シングルマザーに必要なのは、「企業戦士型経済的自立」というよりも「ワーク・ライフ・バランス(WLB)型経済的自立」である@周燕飛
JILPTの周燕飛さんが、『母子世帯のワーク・ライフと経済的自立』(JILPT)を刊行しました。
内容は周さんが過去数年間取り組んできたシングルマザー研究の現段階での集成ですが、経済学的分析を駆使した研究書ではありますが、切れ味の良い周さんらしい記述があちこちにあって面白く読めます。
周さんがこの問題に手を染めたのは、2007年にたまたま厚生労働省から研究要請があったという偶然からですが、その後、当初はシングルマザーの正社員就業促進こそが王道と考えていたのが、実は正社員になりたくないシングルマザーがはるかに多いことを発見し、このエントリのタイトルにあるように、
「企業戦士型経済的自立」というよりも「ワーク・ライフ・バランス(WLB)型経済的自立」
を探求する方向に進んでいったということです。
序章の最後のところの記述を引用しておきますと、
・・・しかしながら、母親の就業所得の向上に頼って経済的自立を目指すことも、一定の限界がある。例えば、高年齢、低学歴または疾病等の関係で専門資格を目指すような職業訓練を受けることができないシングルマザーが大勢いる。また、多くのシングルマザー(特に低年齢児の母親)が、子供との時間を大切にしたいため、フルタイム・正社員就業をそもそも希望していない。さらに、シングルマザーはそうでない女性と比べ、家事時間と睡眠時間が少なく、勤労時間が長くなっている。これ以上母親の余暇時間を犠牲にして経済的自立を目指すことは現実的ではない。
したがって、シングルマザーに必要なのは「企業戦士型経済的自立」というよりも「ワーク・ライフ・バランス(WLB)型経済的自立」ではなかろうか。WLB型経済的自立と貧困解消を同時に実現するためには、中長期的には正社員と非正社員間、男女間の賃金格差の解消、就業スタイルの多様化等の雇用システムの改革が必要不可欠である。短期的には、母子世帯に対する就業支援の継続をはじめ、シングルマザーへの婚活支援、親権決め基準の見直し、児童扶養手当制度の継続・拡大、養育費の強制徴収制度などの導入も検討すべきである。
周さんが中心になってまとめた報告書については本ブログでも一昨年紹介していますが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/jilpt-3520.html(周燕飛編『シングルマザーの就業と経済的自立』@JILPT )
彼女の肉声を聞きたい方はこちらをどうぞ
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