どこもかしこも世間はサッカーブラジルW杯一色。
日本チームは初戦で逆転負けを喫したものの、1次リーグ突破をかけて挑む今日のギリシャ戦には大きな関心が寄せられている(この記事はギリシャ戦の少し前に書いています)。
ニュースサイトを見ていても、日本チームの様子を伝える記事がここぞとばかりに溢れ出ており、なかには海外メディアが伝える日本選手の出来を翻訳して紹介しているものもあるようだ。
ところで日本のスポーツ選手が海外で活躍したときの現地の報道記事を見ていて良く思うのだが、欧州では特に日本人を形容して「サムライ」「ニンジャ」「寿司」「ハラキリ」といった定番ワードが使われることのなんと多いことか。いかにも身のこなしが軽いマンU香川選手やマインツ岡崎選手はしょっちゅうニンジャに例えられている。日本の司令塔・本田選手がイタリア・セリエAの強豪チーム、ACミランに移籍したときも「サムライスピリットとは何か?」という無茶振りをされていたことも記憶に新しい。
「サムライ魂」くらいは日本でも使うし、「ニンジャ」という表現がもつニュアンスは分からなくもないが、選手を「極上のスシ」と表現するあたりは日本人の感覚でも全くもって理解不能である。
こうした日本への大いなる誤解をふんだんに盛り込んだクレイジーな作品がある。それが今回ご紹介する『ニンジャスレイヤー』だ。
ご存知の方もいると思うが、『ニンジャスレイヤー』はもともと海外の作者によるTwitter小説が原作である。「サイバーパンクニンジャ小説」と題されたこの作品は、英語版も日本語版もなんと全文がTwitterで配信されているため、本来ならわざわざ書籍版を買う必要もない。何せ1巻あたりの分厚さが国語辞典並みで、しかも既に10巻近くも発売されているため、本棚があっという間に埋め尽くされてしまう。
しかも「01010010101・・・」とか、「アチョー、グワー」といった文章がJ-POPの歌詞のようにただひたすら繰り返されるだけのページもある(だから余計に分厚くなるのだが)。さらには第一巻の第一話がいきなり「前回からのあらすじ」からスタートする謎の構成。Twitterで全文公開されていて、しかも一見無駄に思えるようなページまで忠実に書き起こしてまで、わざわざ本にして発売しようと思ったエンターブレイン社には一種の狂気さえ感じる。
だがこのノベルス、実は驚異の中毒性の高さでどんどんファンを拡大している。Twitterのタイムラインを追うことなく一気に読める手軽さに加え、ノベルス限定の挿絵やキャラクターイラストが載っている。しかも表紙もアメコミ風でオシャレかつカッコいい。
個人的にはマンガも良いがノベルスもイチオシだ。
現在ノベルスはすでに第三部に突入しているのだが、ここではまず第一部を紹介しよう。
第一部の舞台は、昼でも薄暗く、汚染された重金属酸性雨が降り注ぐ電脳都市、ネオサイタマ市だ。ありとあらゆるものがネットワークで結ばれ、人体改造も当たり前になった世界。『AKIRA』や『攻殻機動隊』、映画『ブレードランナー』のような機械仕掛けの暗い未来をイメージしていただければよいだろう。
これに懐かしのゲーム『がんばれゴエモン』で描かれているような、変な日本文化とメカがごちゃまぜになったような世界観がドッキングしたものが『ニンジャスレイヤー』の世界なのだ。
「実際安い」など変な日本語で書かれたネオンサインが街を照らし、高層ビル群の上空には「御用」のペイントがなされたマグロ・ツェッペリンが、漢字サーチライトを彼方此方に向けている。ネオサイタマ市の実権を握る悪のメガコーポはクローンヤクザやバイオ・スモトリ、そしてニンジャを雇って、何も知らない一般人から搾取を続けている。そうそう、出てくる食事のなかで極上のものとされているのは、オーガニック・トロ・スシだ。
カチグミ・サラリマンとかウシミツ・アワーといった単語が散りばめられているあたり、外国人が原作者とは信じられないくらいの日本文化に対する深い洞察が見られる。相当日本について詳しいのだろう。にも関わらず、日本文化をわざと捻じ曲げて大真面目に世界に発信しようとしているあたり、原作者コンビの思考回路は常識を軽く超えている。
ストーリーの主軸は、妻と息子を殺され復讐に燃える主人公ニンジャスレイヤーが片っ端から敵対するニンジャを殺しまくる、というものだ。手裏剣やマキビシなどニンジャらしい武器も使うのだが、なぜかニンジャなのにカラテを使って敵を倒す。
敵ニンジャは腕から炎を放出したり、空を飛び滑降して攻撃したりして、まるでロックマンに出てくるロボットのようだ。協力してくれる謎の美女、ニンジャ抗争に巻き込まれた可愛げな女子高生、おぞましい見た目に反して正義の心を持つゾンビニンジャなど、キャラクターはどんどん増えていく。
こうした世界観や魅力あるキャラクターに完全にハマってしまった私は、小説だけでなくマンガや映像で『ニンジャスレイヤー』を味わいたい! と前々から思っていたため、コミカライズは本当に楽しみであった。そしてその期待を裏切ることなく、マンガ版は「忍者×ブレードランナー」の世界をしっかりと表現している(個人的にはもう少し細かいコマ割りの方が好みだが)。
実はマンガ版は複数の種類が発表されているのだが、こちらのバージョンはノベルス同様にTwitterで無償公開されている(https://twitter.com/njslyr_ukiyoe)。
いきなり購入するのが憚られる方はこちらでまず試読していただくのも良いかもしれない。
メディアミックスに積極的な『ニンジャスレイヤー』は、マンガ化だけでなく映像化もされるそうだ。まずはアニメーションからということであるが、個人的にはぜひ実写化してもらいたい。海外含めて馬鹿ウケするのではないだろうか。
私のイメージでは紀里谷和明監督の『CASSHERN』や『GOEMON』の世界観がぴったりなので、実写化される際にはぜひ手掛けていただきたいものである。
この作品は中毒性が高すぎて海外の方に本当に誤解を生みかねない。だが、勘違いの日本文化からスタートしても良いから、多くの海外の方が日本に興味を持って来訪し、日本の素晴らしさを知っていただければと思うばかりだ。
マンガ版はこちらから↓
ノベルス版はこちらから↓
参考
物理書籍公式サイト・・・http://ninjaslayer.jp/
マンガ版(浮世絵版)Twitter・・・https://twitter.com/njslyr_ukiyoe
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