MINDAN
在日本大韓民国民団 2002W杯

W杯挑戦史


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▼メキシコ大会(第13回・1986年

32年ぶりの本戦、W杯初ゴールも
天才マラドーナに真っ向勝負

 


天才マラドーナ(左)に対し、反則覚悟で徹底的にマークする韓国DF(写真右ば敏国)



宿敵、日本破り2度目の本戦

 極東アジア地区最終予選でアウエー(東京・国立)で2-1、ホーム(ソウル・蚕室)で1-0と日本に2連勝した韓国は悲願のW杯出場を実現した。なんと32年ぶり2度目だ。

 最もマークされていたストライカー崔淳鎬を囮に起用した金正男マジック、日本が唯一得点した木村和司のフリーキックなど、金正男VS森孝慈の韓日監督決戦は今も両国サッカー史で伝説として語り継がられている。

 86年5月31日、メキシコ・オリンピコスタジアム。32年ぶりの出場を決めた韓国は、堂々と世界の舞台に戻ってきた。

 しかし、メキシコ大会に出場した24チーム中、最も評価の低かったアジア代表の韓国は優勝候補のアルゼンチンとイタリア、そして東欧のダークホース、ブルガリアという、厳しい組分けが待ち受けていた。まさに「死の組」だ。

アルゼンチン戦で世界の壁痛感

 初戦の相手は「天才マラドーナ」率いるアルゼンチン。その爆発的な攻撃力に対抗するため、韓国もドイツ・ブンデスリーガで活躍中の車範根を緊急補強した。

 海外で活躍する許丁茂、国内最高のストライカー崔淳鎬、そして地域予選で脚光を浴びた新鋭の金鋳城、83年世界ユースベスト4の立役者である金鍾夫など、攻撃重視の布陣でアルゼンチン、いや、マラドーナに真っ向勝負を挑んだ。

 「ボールが足にくっついていた。ドリブル、シュート、パス、すべてが完璧な選手だった」と、許丁茂が後に語ったが、同大会優勝で「天才」から「神」へと昇華したマラドーナのテクニックに、韓国は為す術もなかった。

 前半は金平錫、後半は許丁茂がマラドーナを退場覚悟で徹底的にマークしたが、アルゼンチンに決められた3つのゴールは、すべてマラドーナからのアシストだった。

 しかし、韓国も意地を見せた。後半27分。韓国がW杯史上初得点として、今も語り継がれる朴昌善のロングシュートが、矢のような勢いでアルゼンチンゴールのネットに突き刺ささった。

 
イタリア戦で同点ゴールを決め手を挙げて喜ぶ崔淳鎬と韓国イレブン  

 強豪相手に初ゴールで勢いに乗る韓国は、その後も果敢な攻撃を仕掛けるが、結果は1-3。点差以上に実力差を見せつけられた。

 試合後、マラドーナへの徹底したマークと反則ギリギリの激しいタックルに「韓国にサッカーはない。あるのは反則だけだ」と現地のマスコミが酷評。また、許丁茂のプレーは「テコンドーだ」と非難された。

 だが、こうした強豪との戦いは韓国選手のフィジカル面を鋼にし、「魂のサッカー」と称されるプレースタイルの確立を築いていった。

凡ミスでブルガリアに分け

 2戦目のブルガリアは決して甘い相手ではないが、アルゼンチンやイタリアよりやや格下だ。韓国初勝利の可能性は高かった。しかし、拮抗するゲームを味方GKのミスから、あっさりと先制点を奪われた。

 後半に入り金鍾夫が1点返すも、時すでに遅し。1-1のドローに終わる。この頃から韓国サッカーがW杯で勝てない最大の要因は「ゴールキーパー」と囁かれるようになった。このドローでW杯初の勝点1を得た韓国だが、勝機のあったゲームを落とした落胆は予想以上に大きかった。

アジア軽視した偏向判定に泣く

 3戦目はイタリア。勝てば韓国にもベスト16進出の可能性が残されていた。

 試合は前半17分、ブルガリア戦同様、再びGKの凡ミスからこぼれ球を押し込まれ先制された。しかし、勝利に向けて死力を尽くす韓国が、失点を期に攻撃へと転じる。

 後半17分。趙廣来からのパスを崔淳鎬がイタリア伝統の固い守備を物ともせず強引なドリブルから強烈なシュートを叩き込み、1-1に追いついた。このシュートは、英国のBBCが放送した「86年W杯スーパーゴール」のベスト10にランクされた美しいゴールだ。

 これを皮切りに、徐々にゲームの主導権を握り始めた韓国に予期せぬ敵が現れた。それはイタリアの明らかなファールを黙視し、韓国の何でもないプレーにファールを連発する主審の偏向判定だ。

 この判定で韓国守備陣に動揺が現れた。ファールを受けまいと萎縮するあまり、激しいボディーコンタクトで相手を封じ込む韓国特有のマンツーマン・ディフェンスが崩壊した。

 この隙をイタリアにつかれ、韓国は2点目を奪われた。

 悪夢はこれで終わらない。イタリア疑惑の3点目だ。明らかなオフサイドポジションからの得点にも、線審はピクリとも旗を上げなかった。

 この判定に発憤した韓国は後半分。許丁茂のゴールで3-2と追いすがるも残り時間はわずか3分。やがて無情のホイッスルが響いた。

 結局、1分け2敗で予選リーグ敗退。しかし、強豪相手に全てのゲームで得点を奪った韓国の攻撃力は高く評価され、その底力を世界に強く印象づけた。

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