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海外の被爆者にだけ、差別ととられるような制約を設けることの非は明らかだ…
海外の被爆者にだけ、差別ととられるような制約を設けることの非は明らかだ。ただちに制度を改める必要がある。
被爆者援護法に基づく医療費を、厚生労働省が在外被爆者に支給しないとしているのは違法だとする判決を、大阪高裁が言い渡した。
昨年10月の一審・大阪地裁判決も違法としたが、今年3月の長崎地裁判決は合法とし、判断が割れていた。
初めての高裁判決は「被爆者はどこにいても被爆者」の原則に立ち返ったといえる。
厚労省は援護法とは別に、在外被爆者が払った医療費を助成する制度を10年前に設け、今年4月から上限額も引き上げた。
しかし高裁判決は、そもそも法律上、在外被爆者を別扱いする根拠はないと断じた。
当然といっていい。
高裁判決も言及しているが、94年制定の被爆者援護法には、日本が起こした戦争の結果として原爆放射線を浴び、生涯にわたって健康不安に苦しむ人々に、国として償う性格がある。
サンフランシスコ講和条約により、被爆者は米国に賠償を求める道も絶たれている。
原爆投下時、広島と長崎には、当時日本国民だった朝鮮半島出身の人々をはじめ、多くの外国人がいた。戦後、日本から北米や中南米に移住した人も多い。現在、4千人余りが海外で被爆者健康手帳を持っている。
被害を受けた点は同じであり、国内の被爆者と同等に日本が責任をもって救済すべきだというのが、57年の旧原爆医療法制定以来の法の精神だ。
今回の裁判の原告は韓国在住だが、65年の日韓協定で「解決済み」とされている日本への個人賠償請求とは、まったく別の問題である。
にもかかわらず厚労省は、海外は医療保険制度が日本と異なり、上限なしに医療費を受けられるようにすれば、逆に国内の被爆者との不公平が生じるおそれがある、と主張してきた。
そうではないだろう。真の公平とは、必要な医療をどこにいても安心して受けられることであるはずだ。制度の違いからくるしわ寄せを、被爆者側に負わせるべきではない。
実際、在外被爆者の医療費助成申請の9割が、現行上限の30万円以内に収まっている。極端に高額な申請の場合は治療内容を確認するなど、公平性を保てる工夫はあるはずだ。
高齢化が進む被爆者にとって、医療は切実な問題である。国は、今回の司法判断に従い、抜本解決を急ぐべきだ。
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