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オタク研究会は現在新入部員を募集していません。 作者:二三四五六七

第7章

7-7

 やはり全国にチェーン展開するほどのモクドナルドとなると従業員が優秀なのか、大量に並んでいた人々はあっという間に掃かれ、気付けば僕の番が回ってきていた。

 僕より先に注文を済ませた宝船は商品を受け取ると一足早く店の外へと出て行ってしまった。悲しきことに、あまりこういう場に慣れていない僕は店員との会話にあたふたとしながら何とか注文を済ませて、商品を受け取る。

「……コミュ障って治るのかな」

 モクドナルドの自動ドアを潜りながら、僕は太陽の浮かぶ空を見上げつつ、そんなことを呟いた。


 ◆ ◆ ◆


 モクドナルドを出た僕達はとりあえず近くにある公園に向かうことにした。昼間のほとんど人通りが皆無である公園のベンチに僕と宝船は座り、無言でハンバーガーとポテトを取り出して食べ始める。

 そして、僕はそこで今の状況を客観的に観察してみることにした。

 公園で僕と宝船がベンチに座って互いに何を語る訳でもなく無言のままただただハンバーガーとポテトを食べ続けている。

 ……何なんだこの状況は。

 というか、どうして僕がこんなところにいるのだろうか。

 今更ながらの疑問だが、本当ならば今頃僕は家で冷凍食品で昼食を済ませた後、1人楽しくゲームをしたりアニメを観たりラノベを読んだりしていたはずなのである。

 宝船といるのが嫌だという訳ではない。

 だが、何が楽しくてこいつの隣で誰もいない公園を眺めながら無言でハンバーガーを食べなければならないのか。

 ハンバーガーは美味しいけれどシチュエーションは美味しくない。

 ……そこまで上手いことは言えていないか。

「久々に食べると美味しいものね」

「え?」

 不意に宝船が喋り始めたので僕は思わず彼女の方を振り返ってしまった。突然の言葉だったのですぐに返答が出て来ない。そして、そうしている内に宝船がこちらを振り返ってきて――。

「……何を私のことをイヤらしい目で見ているの?」

「見てねえよ! 濡れ衣も大概にしろ!」

「そうだったの? ごめんなさい、萩嶺君の目って大体イヤらしく見ているように見えるから」

「嘘をつくな嘘を!」

「そうね、私の言葉は嘘だったわ。だって、萩嶺君は二次元の女の子しか興味がないものね」

「誰もそんなことは言っていないだろ!」

 否定はしないが。しないのかよ。

「……で? この後はどうするんだ?」

 既にハンバーガーもポテトも食べ終わってしまった僕はほとんど空となってしまったジュースのコップを片手に宝船に問う。

「またどこかに行くのか?」

「そうね……萩嶺君はどうしたい?」

「家に帰ってゲームがしたい」

「他には?」

「家に帰ってアニメが観たい」

「……他には?」

「家に帰ってラノベが読みたい」

「……萩嶺君のインドア野郎」

「それは悪口か?」

 僕の問いかけに宝船は溜息をつくとベンチに背中を預ける。

「まあ、萩嶺君ならそう言うと思っていたけどね」

「お前だって、休日は大体こんな感じなんじゃないのかよ」

「ゲームにアニメにラノベ? そうね……それが出来たら良かったのだけれど」

「何だそれは。どういう意味だ?」

「萩嶺君は知らなくていいことよ」

 そう言って、宝船はベンチから立ち上がる。その場で背伸びをして、小さく欠伸をした彼女は僕を見下ろしてこう言った。

「さて、昼食も食べたし……今日はこれで解散しましょうか」


 ◆ ◆ ◆


 宝船を駅まで見送り、彼女と別れた僕は家路に着いていた。現在の時刻は午後1時くらいだろうか。どちらにしても、時間帯が昼であることには変わりないのでまだまだ太陽は高い――昼間だからか、人のあまりいない閑静な住宅街を通って、僕は自宅に辿り着く。

「ただいまー」

 誰もいない家の中に向かって既に習慣と化した言葉を言う。返事がないのは分かっているのだが、癖というのは中々体から抜けないもので。

 2階に上がり、部屋着へと着替えを済ませた僕は1階に下りるとテレビと向かい合わせになるようにリビングのテーブルに腰を下ろした。

 テレビの電源を入れて、録画リストを起動させながら僕は今日の宝船との出来事を思い返してみる。

 宝船とアニメを観て、宝船とお昼を食べ、そして駅で別れた。

「……結局あいつは何がしたかったんだろうな」

 宝船の真意は分からないまま、とりあえず僕はリストの中にあるまだ未視聴のアニメを選択し、再生した。
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