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オタク研究会は現在新入部員を募集していません。 作者:二三四五六七

第2章

2-5

 まあ、勿論こちらの放送局で放送されていないアニメに限るが。

 まず、こちらの放送局で放送されていないアニメの中で現在配信されている最新話を新しいタブで同じページに次々と開いていく。タブにリストアップされたアニメは全部で4つとなった。それだけ、僕の住んでいる地域では放送されているアニメが少ないのだ。都会に住んでいるオタクの方々が羨ましい限りである。

 2つのアニメを観終わった時点で、気分転換も兼ねて僕は鞄の中から携帯ゲーム機を取り出した。今日の昼休みは彩楓や宝船のこともあって、普通ならとっくにクリアしているであろうステージをクリアすることが出来なかった。

 あれくらいのステージは今日中にクリアしないと。そんな決まりはないが、僕のプライドがそれを許さない。

 そして、放置していたステージのラスボスを難無くクリアし、気分転換を終えた僕は再度アニメを視聴する。残りの2つを観終えて一息ついた僕は次に鞄から読み途中のライトノベルを取り出した。

 ページを読み進めていく。時々入る挿絵に僕が「やっぱこのイラストレーターの絵は神だな」と呟いた時だった。

 テーブルの上に置いていたスマートフォンが着信音と共にバイブした。響き渡るアニソンとテーブルの上で振動しているので途轍もなく大きいバイブ音に少々焦りながら僕はスマートフォンを手に取る。待ち受け画面に表示されていたのは彩楓の名前だった。

「彩楓か……部活終わったかな」

 呟いて、僕は彩楓からの着信に応答する。

「もしもし?」

『あ、直斗? ごっめーん、今日部活の片付け当番だってことすっかり忘れててさー』

「おう」

『だからさ、悪いんだけど、今日遅くなりそうだからさ。何なら先に帰っててもいいよ?』

「了解。それじゃあ、先に帰っとくわ」

『……私が終わるまで待つって選択肢はないんだね』

「お前が先に帰ってもいいって言ったんだろうが」

『それはそうなんだけどさあ……まあいいや。それじゃあ、また明日ね、直斗』

「おう。また明日な」

 不満気な彩楓を怪訝に思いながら僕は通話を終える。読んでいたライトノベルに栞を挟んで鞄に仕舞い、更にゲーム機を鞄の中に入れて、僕は鞄を肩にかけると立ち上がった。

 彩楓が僕と一緒に帰れないのならば少しばかりこれからの予定を変更しなければならない。余談だが、彩楓は幼馴染ということもあって、僕の家の隣に住んでいる。よって、彩楓から一緒に帰ろうと誘われた場合、僕はどこにも寄り道することなく、彩楓と共に家まで帰らなければならない。

 だが、今日は彩楓が部活の都合で一緒に帰ることができなくなった。

 だから予定変更。

 こういう日は『あそこ』によって帰るに限る。


 ◆ ◆ ◆


 『アニメテオ』――それが僕が普段帰り道における寄り道として使用している場所の名前だ。

 とあるビルの3階の一角に位置するその場所は、アニメやゲーム、ライトノベルや漫画などなど、オタクグッズの販売を専門としたところである。ライトノベルや漫画は他の場所でも買うことができるが、こういう場所で買うと時々特典が付いてくるものもある。その作品の作者やイラストレーターが手掛けた限定のポストカードとか最早買わざるを得ない。悔しいが、僕の中にはそんな使命感が生まれてしまっている。きっと他のオタクな人達もそうなのだろう。

 ちなみに、『アニメテオ』は店名こそ片仮名だが、お店の看板には『animeteo』と『アニメ』と『メテオ』を合体させて作った創作英語が大きく取り付けられている。どうして『メテオ』なのだろうと一度ウィキペディアで調べてみたのだが、特に意味は無いらしい。意味があるとすれば、それは語呂合わせなのだそうだ。
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