1-6
「こんにちは。躑躅森さんに萩嶺君」
顔を上げてみれば、そこには同じクラスの宝船璃乃が立っていた。先程の彩楓と同じように両手でトレイを持っている。僕は座っていて、宝船の方は立っているので、彼女が何の料理をトレイに載せているのかは分からない。
「あっ、こんにちは、宝船さん。宝船さんも今からお昼?」
「うん、そうよ。躑躅森さんは?」
「あたしはもう食べたよ」
「えっ? そうなの? まだ昼休みが始まって10分くらいしか経っていないけれど……まあいいわ。食べる速さなんて人それぞれだしね」
まあ、こいつはその食べる速度が異常なんだがな。
「萩嶺君は?」
「えっ?」
僕が密かに心の中で相槌を打っていると、急に宝船が僕に話しかけてきた。若干裏返る僕の声。ゲーム機の液晶画面には再度『GAMEOVER』の文字が浮かび上がる。あまりの急な出来事に僕はまた指を滑らせてしまったのである。
「え、ああ、昼飯っすか?」
何故敬語なんだ。
相手は同学年だぞ。
「そうそう。萩嶺君はもう食べた?」
「いや、まだ、かな。今から食べるところ」
「そう。それにしても、昼休みに二人でお昼を食べるなんて二人は仲が良いのね。付き合ってるの?」
「そっ、そそっ、そんなことはないよっ!」
何故動揺するんだ彩楓。逆に怪しまれるだろうが。
「えー、その反応は怪しいなー」
ニヤニヤと彩楓を見下ろす宝船。それ見たことか、怪しまれただろう。
「だ、だから、それは誤解だって!」
「動揺しているところが怪しいなー」
「ど、動揺なんてしてないしっ! これは、そのっ、武者震いだし!」
「躑躅森さん今からどこかに戦いにでも行くの?」
彩楓と宝船が勝手に二人で会話を開始したので僕は『GAMEOVER』の下に表示された『CONTINUE?』の問いに『YES』のボタンを押し、操作ミスでクリアすることが出来なかったラスボス戦を再開する。
宝船璃乃。
彼女は僕のクラスメイトの一人であり、また、僕のクラスの学級委員長でもある。学級委員長をやっているだけあって(それが理由ではないだろうが)成績は優秀であり、スポーツ万能。まさに、絵に描いたような完璧超人だ。
容姿も素晴らしく、まさに宝船には『美人』という言葉が当て嵌まる。腰の辺りまで伸びた艶やかな黒髪は男子達の目を惹き付けて止まない、らしい。僕は特に惹き付けられたことがないので分からないけれど。
宝船は背も高く、スタイルも抜群だ。彼女の体型はいわゆるモデル並みのそれと等しいのではないだろうか。宝船がどこかの雑誌にモデルとして起用されていたとしても僕は驚かないだろう。彼女の容姿はそれほどまでに美しい。二次元にしか興味のない僕が言うのだから、宝船がどれだけ綺麗なのかが分かるだろう。
ただ、一つだけ残念なのは胸の大きさだろうか。彩楓が制服の上から巨乳だと分かるように、宝船も制服の上から分かるほどの貧乳である。そのまな板具合はまさしくナイアガラの滝を彷彿とさせ――。
「それじゃあ、躑躅森さんに萩嶺君。また教室でね」
「うん、それじゃーねー」
気が付けば、彩楓と宝船の会話はいつの間にか終わっていて、顔を上げた時には彩楓が立ち去って行く宝船に小さく手を振っているところだった。
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