【社説】河野談話検証は韓日関係の破たんが狙いなのか

 日本の安倍内閣は20日、旧日本軍による慰安婦動員の強制性を認め、これを謝罪した「河野談話」に対する検証結果を発表した。安倍内閣は今年2月から首相官邸に「河野談話の作成過程などに関する検討チーム」を立ち上げ、1993年8月に発表された河野談話の作成過程を検証する作業を行ってきた。他国ではなく、自国の政府が21年前に発表した談話について改めて検証を行うこと自体、正常な国では考えられないことだ。

 報告書は「(河野談話の)内容は妥当なものと判断した」と結論付けただけで何の説明もない、たった1行の文章だった。しかし、安倍内閣の本当の狙いはこの1行ではなく、これに添えられた21枚の資料にある。このように報告書の外見と中身が完全に異なっていることも常識はずれだ。

 報告書は21年前の河野談話に大きな傷をつけるものだった。旧日本軍による慰安婦の強制動員があったかどうかについて、日本政府は1993年の談話発表直後、当時の河野官房長官が会見で「そのような事実があったと考えてもよい」と述べた。ところが今回の報告書は、この発言を「河野氏が任意に行ったもの」と主張している。その理由は「強制性はあったが強制動員はなかった」とする日本政府の立場と反しているからだが、要するに当時の官房長官の会見内容を今になって否定しているわけだ。また、河野談話が発表された当時、日本政府は元慰安婦に直接面会し、証言を聞いたとされていたが、今回の報告書には「調査が終わる前から談話の原案が作成されていた」と指摘、談話には女性たちの証言が反映されていないとした。さらに90年代末、日本が立ち上げた基金を通じて61人の元慰安婦が500万円相当の補償を受けたことや、また基金の代表が日本の首相が書いた謝罪の手紙を読み上げるのを聞くと、一部の女性が泣き叫び、基金の代表を抱きしめて泣き続けたことなども記載されている。つまり日本がいかに補償に力を入れていたかを強調するかのような内容になっているというわけだ。

 今回の報告書には、談話の発表を前後した時期に韓日両国政府が外交ルートを通じてやり取りした交渉の細かいプロセスについても詳しく公表されている。つまり、談話の核心的な内容や文言について「韓国政府が細かく干渉していた」と明記されているというわけだ。また、真相究明とその後の措置について取り決めた「パッケージディール」という言葉もあり、これによって慰安婦問題で韓日両国が何か政治的な取り引きを行ったかのような印象を強く持たせる内容となっている。要するにこの報告書の趣旨は▲河野談話は徹底した事実関係の確認を経て作成されたものではなく、あくまで外交交渉の結果から出たもの▲日本は被害女性への補償に努力してきた―ということだ。

 韓国は旧日本軍による慰安婦の強制動員により、最も大きな被害を受けた当事国だ。韓国人元慰安婦たちは90年代初めまで「性的奴隷」として連行された事実を口にしなかった。それは決して人には知られたくない恥辱だったからだ。また、64年の韓日基本条約でこの問題が取り扱われなかったことも、このような理由があったからだ。ところが91年ごろから元慰安婦たちが相次いで名乗り出て、元慰安婦を中心に翌年から始まった在韓日本大使館前での水曜集会は23年にわたり続いている。そうして日本はこの問題をこれ以上隠し通せない状況になったことから、河野談話を準備する以外にない状況に追い込まれたのだ。このような背景の下で行われた韓日間の外交交渉について、安倍政権は何か「取り引き」でも行われたかのように事実を歪曲(わいきょく)している。安倍政権が今になって「外交交渉を経て日本政府はやむなく河野談話を発表した」という印象を持たせようとしているのなら、これは日本による外交の独自性を自ら否定することにほかならない。

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