北朝鮮:発覚した工作員 中南米拠点や偽造口座作りに暗躍
毎日新聞 2014年06月20日 05時45分
【北京・西岡省二、パリ宮川裕章】北朝鮮工作員3人がフランス当局に財産凍結などの制裁を科された問題で、うち2人は勤務する国連機関の職員の身分を使い中南米などで工作拠点作りをしていたことが19日、現地関係者の話で分かった。別の1人は北朝鮮と他国の銀行との取引を隠蔽(いんぺい)するため、欧州内で偽造口座を開設するなどしていたとみられる。当局は3人の活動実態を詳しく調べている。
当局によると、制裁を科されたのは▽キム・ヨンナム(66歳または71歳)▽キム・スギョン(41)▽キム・スグァン(37)の3職員。平壌出身の親子で、いずれも北朝鮮の海外工作活動の統括機関「偵察総局」に所属していることが判明。
ヨンナム、スグァン両氏はそれぞれ、国連教育科学文化機関(ユネスコ、本部・パリ)、国連世界食糧計画(WFP、本部・ローマ)の職員としてパリやローマに駐在。2人は職員の身分でブラジルやアルゼンチンなどに出張し、北朝鮮から別に派遣される工作員のために拠点となる居住地を確保したり労働許可などを取得したりしていた。
派遣された工作員は現地住民になりすますことを目的とし、最終的には米国への潜入を図っていたという。
スギョン氏は朝鮮統一発展銀行国際関係局長としてパリに駐在していた。北朝鮮は経済制裁により外国銀行との取引が規制されている。これをかいくぐるため、スギョン氏は欧州の企業などを装って偽名で銀行口座を開設し、工作資金などを融通していたという。
3人は十数年にわたりフランスに滞在し、パリには1室あたり最大90万ユーロ(約1億2500万円)もする高級マンションを3室保有。ルクセンブルクなどの欧州各国にも多数の口座を保有しており、仏当局は3人と北朝鮮指導部の関係に注目しているという。
当局は今年1月、3人が国連憲章第7章(安保理が平和への脅威などを認めた時に取る非軍事的制裁)や欧州連合(EU)による対北朝鮮制裁によって禁止された行動を取った可能性が高いとして、財産・金融商品・財源を凍結した。