政府は従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた「河野談話」の検証結果を国会に報告した。韓国側は反発しているが、互いの見解に接点を見いだし、もう一度解決を図るべきではないか。
政府は一九九三年に当時の河野洋平官房長官が発表した談話について、作成過程をまとめた。有識者五人のチームが検証した。
検証結果では、談話作成の過程で韓国政府と水面下で文言を調整したことが報告された。慰安婦募集が強制的なものだったと明記するよう求める韓国側の意向を踏まえて、談話の表現が決まった。当時、韓国は日本に金銭的補償は求めないと伝えた。元慰安婦たちの証言を聴取したが、裏付け調査をしなかったという。
韓国政府の見解がある程度、談話に反映されたことになる。双方は対日感情の悪化を恐れて決着を急いだようだ。
河野談話は過去の植民地支配と戦時下の女性に対する不当な行為を謝罪し、日韓の友好を目指したものだ。今回の検証結果を受け、菅義偉官房長官が談話を継承すると述べたのは当然のことだ。
韓国政府は河野談話の内容には関与していないと主張しており、検証結果に反発している。韓国側に説明を尽くさねばならない。
従軍慰安婦問題は、日韓で最も厳しい難問といえる。日本政府は六五年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みとの見解だ。だが、九〇年代に韓国やフィリピン、台湾などで被害女性が名乗り出たため、日本側は「アジア女性基金」をつくって償いを図った。韓国では政府が認定した被害者の三割、六十人が償い金約二百万円を受け取ったが、市民団体の求めにより七割は拒否した。
その後、韓国は国際法で対応すべき戦時下の性暴力、女性の人権問題だと主張するようになった。日本政府が法的責任を認めて謝罪し賠償するよう求めて、対立が続いている。
韓国の元慰安婦たちの生存者は五十四人、平均年齢は八十代後半になった。日本側の償い事業は未完のまま終了したが、日韓両政府は互いに譲歩し、被害女性を救済する人道的な解決策をもう一度探るべきではないか。
オバマ米大統領は四月に訪韓した際、「慰安婦問題はおぞましい人権侵害だ」と述べた。国連機関の会議でも、日本批判が出る。これまでの努力が十分理解されないのは残念だが、国際社会の視点は依然厳しいものがある。
この記事を印刷する