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オタク研究会は現在新入部員を募集していません。 作者:二三四五六七

第2章

2-4

 僕の足音が虚しく廊下に木霊しては消えていく。部室棟とは、珠玖泉高校の部活の部室だけのために建てられた校舎だ。珠玖泉高校が部活に対してどれだけ本気か、その度合いがこれで分かってもらえると思う。

 オタク研究会の部室は部室棟の最奥に存在する。これだけ遠いと少しばかり億劫だが、誰の人目も気にせずにオタク趣味に没頭できると思えば、そんなものは特に気にならない。むしろ嬉しいくらいだ。

 校舎が丸々部室のために造られただけあって、その部室のための教室の数は膨大なものとなっている。だが、先程も言ったように部活を作るにも部活を存続させるにもかなり苦労するので、この部室棟には空き教室が多い。そんな中でも、校舎の端に部室を置くことが出来たというのは中々に幸運なことなのではないだろうか。

「到着、と」

 部室棟の一階の端。そこに位置する我がオタク研究会の部室の入り口の前で僕は立ち止まる。

 僕はポケットの中から部室の鍵を取り出した。それを使って施錠を解き、部室の出入り口を塞いでいる扉を開ける――ガラガラという扉の開く音が静寂に包まれた廊下に響き渡った。

 教室の中に入り、扉を閉めてこの部室から外の世界をシャットアウトする。扉の向こう側には、僕の楽園が広がっていた。

 部屋の中央には折り畳み式の長テーブルが2つ合わせて設置してある。1つのテーブルにつき、パイプ椅子が2つずつ。よって、この部室にはパイプ椅子が4つ存在する。まあ、僕以外の誰かが来ることはないので、別に1つでも構わないのだが。

 長テーブルの片方にはノートパソコンが置かれていた。これは別に学校の備品などではなく、僕が家から持ち込んだ私物である。学校のパソコンはパソコン室にしか置かれておらず、しかも、放課後はパソコン室が開放されて全学年の生徒の使用が可能になってしまうので、動画サイトにアクセスしてアニメを観るには少し肩身が狭い。だから、僕は態々ノートパソコンを持ってきたという訳なのである。家で使うよりも、学校で使った方が電気代も浮くし。

 言い忘れていたが、教室とは言っても部室棟にある教室は部活専用ということもあって、通常の教室よりも狭くなっている。大人数の入部が確実の部活――例えば野球部やサッカー部など――には、通常の教室の半分の大きさの部室、そして、数年の部員の数のデータから少人数の部員しか入部しないことがほぼ確定の部活、または、新しく作られたばかりの部活には通常の教室の4分の1の大きさの部室が(あて)がわれることになっている。

 このオタク研究会はまた設立されて1ヶ月弱しか経過していないので勿論新しく作られたばかりの部活に分類される。よって、部室の大きさも通常の教室の4分の1となっていた。まあ、アニメ・ゲーム・ラノベを堪能するくらいなら4分の1くらいの大きさの方が返って助かる。あまりにも広すぎると逆に落ち着かないだろうし。

 鞄を長テーブルの適当な場所に置くと、僕はノートパソコンの前にあるパイプ椅子に腰を下ろした。ノートパソコンを開き、電源を入れる。パソコンが完全に起動するまでゲームで時間を潰し、起動が完了した後は早速インターネットにアクセスし、ブックマークから動画サイトを開き、今週放送されたアニメがアップロードされているか確認する。

 ちなみに、僕はアニメの視聴にニクニク動画、略して『ニク動』を使用している。他の動画サイトにもアニメをアップロードしているところがあるが、こういうアニメの公式が関わっている動画サイトでアニメを観れば、そのアニメの支持にも貢献できるし、2期制作にも繋がる可能性もあるからである。
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