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「どんなに内容が駄目な部活であっても最低でも1年間の活動継続が可能なはずだ」
「そうね、その通りよ。ていうか、私は別にこの部活を潰すために来た訳じゃないから、安心して。それに、今あなたが言ったように、最低でも1年間はこの部活は継続するから、そちらも安心して。私が今日の結果を会長に報告して、その報告が学校の先生方に伝わったとしても、何の支障もないわ」
とりあえずは、だけど――と不穏な言葉を後付する宝船。
「それじゃあ、今日お前がここに来たのは定期的な検査みたいなものって訳か、安心したよ」
「そうね、確かに今は安心できるわね。でも、本当にこのままでいいの?」
「どういう意味だ?」
「今のままだと来年にはこの部活が無くなってしまうということよ」
「ああ、そういうことか。それに関しては別に構わないと思っているよ。ここは僕のためだけに作ったような場所だからな。僕がここでアニメを観たり、ゲームをしたり、ライトノベルを読んだりできれば、来年この部活がどうなろうと知ったことじゃない」
「……そうね、その通りだわ」
宝船は言う。
「確かにあなたの言う通りよ、萩嶺直斗君。現状では、この部活はあなたしか所属していないし、この部活がどうなってしまおうとあなたさえ良ければそれは結果的に良い結末を迎えることになるわ。例えこの部活が無くなったとしても、存続したとしても、ね」
でもね――と宝船は続ける。
「私にとっては、この部活が無くなってしまうと困るのよ」
「……え? な、何だって?」
宝船の言葉を聞き逃した訳ではない。
ただ、思わず聞き返してしまうほどに――信じ難かっただけだ。
今、宝船が僕に対して向けた言葉の内容が。
「お前がこの部活に無くなってもらうと困る? 一体どういうことなんだよ、それは」
「この前、私があなたと出会った場所はどこ?」
「……『アニメテオ』?」
「その『アニメテオ』はどのような商品を取り扱っているお店?」
「……オタク系の商品? って、お前はさっきから何が言いたいんだよ」
「ああもう、察しが悪いわね。だから……その」
どこか恥ずかしそうに頬を赤らめつつ宝船は若干俯き加減でこう言った。
「私も……あなたと同じで、オタクだということを言いたいのよ」
「…………」
驚いた。それこそ言葉も出ないくらいに。
いや、僕はその事実を実は知っていた。そりゃあ、『アニメテオ』で『銀翼の祈祷師』の最新刊を片手に持っていた時点でひょっとしてそうなのではないかと予想はついていた。
だが、信じられなかったのだ。
普段の宝船のイメージから――彼女がオタクであるという真実を。
だから、僕は今心底驚いた。
予め予想がついていても驚愕するほどに、その事実は余りにも強大なものだった。
「……えっと、お前ってオタクなの?」
「そうよ。さっきからそう言っているじゃない」
「いや、今初めて言ったと思うんだが……あれなの? ライトノベルとか普通に読んじゃうの?」
「学校では読まないわ。家では読んでいるけれどね」
「えっと……アニメも観ちゃう系の人なの?」
「アニメは自分の部屋のテレビで録画しているわ。BSチャンネルにも繋がるから、今期観ているアニメは10を超えるわね」
ヤバい、こいつそれなりにオタクとして玄人だ。
しかも僕の家には存在しないBSチャンネルまで取得しているとは……こいつ、中々やるな。
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