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オタク研究会は現在新入部員を募集していません。 作者:二三四五六七

第8章

8-11

 この2人の足を止めたその言葉、そして、これもオタク脳で悪いが、雰囲気的なことから察するにこの3人目の男が恐喝グループのリーダー的存在なのだろうか。

「落ち着けよ、そうはやるな」

 そう言いながら、3人目の男は2人の男の間を歩き、僕達と2メートルほどの距離を取って立ち止まった。

 不敵な笑みを浮かべている3人目の男――どうして僕達に近付く2人を止めたのか。

 一体こいつは何を考えているのだろう。あまりの予想外の出来事に、僕達はその男が発する次の言葉を待つことしか出来ない。

 いつだってそうだ。予想外の展開には、その流れに身を任せることしか出来ない。それは現実の世界だってそうだし、勿論二次元の世界でもそうである。

 異世界に召喚された勇者は言われるがままに魔王を倒さなければならないし、強大な力を持つ主人公は否が応でも戦火の中へと飛び込まなければならない。

 予想外の出来事に身を委ねなければならないのは、その展開が予想する間もなく、体を身構える暇もなく、突如発生するからだ。

 そう。

 例えるなら。

 3人目の男が次に放った、この言葉のように。

「久しぶりだな、宝船」

 その男の言葉に――強いて言えば、その男が宝船の名を呼んだという事実に、周囲の音が一気に遥か彼方へと遠ざかったような、そんな感覚を僕は感じ取った。

「…………」

 予想外すぎるその言葉に、僕は驚愕し、目を見開いて、ゆっくりと宝船の方を振り向く。対する宝船はそこまで驚かなかったのか、それとも既に驚いた後だったのか、怪訝な表情と声色で3人目の男に向かって言葉を返した。

「……あなた、誰? 私のことを知っているの?」

「薄情な奴だな。中学時代の同級生のことを忘れるなんて」

「……中学時代の同級生……?」

 依然として怪訝な様子の宝船。しかし、その数秒後には何かに気付いたように目を見開き、驚愕する。

 彼女は気付いたのだ。

 目の前にいる男の正体に。

「……饗庭あいば和泉いずみ?」

「ご名答。漸く思い出してくれたか」

 パチパチと感情や力のこもっていない拍手を宝船に捧げる男――もとい、饗庭和泉。驚愕の表情を浮かべる宝船とは真逆に、依然として不敵な笑みを保ったまま拍手を終えた饗庭は「さて、思い出してくれたところで改めて挨拶だな」と宝船に向かってこう言うのだった。

「……久しぶりだな、宝船璃乃。いや――『生徒会長』って呼んだ方が、当時の懐かしさが増すかな?」
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