怒り、落胆、情けなさ。女性を蔑(さげす)んだ東京都議会の「やじ騒動」が議会の内外に波紋を広げている。発言は品位に欠けるだけではない。事の本質をまったく分かっていないのではないか。
「心ない野次(やじ)の連続」。塩村文夏都議(みんなの党)が自身のツイッターに投稿したところ、二万回を超えるリツイート(転載)があった。都議会には一千件を超える批判が寄せられた。インターネットの署名サイトでは、発言者の特定と処分を求める抗議の声が広がっている。
事の発端は十八日。放送作家でもある塩村氏が晩産化や非婚化の進む中、妊娠や出産に悩む女性への支援策を質問したのに対し、「早く結婚しろ」「産めないのか」と男性議員のやじが飛んだ。
みんなの党は「やじが自民の席の方から聞こえた」と抗議したが、自民側は「自民の議員が述べた確証はない」として、発言者を特定しない意向を示した。
議場での発言は自由で、刑罰が科せられるわけではないが、うやむやに終わらせてはいけない。やじは塩村氏個人への攻撃では済まず、議会の品位をおとしめ、議会に対する信頼を失わせる。
人々は思うのではないか。笑い声も起きて、人格を傷つける言葉を許容するような議会に、大切な議論を任せられない、と。
妊娠や出産というデリケートな問題が女性議員への嫌がらせの言葉で片付くはずもない。男性に原因がある場合もある。晩産や非婚の背景にある、厳しい雇用や低賃金などの問題にこそ向き合うべきだ。女にも男にもかかわる問題なのに、心ない発言者は有権者の代表として、考えることや議論することを投げ出している。
みんなの党は議場映像から声紋分析を行い、発言者を捜し出すと主張する。しかし、調査を待つ話ではない。知らんぷりをしている議員は名乗り出て、やじが適切でないと思うなら謝るべきだ。
政治家の女性を蔑視した発言をめぐっては、二〇〇三年に太田誠一衆院議員が早大集団レイプ事件について「元気があるからいい」と発言し、〇七年に柳沢伯夫厚生労働相が「女性は産む機械」と述べて批判を浴びた。いずれも次の国政選挙で落選した。
やじには、事の本質を突いて議論を盛り上げる適切なものもないわけではない。しかし、女性への侮蔑に限らない、品位を欠き、人格を傷つけるやじは、国会からも地方議会からも追放したい。
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