富岡製糸場、世界遺産に決定
カタール・ドーハで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は21日、各国候補の登録可否を審議、日本政府が推薦した「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)の世界文化遺産登録を決定した。西洋から取り入れた技術を基に、独自に絹産業を発展させて高品質な生糸の大量生産を実現、日本を近代工業国に導いた意義を高く評価した。国内18件目の世界遺産で、初の近代産業遺産となる。
富岡製糸場は繰糸場など明治初期の建物が当時のまま残されており、十分な保全体制も決定理由となった。群馬県が登録に向けた本格的な取り組みを始めて約11年。地元住民や旧所有企業の熱心な保全、啓発運動が実を結んだ。
政府は推薦理由として「19世紀後半以降に高い品質の生糸を大量生産し、世界の絹産業の発展と、消費の大衆化をもたらした世界的な価値」を訴えていた。
審議では、各委員国から技術の国際交流が行われたことを評価し、ユネスコ諮問機関が4月に出した登録勧告を支持する意見が相次いだ。
安倍晋三首相は「世界の宝であるこの文化遺産をしっかりと守り、次世代に引き継いでいく」とのメッセージを出した。
構成施設は、官営工場として1872(明治5)年に設立された富岡製糸場と、近代養蚕農家の原型「田島弥平旧宅(たじまやへいきゅうたく)」、養蚕技術の教育機関「高山社跡(たかやましゃあと)」、岩の隙間から吹く冷風を利用して蚕の卵を貯蔵した「荒船風穴(あらふねふうけつ)」のいずれも群馬県内の4か所。
政府は2007年、世界文化遺産の国内候補である「暫定リスト」に記載、昨年1月に正式推薦した。
国内では昨年の「富士山」に続く登録で、日本の世界遺産は文化が14件、自然が4件となる。政府は15年の世界遺産委員会で「明治日本の産業革命遺産」(福岡など8県)の登録を目指す。(共同)