河野談話検証:韓国政府と文言調整、経緯伏せることも合意
毎日新聞 2014年06月20日 22時21分(最終更新 06月21日 01時46分)
◇報告書を国会に提出、見直しは否定
政府は20日、従軍慰安婦への旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話について、作成過程を検証した報告書を公表した。同年8月4日に談話を発表する直前まで、「強制性」などを巡って韓国政府と文言調整したことを認めたうえで、両政府の合意でこうした経緯が伏せられたと明らかにした。検証を指示した菅義偉官房長官は20日の記者会見で「河野談話を見直さないという政府の立場に何ら変わりはない」と強調した。
河野談話の作成に関わった石原信雄元官房副長官が今年2月、衆院予算委員会で「作成過程で韓国側と意見のすり合わせがあった可能性がある」と証言したことを受け、菅氏が検証を約束。有識者による「河野談話作成過程等に関する検討チーム」(座長・但木<ただき>敬一元検事総長)が実施した。
報告書は、91年8月に韓国で元慰安婦が初めて名乗り出た時点から、当時の資料をもとに検証した。
慰安婦問題は92年1月の宮沢喜一首相(当時)の訪韓直前に問題化し、同年7月に加藤紘一官房長官(同)が「政府の関与」を認める調査結果を発表した。しかし、韓国の反発は収まらず、政府はその後も真相究明や救済措置の検討を続けた。韓国側は元慰安婦への事情聴取を求めた。
報告書によると、93年4月の日韓外相会談で、渡辺美智雄外相(同)が強制性について「両国民の心に大きなしこりが残らない表現を検討している」と表明。後任の武藤嘉文外相(同)は同年6月、「韓国国民の理解が得られるようぎりぎりの努力をするが、その際には韓国政府の大局的見地からの理解と協力を得たい」と韓国側との事前調整を打診した。
日本政府が93年7月に行った元慰安婦16人への聞き取り調査について、報告書は「事後の裏付け調査や他の証言との比較は行われなかった」と指摘。その理由を「事実究明よりも、日本政府の真相究明への真摯(しんし)な姿勢を示すことを意図していた」と説明した。また、聞き取り調査を実施した時点で、河野談話の原案は既に作成されていたとして、裏付け調査をしなかったことが談話の内容に大きく影響していないとの見方をにじませた。