2014年(平成26年)4月1日
消費税が5%から8%に上がりました。
あなたが4月1日前後に、同じ作品の原画を描いていたら、自動的に128円ていど原画料が上がったはずです。1カット4,500円の作品ですと、計算式は下のようになります。
(原画1カット)4,500÷105(原画料+消費税5%)×108(原画料+消費税8%)=4,628円。
みなさん、原画料上がりましたよね? え、上がっていない? おかしいね。スーパーでもコンビニでも消費税分値上がりしているのにね。
「消費税が上がったのに、どうして原画料は上がらないんだろう」って、少し考えてみたほうがいいと思うよん。なぜなら「どうして?」と、疑問を持たない限り、原画料に消費税率が反映されることは永遠にないからなんです。
だいぶさかのぼりますが、アニメーション業界での消費税についてお話しします。めんどうな部分は割愛したので、別にむずかしくないです。読んでね(^^)/
アニメーション業界では消費税が導入された当初から、個人からの請求には消費税を払わず、その分を会社の利益にする方式がなんとなくスタンダードになっています。
最初の消費税は3%でしたから、もともと収入の少ないフリーのアニメーターにとってそれほど気になる金額ではなかったということもあったのでしょうね。
「ギャラに消費税を付けてほしいのねん」
と、あのときアニメーター側から言わなかったことが、今現在、そして今後、消費税率が上れば上がっただけ、「あとの祭」問題になっていくのです。
次回の消費税増税で消費税はついに10%にまで上がります。そうすると、ある程度の収入があるアニメーターにとって、消費税分をもらえるかもらえないかは、気にならないといってはいられない金額になります。月収が50万円なのか55万円になるのかは、けっこう大きな違いでしょう?
アニメーション業界の制作部、経理は長い間、消費税について次のような立場を取り、説明をしてきました。
・制作会社は、下請けの株式会社や有限会社の作画スタジオ等には消費税を払う。(神村メモ ※これは下請け会社が法人税法で経理をするため、消費税を払わないわけにはいかないからです)
・しかし個人に消費税を払う必要はない。
・・・とね。
個人に消費税を払う必要はない、というのは間違いです。消費税法のどこにそんなことが書いてあるのか、その根拠を明確にしてもらいたい(^^;)
税法上は法人であれ、個人であれ、ギャラに消費税を加えて支払いをしなければなりません。
制作会社の経理がその程度のことを知らないはずはありません。ではなぜ、個人の請求には消費税を付けてくれないのかといえば、それは当事者であるアニメーターたちから、なんの文句も言われないからです。
「消費税を付けるのは会社からの請求だけなんだよ。個人は該当しないよ」
と制作や経理に説明され、
「あ、そうなんですか」
と鵜呑みにしてしまうアニメーターたちの不勉強さにも、ある程度の問題はあるでしょう。
そうはいっても!
税法に詳しいはずの経営者や経理が、「相手がくれと言わない金を、わざわざ払ってやる必要はないよね」と思っているとしたら、それはいささか情けない、というか、せこいのではないですか。
とはいえ、消費税導入当初から、個人への支払いに、黙っていても消費税分を上乗せして支払っていたシンエイ動画のような例もあることはあった。
ちなみにアニメーション業界以外で仕事をしてみると、個人への支払いに消費税を外税で付けてくるのが社会の常識だとわかります。雑誌にイラストを描いたり、イベントで講師をした場合などですね。
アニメーション業界って非常識なのですよ。
消費税が導入された時、いずれ3%の税率は徐々に上がり、イギリス、フランスのように15%、20%となっていくであろうことは、誰もがわかってはいたのだった。わたしも当然そうなると思った。
ということは、今は3%なので原画料にそれほどの差は出ないが、これが仮に10%になったなら、年収100万円と110万円では大きな違いが生ずるなァ、と考えた。
「消費税分はちゃんともらわないといけないな」
と、わたしはそのとき思ったんである。だからわたしは、請求書には必ず外税で消費税を加えることにした。すると請求したままの金額を振り込んでくる会社もあった。まれにね(笑)
しかし、ほとんどの会社は、請求書を出した本人になんの連絡もないまま、当然のように消費税分を引いた金額を振り込んで来たんだナァ、これが。
請求書の金額より少ない金額に変えて振り込みをするなんて、常識で考えたらあり得ないでしょ、あなた。普通なら絶対に問題になりますよね。アニメーター、なめられすぎですよ。
わたしの場合、税務署にいろいろ教わった上で、外税の消費税額を加えた請求書を提出しています。税務署の説明および対応は人により様々で
「消費税を払わないのは税法上の違反行為です。会社名を教えて下さい。経理部に行政指導します」
という方や
「残念ながらそこは力関係になるでしょうね。あとで消費税分は内税だと言われるケースもあります。1000円でしていた仕事が、消費税が上がってもおなじ1000円のままというのは、実質的に一方的な賃下げをしてきているということです。商道徳的にも、税法的にも問題のある行為だと思います。しかし、それでも仕事をもらいたい、という状況が存在することも確かです」
と、現実的な説明をしてくれる方もいらした。
つまるところ、アニメーター側がどのような対応を取るかは、自分次第だということですね。
さて、消費税分をスルーされたわたしは、担当プロデューサーや経理に電話して
「最初に内税と聞いていないから、消費税分がほしいなー。収入が安定しないアニメーターにとって、これは大きな金額なのよん」
とお願いした。するとこのとき複数の会社が似たような説明をしたのだが、
「個人の場合、2,000万円以上の収入がある人にだけ消費税を払うと決まっている。2,000万円以上の収入があることを証明する文書を提出したら、消費税を払うよ」
・・・だって。
あのね、そのような決まりは存在しませんから(^^;) いったい誰がどこで、そんなことを決めたのよ、って感じ。
でもその説明は、論理的には「原画料の消費税は外税です」と認めていることになるのよね。消費税は、収入額に関係なく払わなければなりません。というより、アニメーターなんて収入少ないんですから、消費税分くらい払ってあげてほしいのことよ。
「税務署はそんなこと言っていませんでした」と何度、各社の経理に教えてあげたことか。
「やーね、ホントは知っているくせに」
なんて、決して言いませんでしたよ。わたしの目的は消費税分を正当にいただくことであって、経理の揚げ足を取ることじゃありませんからね。
そのようにしてわたしは制作会社に交渉し、消費税分をほとんどの会社からもらっていました。「特別に払うから、他の人には言わないでね」といった会社もありました。
「わたしは消費税分、もらっているよ。言えばくれる、言わない人にはくれない」
だから、みんなもらえばいいのに、とアニメーターたちにも勧めました。でも、皆さん、なかなか動かない。たしかにめんどうなので気持ちはわかるのだが、前例を作らないとなにも変わらないのが世の中だ。
これを読んでいるアニメーターたちのみなさん、誰か消費税をもらってみませんか。前例は作っておきましたので(^^)
最初の話に戻りますが、消費税が5%から8%に上がったまさにその時、同じテレビシリーズを続けていて、1カットの原画料が変わらなかった人が必ずいると思います。
それ、おかしいと思いませんでしたか。本来なら消費税額3%分だけ、原画料が上がるはずなのです。こういうあからさまな状態に遭遇することはめったにないと思う。そういうときくらい「消費税上がったから、ちょっとだけ原画料もあげてほしいのねん」と制作さんにお願いすることは、力関係がどうであれ、まったく問題はないと思いますよ。
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