。
中村氏によると、欧米諸国がアフガンに軍隊を出したことから現地住民の憎しみや怒りが増幅。欧米のNGO関係者は現在、テロの標的となる危険が高まったことから活動拠点のジャララバードから撤退した。それでも同地に残るペシャワール会について、中村氏は「憲法9条を持つ日本は『戦闘に参加しない国』という信頼感があり、それが私たちの活動を守っている」と強調。「欧米のように軍事力を使い、日本人というだけでターゲットになれば当然私は逃げる」と述べた。
首相が15日の記者会見で「限定的な集団的自衛権の行使」と説明したことについては「戦場に行ったことのない人間の発言。武器を持って衝突すれば、互いに恐怖心や防衛心が強くなり歯止めはなくなる」として、ひとたび行使を認めれば際限がなくなると警告した。
一方、首相は海外で活動するNGOを救出するためとして、自衛隊の駆け付け警護を認めることの正当性を唱えた。だが、これは集団的自衛権と関係ない武器使用の問題で、中村氏は「自らの主張を通すためにNGOを道具としている。集団的自衛権行使に賛成させるためにこじつけている印象は拭えない」と不快感を示し、「国民の危機感をあおるのでなく、外交努力で不必要な敵はつくらないことこそ内閣の責任だ」と訴えた。【井本義親】