「国歌斉唱90秒ルール」が意図せず生んだ一体感 ブラジル中心にファンのアカペラ広がる
ISM
FIFA(国際サッカー連盟)が定めた「国歌斉唱90秒ルール」が、ファンと選手の一体感構築に思わぬ効果を発揮。現在ブラジルで開催中の2014年W杯で南米チームを中心に共感を呼んでいる。
選手がピッチに並んでからなるべく早く試合が開始できるよう、FIFAは国歌斉唱を90秒までと定めている。しかし、なかにはこの時間内に収まらない国歌もあり、たとえばブラジルの場合は約4分。前奏だけで20秒近くを要する。FIFAによればブラジルは60秒バージョンを用意していたとのことだが、選手もファンも、音楽が止まったあともさらに力を込めて30秒近く歌い上げ、キックオフを前にモチベーションを高め合っている。
開幕戦のクロアチア戦後、ブラジル代表GKジュリオ・セーザルは「国歌斉唱に対するファンのリアクションが本当に素晴らしい。おかげで選手とファンの絆が一層強まっている」と喜んだ。最初に“アカペラ”での国歌斉唱が行なわれたのは昨年のコンフェデレーションズカップでブラジルがメキシコと対戦したときで、セーザルはファンが歌を止めないので最初は誰もが驚いたと語った。しかし、選手たちはすぐにアカペラに加わっており、セーザルも「今ではこれが代表のお約束という感じだね」と語る。
同代表のDFチアゴ・シウヴァも「こんな風に国歌が歌われているのを聞くと、特別なモチベーションが沸くんだ。間違いない。ファンが僕らとともにいることを示してくれているし、代表の一部だね。僕らのプレーに本当に大きな影響を与えている」と話した。
この動きは他チームにも広がっており、チリとコロンビアのサポーターも、音楽が止まったあとも国歌を続けた。チリサッカー連盟のセルヒオ・ヤドゥエ会長は「彼らの国歌斉唱は、印象的で胸を打つ」と語っている。歌詞に込められた思いはもちろんのこと、ファンと一体となって歌い上げることが、これからの戦いに向けて選手に決意をみなぎらせ、時には涙がこみ上げるまでの感動を呼び起こすのだろう。(STATS-AP)