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2014.06.21

塩村文夏都議会議員へのヤジ・セクハラ問題、雑感

 6月18日の東京都議会本会議で、みんなの党会派・塩村文夏議員がヤジでセクハラを受けたことは、NHKでもニュースになっていた。そうした話題の背景の一つかもしれないが、昨日のツイッターなどで話題になっていた。私としては、当のヤジにはそれほど関心を持たなかった。関心をもったのはどちらかというと、ツイッターなどで見られたこの件の受け止めかただった。
 こうしたことは時が過ぎると事実部分が忘れられてしまうものなので、まず、ざっと事実関係に関する報道をNHKのニュースでまとめておこう。
 19日「都議会で女性議員にセクハラやじ」(参照)より。


 18日行われた東京都議会の一般質問で、みんなの党の女性議員が子育て支援策について質問を行った際、ほかの議員から「早く結婚したほうがいいんじゃないか」などとやじが飛び、女性議員は「人格を否定するものだ」と反発しています。
 18日行われた都議会の一般質問で、みんなの党の塩村文夏議員(35)が妊娠や出産などに関する子育て支援策について都の取り組みをただした際、ほかの議員から「自分が早く結婚したほうがいいんじゃないか」、「産めないのか」などとやじを受けました。
 塩村議員は18日夜、ツイッターで「政策に対してのやじは受けるが、悩んでいる女性に言っていいことではない」などと反発し、「リツイート」と呼ばれる引用が19日正午までに1万件を超えるなど波紋が広がっています。
19日午後、報道各社の取材に応じた塩村議員は、やじに同調する議員が複数いたことが残念だとしたうえで、「人格を否定するようなやじや政策と全く関係のないやじはするべきではなく、ひぼう中傷になる。質問に立つ議員を尊重してほしい」と述べました。
 複数の会派によりますとやじは、自民党の議席周辺から聞こえたということです。
 これに対して都議会自民党の吉原修幹事長は「どういう状況だったのかよく分からないが、誰が言ったのか特定することは難しい。それぞれの会派が品格のない発言は慎むようにすべきだ」としています。
 この問題を受けて、19日夕方、会派の枠を超えて都議会の女性議員たちが「品位を汚すやじは控えるべきだ」として議長に対し再発防止に取り組むよう要請したということです。

 これがNHKの、この件の初報道だったかについては詳しく点検はしてないが、この時点のニュースを改めて読み直して思うのは、この件の特徴は、当のセクハラ・ヤジよりも、ツイッターによる炎上現象かなと思えることだ。「塩村議員は18日夜、ツイッターで「政策に対してのやじは受けるが、悩んでいる女性に言っていいことではない」などと反発し、「リツイート」と呼ばれる引用が19日正午までに1万件を超えるなど波紋が広がっています」というわけである。私がその側面に関心をもったもの、それほど外しているものでもないのかもしれない。
 流れをこの視点から見ていくと気はなることがある。
 この時点で、「自民党の議席周辺から聞こえた」ヤジについて、当の都議会自民党の吉原修幹事長は、「それぞれの会派が品格のない発言は慎むようにすべきだ」という一般論的に流し、また、都議会の女性議員たちも「議長に対し再発防止に取り組むよう要請」とある。当事者たちは、「品位を欠くのはいけないねえ、今後はこういうことがないようにしましょう」、といった認識で留まっていたのが興味深い。その安閑とした受け止め方は、常時のヤジ(一例)を知っている私にもそれほど理解できないものない。
 が、流れはそうならなかった。
 ヤジをした議員を特定して処分せよという流れになった。この流れは、私がツイッターなどで見た感想でいうと、そういう空気に押されている印象があった。
 流れをニュースから追ってみよう。
 20日「都議会やじ問題 処分要求書を提出」(参照)より。

 18日行われた東京都議会の一般質問で子育て支援策について質問した女性議員に「早く結婚したほうがいいんじゃないか」などとやじが飛んだ問題で、20日、女性議員が、発言した議員の処分を求める要求書を議長宛てに提出しました。
 この問題は、18日行われた都議会の一般質問で、みんなの党の塩村文夏議員(35)が妊娠や出産などに関する子育て支援策について都の取り組みをただした際、一部の議員から「自分が早く結婚したほうがいいんじゃないか」などとやじを受けたものです。
 塩村議員は20日、地方自治法に基づいて、発言した議員の処分を求める議長宛ての要求書を都議会に提出しました。
 この中で、塩村議員は、やじの内容は名誉を害し侮辱に及ぶものだったとして、議会として調査を行い発言した議員を明らかにするとともに、再発防止のための措置を取るよう求めています。
 要求書を提出したあと、塩村議員は取材に応じ、発言した議員が名乗り出ないことに対し、「犯人捜しをして判明するよりも名乗り出ていただいたほうがすっきりすると思うし、私自身も少し心の傷が癒える」と述べました。
 また、都議会に都民の抗議が多数寄せられていることについて、「私1人に浴びせられたやじというよりも、妊娠・結婚にまつわる悩みを抱えた方たちの気持ちが数字に現れていると思う」と述べ、議長に早急な対応をとるよう求めました。

都議会に批判の声相次ぐ
 18日に行われた東京都議会の一般質問で女性議員が質問を行った際、一部の議員から「早く結婚したほうがいいんじゃないか」などとやじが飛んだ問題で、東京都議会には都民から抗議や批判の声が相次いで寄せられています。
 この問題で、東京都議会には19日の午後4時までに都民から電話やメールでおよそ1000件の意見が寄せられました。
 内容は、▽女性に対して失礼な発言だ、とか▽やじだとしても言い過ぎではないか、などといった抗議や批判が大半だということです。
こうした声は20日になっても相次いでいるということですが、都の議会局では「議会が開会中で通常の業務が多いなか、抗議が相次ぎ、集計する余裕がない」としています。


 この件についての私の率直な印象を言えば、ヤジ議員は堂々と名乗り出るべきだと思う。名乗り出て、あのヤジは悪かったと土下座すればよいと思う。土下座というのはこういうときにするのがよいと思う。
 で、名乗り出ないなら、仲間の議員が、名乗り出るように勇気づければいいと思う。でも、それもできないのは、仲間の議員もまた、セクハラ意識がないか、勇気がないからだろう。いや、そうでもないか(参照)。それとまあ、勇気を持って代理で土下座するような人も世の中にはいるから、名乗り出た議員が本人かはよく吟味する必要もあるかもしれないが。
 それでももっというと、都議会自民党議員を支持している人は、ヤジ議員に勇気をもって名乗り出るように声を上げるべきだと思う。私は、都議会自民党議員を支持してないが、「おーい、勇気出して名乗りでろや」と言っておく。
 で、そういう意見は、私が見た範囲ではツイッターにはなかった。
 そのことに、奇妙な違和感を覚えた。逆に、ツイッターでは、「ヤジのやつを探しだし、とっちめ、土下座させたるぅ」みたいなものが多いように思えたことだ。私がそれをどう思ったか。うへぇ。
 この当たりで、私はもう一つ気になることがあった。このヤジの意味とその文脈である。
 ヤジは報道からは、「自分が早く結婚したほうがいいんじゃないか」、「産めないのか」とのこと。文脈から切り離されている。
 もちろん、これだけでべたにセクハラである。これを言われた女性は侮辱されたと怒ってもいいし、法的手段をとってよいし、できればとるべきだと思う。私が、法で争えることは法で争うほうがいいという考えの持ち主であることは自著にも書いたとおり。
 ただ、違和感もあった。
 私は、こう思ったのである。塩村文夏議員が、このヤジについて「女性一般への侮辱として許せない、それは正義だから、ヤジ者を処罰する」というのに異論はないが、その前に、そのヤジをその文脈のなかで、議員としての自分の問題として、受け止めてほしかった。
 このあたりの私の感性はまたしても世間を逸脱しているかもしれないので、補足しよう。
 この件についてまず、ためらうことが私にはある。私は塩村文夏議員のことをよく知らないのだ。関心ないと言ってよい。美人議員全般に関心もないんだけどそれはさておき。
 なので、私の誤解かもしれないが、彼女には不倫ゴシップがあった。当然、ゴシップなんで事実とは関係ないし、ゴシップに興味を持つのは時間の無駄だとは思うが、とりあえず、私の耳には入っていた。そこで思ったのは、ヤジ者はそうした文脈でのヤジではなかったかという疑問だった。
 ちょっとこの件で、ネットをあたると、二番煎じゴシップネタでPVを稼いでいるJ-castに格好の記事があった。「「セクハラヤジ」飛ばした都議はだれ? 塩村文夏議員「『結婚しろ』と言った議員ほぼ分かる」(参照)。これ読むと、不倫ゴシップの文脈を思った人はいるのだなとは思う。
 その文脈だと、こういう意味なのではないか。

 「早く結婚したほうがいいんじゃないか」→不倫だから結婚できないんだろう?
 「産めないのか」→不倫だから産めないんじゃないか。

 塩村議員はこのヤジのとき「「はー」と言いながらも下を向いて少し笑」ったというが、だとすれば少し、自分のこととしてヤジを受け止める瞬間はあったのではないかと思う。まあ、ボケた保守議員が言いそうなことなんで、普通笑うだろう。笑ったこと自体を責めるのはどうなんだろうか(参照)。
 私は、ここで塩村議員はこう言ってもよかったのではないかと思う。あるいは議事の妨げにならないように後で言ってもよい。

 「ヤジをした議員さんは、不倫ゴシップを真に受けているのかもしれませんが、そんなことは議員活動には関係ありません。また仮に、私が不倫してたとしても、子どもを生む産まないには関係のないことです。また不倫で生まれるたくさんの子どものためにも、よい都政を作りたいと思っています」と。

 もう少し踏み込んで言うと、規模の大きな公議会の議員は、ヤジを受けたほうがよいと思っている。ヤジに耐えろという意味ではない。
 これがある職場で「自分が早く結婚したほうがいいんじゃないか」「産めないのか」ということで激怒した女性が訴訟のためにカンパを求めるというなら、私がその職場の一員なら喜んで少額カンパする(少額なのがとても残念だが)。彼女は弱い立場にいる弱い人だからだ。しかし、塩村議員は強い立場にいる強い人だし、そこは弱い人の代表で強くあってほしい。弱い人が受けるセクハラを身をもって前線で受けてほしいと思う。そうすることで、セクハラの風潮に代表者=代議士として戦ってほしいと思う。今回のヤジ議員を処罰する行動もそうした戦いの一環だと理解できないこともないが、一般化に拙速すぎるように思う。
 まあ、私のこの件の受け止め方はそういうことなんで、その後、これを、女性の一般問題として、正義の立場から、ヤジ議員を処罰していこうという空気には違和感があった。日本人は自分が正義だと思うと日比谷焼打事件みたいな空気を醸し出すことがあるので、そういうのは、やだなあと思っている。
 処分を求めることから、この問題は、ちょっと、私から見ると別の方向、懸念していたいやな方向に向かっている印象もあった。報道を追ってみる。
 NHK20日「やじ問題 女性議員が処分求めるも不受理」(参照)より。

 東京都議会で、質問をした女性議員に「早く結婚したほうがいいんじゃないか」などとやじが飛んだ問題で20日、この女性議員が発言した議員の処分を求める要求書を議長宛てに提出しましたが、議員の名前が特定されておらず、要件を満たしていないとして受理されなかったことが分かりました。
 この問題は18日、都議会の一般質問で、みんなの党の塩村文夏議員(35)が妊娠や出産などに関する子育て支援策について都の取り組みをただした際、一部の議員から「自分が早く結婚したほうがいいんじゃないか」などとやじを受けたものです。
 塩村議員は20日、地方自治法に基づいて発言した議員の処分を求める要求書を議長宛てに提出しました。
 この中で、塩村議員は議会として調査を行い、発言した議員を明らかにすることなどを求めていました。
 これについて、20日夕方、みんなの党の両角穣幹事長が報道各社の取材に応じ、議長から処分を求める議員の名前が特定されておらず、要件を満たしていないとして補正を求められ、要求書が受理されなかったことを明らかにしました。
 このため、議員の名前を特定して再度、要求書を提出することはできないと判断したということで、今後、塩村議員と相談して対応を検討していく考えを示しました。

 この展開部分についてのツイッターなど印象だと、受理しない議長は許せないという空気を感じた。私はこれは単に手続きの問題と思う。
 つまり、ヤジ者を特定して再提出すればよいのではないか。
 ただ、ここでの問題は、「議会として調査を行い、発言した議員を明らかにする」かどうかということだろう。
 これについては、塩村議員が求めるように、「議会として調査を行い、発言した議員を明らかにする」といいと思う。議員全員が雁首さろえてごめんなさいというよりも、きちんと議会の手段として機能したほうがいい。
 しかし、その追求の要求が受理されないのはどうかというなら、まず、「議会として調査を行い、発言した議員を明らかにする」要望を議会にきちんと上げて、「3日以内に訴える規定」をいったん凍結すればいいと思う。一切を、変な正義の空気を醸し出さず、議会の手順として進めていけばいいと思う。
 最後に一番前提となる疑問をここで蒸し返すのもなんだが、今回の問題では、「ヤジ」なのか「セクハラ」なのかというのが曖昧だった。ヤジには通常民主主義の議会では罰則は持たないし、都議会でも同じ。つまり、これは通常のヤジではなかった。ヤジに乗じたセクハラだった。
 今回は、ヤジに乗じたセクハラを「議会で侮辱を受けた議員は議会に処分を求めることができる」という規定で処罰しようとしている。それに特段の異論はないが、この機会に、一般的な侮辱ではなく、セクハラやヤジに乗じたセクハラを妥当に処罰する規定を都議会が率先して持つようにすればよいと思う。
 罰することは適切に処罰されなければならない(過剰な罰を与えてはらない)が、今回の件は罰を優先するより、将来の都議会のあり方を示すことで、世の中でセクハラを受ける弱者の支援にしてほしいと思う。
 
 

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