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オタク研究会は現在新入部員を募集していません。 作者:二三四五六七

第1章

1-5

「だから、そこでゲームやればいいじゃん? その分昼休みとか教室では友達作るためにクラスメイトと話せばよくない?」

「友達作るため、ねえ……実際問題、友達はいるから問題無いな、二次元に」

「悲しっ! その発言悲しすぎるよ直斗! 悲しすぎて笑えないよ!」

「とにかくいいんだって、大丈夫なんだって。てか、お前こそ僕に構ってないで教室行って友達と話してろよ。高校一年生の始めの時期だぞ? お前は僕と違って人間関係的に将来有望なんだから、今のチャンスを逃したら僕みたいにぼっちになるぞ」

「そこまで分かっているのならどうして友達作ろうとしないかなあ……」

 呆れられてしまった。

 僕が友達を作らない理由は……何だろう。正直な所、人間関係が面倒だと思っている節はある。

 例えば、今日みたいな昼休みに友達と何人かで集まって話しながら食事をするとしよう。その際、その友達が自分にとって特に興味の無い話題を出してきた場合、僕はその話題に完全に乗り切ることができる自信がない。何故なら、それは僕が興味の無い話題であり、興味が無いということはつまり、その話題の中心にある事柄について、僕はほとんど情報を持ち得ていないからだ。情報を持っていない話題ほど話せない事柄はないし、つまらない話題はない。

 友達を作るとこういうところが面倒だ。友達なんて無理に作るものじゃない。どうせ作ったところで、進学先が違えばそこで人間関係も切れてしまうだろう。余程人間関係が分厚くない限りは、だが。

「それじゃあさ、彩楓」

「何、直斗」

「逆に聞くが、友達を作るメリットって何なんだ?」

「メリットとかデメリットとかトリートメントとかそういうことじゃないよ」

「いやトリートメントは違うだろ」

 どうしてここで髪のキューティクルを整える必要があるんだよ。

「とにかく、友達を作ることに損得なんてないよ。友達と一緒にいれば楽しいし、たくさん色んなこと話せるし……友達はね、ただ傍にいるだけでも充分なんだよ」

「…………」

 何か、物凄く正論を言われてしまった。正論過ぎて返す言葉もない。ぐうの音も出ないというのはこのことか。

「お前はリア充だなあ」

「羨ましいなら直斗もリア充になるために友達作れば?」

「その手には乗らん」

「ちぇーっ」

 彩楓が不満気に唇を尖らせながら頬を膨らます。二次元の女子ならば死ぬほどに可愛い仕草だなー、とか僕が思っていると不意に聞き覚えのある声が僕の耳の鼓膜を震わせた。
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