イラクで恐ろしいことが起こっている。アル・カイーダ系の武装集団が、主だった都市を攻略しながら、どんどん首都バグダッドに近づいている。このテロリストたちは、ドイツのニュースではISIS(イラクと大シリアのイスラム国)とされ、日本のニュースでは、彼らの2つ目の名称ISIL(イラクとレバントのイスラム国)が使われている。
レバントというのは、地中海東部沿岸地方一帯を指し、中世のころは東方貿易の中心だった。つまり、彼らテロリストの狙い目は、イラクとシリアだけでなく、レバノンも、イスラエルも、という意味に取れる。しかし、ここでは便宜上、ISISのほうを使うことにする。
私は、1980年代に足かけ3年ほどイラクに住んだことがある。だから、イラクと聞くと、感覚の中に熱風と砂埃が蘇る。そして、灼熱の世界に忽然と現れるユーフラテス河畔の、緑にあふれた村々が目に浮かぶ。
あの国のほとんどは平野だ。砂の平野。今、北から南にどんどん武装テロリストが攻めてきているとすれば、それを遮るものはない。さぞかし恐ろしいことだろうと思う。それはまた、自分たちの世界が、きりきりとネジを巻くように7世紀ごろのイスラムまで戻されてしまう恐ろしさでもあるはずだ。だから、今、イラク人は必死で国外に逃げ始めた。
私のいた当時、イラクはサダム・フセイン独裁下で、イラク・イラン戦争の最中だった。戦時下のイラクで、私は、ドイツの建設会社の、砂漠の真ん中にコンテナを並べて作ったベースキャンプで暮らしていた。バクダッドはときどきイランからミサイルも飛んできたが、私たちのキャンプはそこから40キロほど離れていたので、比較的安全だった。ただ、ある夜、バグダッドで食事をしていたとき、ミサイルが飛んできて、地面が揺れたことはある。
ちなみに、私の処女作は、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』 (草思社)というインサイド・レポートだ。のちの湾岸戦争の前夜に刊行されている。
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