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ITトレンド・セレクト
2013年05月23日(木) 小林 雅一

グーグルが導入した量子コンピュータとは何か

本物かどうか疑う声もある

 ただしグーグルが今回採用を決めた量子コンピュータは、本物の量子コンピュータではない、と見る向きもある。それはカナダの「D-Wave Systems」というベンチャー企業が開発したコンピュータだが、開発時の実験データなどを同社が学会で発表していないので、この分野の関係者の間では、以前から、その信ぴょう性が疑問視されていた。

 もちろん1985年にドイッチュ氏が提案した量子コンピュータの原理自体は確固たるもので、これに従って本物の量子コンピュータが実現するのは(何年先になるかは不明だが)時間の問題と見られている。既にIBMやHPなど世界的なコンピュータ・メーカーが、量子コンピュータの基礎技術を確立したとされる。ただし、いずれもまだ実験室レベルに留まり、そこで作られた量子コンピュータはせいぜい「15を3と5に素因数分解する」といった初歩的な計算がやっと、と言われる。

 そうした中で、あまり知られていないカナダのベンチャー企業がいきなり、AI開発に使えるような本格的な量子コンピュータを製品化したと聞かされても、科学者をはじめ専門家は俄かには信じ難いのだろう。少なくとも今から1年余り前には、IBMの研究者は「量子コンピュータが実現されるのは早くても10~15年先」と語っている

 今回、グーグルに先立って、航空機・軍事大手のロッキード・マーチンもD-Wave Systems製の"量子コンピュータ"を導入しているが、「彼ら技術力のある世界的企業が『量子コンピュータ』と言っている以上、それは恐らく本当に量子コンピュータなのだろう」というのが、これを報じたメディア関係者の偽らざる気持ちなのである。要するに、真偽のほどは分からないのだ。

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