(cache) 続・憑依術講座

――昼食を、三人で食べた。
三人というのは、僕と、母さんと、そして姉さんだ。

ちなみに昼食の献立は冷やし中華。
母さんの定番メニューだ。

・・・もっとも味なんか全然覚えていない。
何故なら食事中――僕は自分を押さえるのに必死だったから。
母さんが何かを言ってきたが、ほとんど上の空だった。

それでも・・・・・・姉さんが喋りかけてきた時は、心臓がドキンと激しく高鳴った。
姉さんの声に――
姉さんの動きに――
近くで嗅ぐ姉さんの匂いに――
僕は敏感に反応していた。

自分でも信じられないけれど・・・
僕は――姉さんの顔を、正面からマトモに見られないでいたんだ。

今朝と何一つ変わらない筈なのに・・・・・・
僕の中では、隣りに座っているこの人は、すでに口煩い姉なんかじゃなくなっていた。

それもこれも・・・先ほど姉さんに乗り移った所為だ。
憑依術を使って、花織姉さんの体に・・・・・・!

脳裏に刻まれた姉さんの体の感覚を思い浮かべると、また股間が固くなってきた。
慌てて前屈みになる。

「どうしたのよ?」

そんな僕の様子に目ざとく気付き、 姉さんが麦茶を飲みながら、何気ない調子で聞いてきた。

「べ、別になんでもないよ・・・」

聞こえるか聞こえないかくらいの声を絞り出し、僕はどうにか答える。
駄目だ・・・!
こんな状態で、いつまでも和気藹々と家族モードに身を浸しちゃいられない・・・!
僕は冷やし中華を急いで掻き込み、とっとと自分の部屋に戻る事にした。

さあ・・・そろそろいいだろう。
部屋に帰ったら、憑依術の再開だ・・・・・・!



STEP2:姉さんの体で


う〜ん・・・今度姉さんの体に乗り移ったら、まず何をしようか?
さっきみたいに行き当たりばったりで術を使ったら、また暴走するのが関の山だ。
まず何よりも・・・平常心のまま、他人の体に乗り移っていられるようにならなくっちゃね。
きっとそれが、精神力と乗り移り時間を伸ばしていくことに繋がるんだと思うし。

と、言う事は・・・・・・・
姉さんの体に入って、姉さんとして生活してみればいいのかな?
――うん、なんかそれが正解のような気がする。

姉さんになりきる・・・か。
今までずっと一緒に暮らしてきたんだから、他人に乗り移ってその人になりきるよりは、ずっと簡単な筈だ。
やっぱ初心者は、肉親を相手に練習するのが一番なのかもね。

よし!
そうと分かれば・・・気持ちを落ち着け、後は姉さんに乗り移るだけだ。
姉さん・・・早く部屋に戻っておいでよ♪
僕はウキウキと、花織姉さんが階段を上がってくるのを待った。

何分くらい経っただろうか・・・?
僕がいい加減待ちきれなくなって立ち上がろうとした時、パタパタと軽やかな足音が、階段から聞こえてきたんだ。

姉さんだ・・・!
と思いつつも、母さんだったら大変なので様子を伺う。

・・・足音の主は、僕の部屋の前を通り過ぎ、隣の部屋へと入っていった。
うん、花織姉さんに間違いない!
僕は素早く椅子を壁の方に向け、姿勢を正した。

では、術を唱えよう・・・!
よく考えたら、同じ人間に二度乗り移るのは、これがハジメテなんだよな。
やっぱり一人の人間を相手にしたほうが、憑依術はかかり易いんだろうか?
今から試してみよう・・・・・・
僕は目を瞑り、姉さんの姿を思い浮かべた。

・・・・・・?
うおっ!?
ビックリした僕は、思わず目を開けてしまった。

い・・・今のは・・・・・・!?
もう一度、ゆっくりと目を瞑る。

・・・・・・・・・!
す、すごい・・・!
僕は――目の前に、イヤ、頭の中に広がる光景に、息を呑むしかなかった。

隣りにいる筈の姉さんの姿が・・・僕の頭の中に、ハッキリと映し出されている!
大して精神集中もしていないって言うのに・・・・・・
こうも簡単に、ターゲットのイメージを捕らえることが出きるなんて!

やっぱり同じ人間には乗り移り易いのか?
そ れとも、僕の経験値が上がってレベルアップしたって事なのかな?
ともかく姉さんは今、確かに隣りの部屋にいた。
机に座ってなにやら本を読んでいる。
さっきのファッション誌だろうか?

頭の中に広がるイメージは、僕が今座っている位置から、壁を通り抜けて姉さんを見ている構図で映し出されている。
幽体離脱と違って色んなアングルで相手の事を覗き見できないのは残念だな。

でも・・・憑依術の達人は、こうして相手の姿を観察し、乗り移るタイミングを計っているってワケか。
納得納得。

よぉし・・・それじゃあ次は、対象者との意識の一体化だ!
僕は、頭の中で姉さんに近づこうとイメージした。
それだけで、僕の意識はするすると姉さんに接近し、カメラアングルがその顔をアップで映したかと思うと・・・あっという間に、姉さんの肉体に入り込んでいた。

融合完了だ・・・!
まだ呪文は唱えていないけど、僕の意識は姉さんの中に充満しつつあった。

不思議だよな・・・
まだ自分の体の中にいるのに、こうして姉さんの体にも入り込んでいるんだ。
別々の場所に、同時に意識を保てるなんて、どう言う事なんだろう?

――周りに、姉さんの存在を感じる。
意識の主導権は奪っていないけど・・・姉さんと同じ世界を共有しているんだ。
姉さんの体に、同居しているってワケか・・・ふふっ。

僕は指を持ち上げ、鼻に添えた。
さあ、姉さん・・・暫く眠っていてね・・・・・・


「サトちゃん・・・ぺ・・・・・・・!」

僕は――呪文を唱えた。

「・・・・・・」

さっきと同じく、脳裏にノイズが走ったような違和感。
うっすらと、目を開けてみる。

――眼前に、雑誌の記事が飛び込んできた。
ちょっと下を向けば見える、胸の膨らみ。
感覚の同調を確かめる為に、軽く一度、その膨らみを下から救い上げてみる。

「あんっ!」

僕の口から、甲高い悲鳴が漏れた。
揉まれた胸も、ちゃんと気持ちいい。
精神の移動は――無事完了したみたいだ。

う〜ん・・・やっぱり、1回目よりもスムーズに出来るなぁ。
スムーズ過ぎて、自分の肉体を離れて姉さんの体に移動したなんて、こうして実際に乗り移っている今でもやっぱり信じられないや。

けど・・・目を開けた時に、さっきまでとは見える景色がまったく違うって言うこの奇妙な感覚は、何とも言えない魅力がある。
オンライン小説のように、乗り移られる姉さんの姿を見られないのはちょっと残念だけど、ね。
(乗り移る瞬間を描かない乗り移り作品は、変身シーンのない特撮ヒーローものみたいで物足りない、ってのが僕の持論だし)

まあ、小説なんかと違って僕自身が他人に乗り移っているんだから、しょうがないんだけど。
あ、今度こっそり部屋にビデオカメラでも仕込んでおいて、それから乗り移ってみようかな?

手に持っていた雑誌を、机に置く。
料理の本だ。
今日の夕飯でも考えていたのかな?

取りあえず乗り移った後の確認をと、僕は化粧台の前に移動した。
何事もなかったかのように、姉さんは鏡の向こうから、僕に微笑みかけている。

・・・姉さん・・・寂しかったかい?
帰ってきたよ・・・

「うふ・・・っ♪」

後ろで手を組みながら、首を傾げ、ニッコリと笑顔を作ってみる。
可愛いなぁ・・・!
思わず自分の体を抱き締めたくなるじゃないか!

姉さん・・・
今から僕が、姉さんになるんだ。
僕が、花織姉さんに・・・!

「――アタシは花織、関ヶ原花織よ」

鏡に映る自分の姿に、自己暗示をかけるようにそう呟く。

「今は弟に、体を乗っ取られているのよ」

へへ・・・姉さんの物真似は楽しいなぁ。
本人が言いそうもない台詞を、僕の意思で自由に言わせる――他人を支配した時の醍醐味だよなぁ、やっぱ。

さて・・・
姉さんとして生活してみると言っても・・・まず、何をしようか?
まだまだ僕の乗り移っていられる時間は不安定だ。
あまり時間を食う行動は出来ない。
でも・・・最初はやっぱ当たり前の行動を取ればいいんだろうな。
食事したり、トイレ行ったり、お風呂入ったり、TV見たり。

・・・・・お風呂か。
今夜、姉さんがお風呂に入るくらいの頃に、また乗り移ってみようかな・・・?へへっ。
楽しい妄想を膨らませながら、机に戻り、椅子の上でもう一度足を組み直す。

う〜ん、こうしてスラリと長い足の持ち主がこんな姿勢を取ると、実に様になるなぁ。
僕はしばし姉さんの足に見蕩れた後、机の上を眺めた。

姉さんの机・・・
勝手に入ると怒られるから、いつもはよく観察した事もなかったけど・・・こうして見ると、普段気にも止めなかったものが目に付く。
机の上には写真立て。
写真は大学の友達たちと撮った物らしい。
何人かの男女と並んだ姉さんが、楽しそうに微笑んでいる。

そう言えば・・・姉さんって彼氏いるのかな?
なんかこの写真からは、そう言う雰囲気は感じられない。
普段接していても、男の気配なんてないし。
こんなに美人なのに・・・世の男どもは何を考えているのかねぇ、まったく。

乗り移ってみて理解した姉さんの魅力。
今まではただのお節介だと思っていたけど・・・もしも姉さんが彼女なら、こうした世話好きの面は実に男心をくすぐると思う。

机の上にあるものを色々と物色してみたけど、日記などの類はつけていないみたいだった。
ちぇっ、姉さんの赤裸々な一面が見れると思ったのに。

あ、ケータイだ。
机の上に、充電器に刺さったままの携帯電話が置いてある。
へへ、覗いちゃおーっと。
携帯電話を充電器から外し、中を覗いて見る。

・・・さすが姉さん。
アドレス帳に登録されている友達の数も半端じゃないな。

メールを見てみる。
ふむふむ、友達たちとの他愛無いメールが保存されている。
僕の知らない姉さんが、そこにはいた。

僕は今、姉さんの秘密を覗いているんだ・・・!
でも、ちっとも変じゃないぞ。
だって、姉さん自身が自分のメールを読んでいるだけだもんね!
へへへっ!
嬉しくなった僕は、そのまま椅子から立ちあがった。

よし、このまま部屋から出てみよう!
姉さんとして、姉さんの目で見る未知の世界。
今までは乗り移った体を楽しむ事しか考えてなかったけど・・・こうしてゆっくりとその体で周りを観察すると言うのも、憑依術の修行には大切な筈だよね!

ドアを開け、廊下に足を踏み出す。
僕はそのまま、自分の部屋に入ってみた。

「十郎?入るよ〜」

姉さんの口調を真似しながら、見慣れた部屋を見回す。
勿論、返事はない。
だって、僕はここにいるんだからね!

見ると、案の定僕の体は椅子に座ったままグッタリとしていた。
近づくと、目を瞑り完全に意識を失っている。

そう言えば・・・こうして乗り移った後の自分の状態をちゃんと確認するのもハジメテだな。
本当に、眠っているみたいだ。

肩に触ってみる。
そのまま、胸に手を下ろす。
心臓の鼓動がドクドクと伝わってきた。

不思議だ・・・
僕はここにいるって言うのに、目の前に自分がいて、こうして触っているんだから。
手から鼓動が伝わり、なんだか僕自身も興奮してきた。

う〜ん・・・このシチュエーション、客観的に見ると姉さんが僕の体に触っているって事だよな?
姉さん――僕に触りながらドキドキしているんだ・・・・・・
そんな事を考えたら、益々興奮してきた。
自分の姿を見ながら興奮するなんて・・・僕ってナルシスト?

妙な気分になってきたので、部屋を出る事にする。
よぉし・・・思いきって1階に下りてみよう!
僕は姉さんの体を躍動させ、リズミカルに階段を駆け下りた。

「ひゃっほう♪」

奇声を発しながら最後の段を飛び降り、腰を捻って廊下に着地する。
ニンマリとしながら顔を上げると、なんとそこには母さんが立っていた。

「!」

「ああ、花織ちゃん。お母さんもう出かけるから、後は頼むわね」

ビックリしてその場に硬直してしまった僕だけど、母さんは特に気にした様子もなく、声をかけながら玄関へ行ってしまった。
娘の変化には気付かなかったらしい。

び、ビックリした・・・・・・!
他人に乗り移って、ハジメテ第三者と遭遇した。
しかし母さんは、僕の正体にまったく気付いていない。
見た目には花織姉さんでも・・・中身は僕だってのに・・・!
もう少し会話でもすれば、いつもと違うと不思議に思ったのかもしれないけど・・・
この短時間じゃ、肉親でも分からないんだ・・・!

他人に成り済ます――
姉さんに成り済ます――

人を支配すると言う行為に、あらためて感動を覚える。
ううん、益々興奮してきたぞ!
ゾクゾクと背中を走る高揚感。
母さんがいなくなった今――ここは僕と姉さんだけの城だ!
もはや人目を気にする必要もない!!
僕は好き勝手に行動する事にした。

「フンフンフンフフ〜ン♪」

鼻唄を歌いながら、軽やかにリビングに移動する。
窓の外を覗くと、石垣越しに外が見えた。
道路を行き交う人々がいる。
彼らがもしこちらに目を向けても、僕の姿は姉さんにしか見えていないんだよね・・・
もしもこの体に他人が――男が――それも実の弟が乗り移っているって知ったら、彼らはどんな顔をするんだろう?
そう思うともう、悶え狂いそうになる。

「はぁ・・・!」

たまらなくなって僕は、うっとりと熱い息を吐き出した。
心臓が、激しく高鳴っている。
僕の歪んだ妄想に、姉さんの体がすっかり反応しているんだ。
股間がじんわりと燃え上がる。

ああ・・・たまんない!
アソコの中で、獣が暴れている。
じっとしていたくても、勝手に腰がイヤらしくうねりはじめる。
僕は自然と、自分の姿を見る為に鏡を探していた。

キッチンに足を踏み入れる。
うちの冷蔵庫は横に耐震補強用のセラミックの板が張ってあり、それが鏡のような役割を果たしていた。

姉さんの姿をそこに映す。
すっかりと上気した顔で、欲情した花織姉さんがこっちに熱い視線を送っている。
僕は姉さん自身に見せつけるように、くねくねと腰をストリッパーのように振った。

「うっふぅん・・・♪」

蠱惑的な笑みを浮かべる姉さんの顔。
艶かしいラインの「くびれ」を強調するように揺れ動く、姉さんの腰。
普段の姉さんからは考えられない姿。
そのはしたない格好に益々興奮した僕は、更に姉さんに無茶な姿を強要する。

冷蔵庫の板に両手を付いたまま、今度はまるで男のように、前後に腰を激しく振ってみた。
セラミック板に映った花織姉さんが、本当に嬉しそうにカクカクと腰を振っている。
う〜ん、まるで発情期の犬みたいなだな。
冷静に見れば、顔が真っ赤になるくらいみっともない姿だろうけど・・・今の僕には、とてつもなくセクシーに思える。

姉さんがこんな事をしている・・・
姉さんがこんな格好をしている・・・!
そう考えるだけで、イッちゃいそうだよ。

僕が操る花織姉さんは、すっかりイヤらしい女の匂いをプンプンと漂わせていた。
ああ、エロい。エロいよ花織姉さん!

一旦腰振りをやめ、ゆっくりと冷蔵庫に背を向ける。
顔はずっとセラミック板の方を見たまま、僕は冷蔵庫に向かってお尻を突き出した。

グレイのジーンズに包まれたムッチリとしたお尻。
ジーンズの生地が生み出す、何とも言えないラインが実にたまらない。

こんな時だからカミングアウト出来るけど・・・僕は女性のお尻が好きだ。
街中や学校で女性を見る時、ついつい目がいってしまうのがお尻だ。
特にスカートよりもこうしたパンツ姿の方が、お尻のラインが見えて大好きだったりする。
もうスタイルのいい人意外、パンツスタイルは止めてくれと言いたいくらいだ。

形。
大きさ。
女性特有のこのライン。
ああ、なんて美しい・・・!

ゆっくりと、両手で触ってみる。
ジーンズのザラザラとした固い手触りの後に、お尻の肉の柔らかさが伝わってきた。
むちむちっとした感触が、手の平一杯に広がる。

「は・・・ん」

うっとりとした吐息が、自然と口から漏れる。
背中を指でなぞられるよりも、何十倍もゾクゾクする。

まったく・・・女の人はお尻を触られるだけで、こんなにも気持ちいいだなんて・・・
ズルイよね、ほんと。
でも今の僕は、その気持ち良さも体感できるんだ。
こんな幸せがあるだろうか?

やっぱ、乗り移って何が一番嬉しいかって、こうして女の人の体でそのお尻を撫で回せる事さ!
いつも電車の中でチラチラ盗み見ていたものを堂々と、好きなだけ触ることが出きるんだ。
しかも撫でいるのはその女の人自身。
冷蔵庫に映る、お尻を撫でる姉さんの姿をじっくりと観察する。

自分のお尻を撫で回しながら、実に嬉しそうな顔をしている花織姉さん。
今、僕は乗り移っているんだなぁと、確かに実感する瞬間だ。

TSシーンを表現するのに、胸を揉む描写よりもお尻を撫でる描写の方が断然僕は好きだ。
確かに胸を揉んで気持ち良さそうにしている女の人の姿は、イヤらしくて実に素晴らしいけど・・・
それって、見ようによってはその人がオナニーしているだけ、とも取れるじゃない?
けど、自分のお尻を撫でてニタニタ笑っている姿って、ちょっと普通じゃあないでしょう。
他人の体を楽しんでいる――それを実に分かり易く表現してくれていると思うんだよね。

「でへへへ・・・この柔らかさがたまりませんな・・・♪」

などと、偉そうな薀蓄を頭の中で垂れながら、僕は飽きる事無く姉さんのお尻を撫で続けた。
オッパイみたいにバリエーション豊富にいじることは出来ないけど・・・このシンプルさが病み付きになっちゃうんだよね・・・♪

よし!
興が乗ってきた所で、このまま普段みたいに行動をしてみよう!
右手で腰やお尻のラインを楽しみつつ、左手で冷蔵庫の扉を開けてみる。
乗り移った体を探索していただけの今までよりは、ハイレベルな行動だ・・・・・・!

お、シュークリーム発見!
コンビニなんかで売っているような、ビニールのパッケージに包まれたシュクリームを冷蔵庫の奥から取り出す。

そうだ・・・
実は僕、前から試してみたい事があったんだよね。
それは・・・『味覚』って奴。
何を隠そう(って、別に隠す必要はないけど)僕って、甘いものが大嫌いなんだよ。
特に洋菓子。
クリームの匂いを嗅ぐだけで、胸がムカムカしてくるんだよね。

だから、そんな僕が他人の体に乗り移ったとして、はたして甘いものなんか食べても平気でいられるのか?
前から一度、試してみたかったんだ。
ドキドキしながら、僕は包装紙を破り、シュークリームを取り出すと、そっと口に含んでみた。

「・・・!美味しい・・・!?」

恐る恐る租借し、ゆっくりと飲みこんだ僕は、口内に広がる甘い衝撃に、感嘆の声を漏らしていた。
甘い。
甘い。
確かに甘い!
いつものような、胸焼けするようなムカツキが全然ない!

洋菓子嫌いの僕が、シュークリームを食べてこれだけ美味しいと感じられるなんて!
指についたクリームをチュバチュバと嘗め取った。

本当に、これがシュークリームの味なの?
僕の中にあった洋菓子のイメージが一変した。
こんなにも美味しいものが、何で僕は今まで苦手だったんだよ!?

――つまりこれが、姉さんの味覚って事か。
姉さんはお菓子を食べて、いつもこんな風に感じているんだ。
女の人が甘いものが好きなのが、よく分かった。

ふふっ、普段嫌いなものを、こんなにも美味しく食べる事が出来るんだから・・・本当にすごいや!
やっぱり他人の体って言うのは今まで感じていたものも、全く違う感覚で体感できるんだね。

胸の奥が熱い。
感動覚めやらぬまま、僕は嘗め回した指で、そのまま胸を揉んでみた。

「んあっ!」

様々な興奮に体が火照り、いつの間にか姉さんはすっかり出来あがってしまっていたみたいで、触れた乳房から快感が、光の速さで全身に広がっていった。

「んん・・・もう我慢できない!」

右手で胸を揉みながら、僕はゆっくりと床に膝を突いた。
・・・しかし、このまま勢いに任せていては、今までと一緒だ。
体の探索をするにしても、いつもとは違うシチュエーションでいってみよう。
――僕は、目を瞑った。

「へへ・・・」

目の前が真っ暗になり、感覚が研ぎ澄まされる一方、余計な感情が静まっていく。
そのまま前傾姿勢となり、僕はうつ伏せになった。

しかし、胸部で何かが押し潰されていく感触がある。
勿論、姉さんの乳房だ。

「んん〜この感触・・・♪」

左右に体を揺らし、体の下でムニムニと形を変える乳房の感触を堪能する。
まるで服の下にゴムボールでも入れてるみたいだ。
しかし、しばらくその行為を続けていると、段々と体が熱を帯びてきた。

「ん・・・はぁ・・・」

どうやら乳首が起ってきたらしい。
床と接触する度に服の中で乳首が擦れ、新たな快感を生み出しているんだ。

目を瞑っている僕にとっては、実に不思議な気持ちだった。
だって胸の下に異物があって、それを床に押しつけているだけなのに、ドンドン気持ち良くなっていくんだもん。
普段のオナニーでは決して味わう事の出来ない感覚だ。

そのまま胸を床に擦りつけながら、両手をお尻に導く。
円を描くようにして、ヒップラインを撫で回してやった。
暗い視界の中、胸から広がる快感に、更にお尻からの気持ちよさも加わる。

う〜ん、なんだかこうして目を瞑っていると、自分が姉さんの体に入り込んでいるのが、夢のように思えてくる。
なのに、胸の下には信じられない膨らみがあり、お尻はとても僕のものとは思えないほどに柔らかいんだ。

あえて視覚的な楽しみは封じ、 流れこんでくるエッチな刺激だけを味わう。
今、姉さんはどんな表情をしているんだろう?
今、姉さんはどんな格好を取っているんだろう?
鏡を見ればすぐ分かるのに、あえてそうはせず、頭の中にその情景を思い浮かべる。
視覚を失った事で、僕の想像力は飛躍的に向上していた。

これって贅沢だよね?
女の体に入りこんでいるのに、まるでいつものように頭の中で妄想しながらオナニーしているんだ。
目の前にある美味しそうな果実をもぎ取らずに、その手触りだけを楽しみ、どんな味なのかをあれこれ想像するみたいに。

・・・しかし本当に、女の体ってのは素晴らしい。
胸の感触、お尻の感触。
ううん、それだけじゃない。
肌をなぞるだけでもゾクリと震えが来る。
両手で生み出す快感だけでなく、体の他の部位からも自然に快感が溢れてくる。
体中の細胞が、連鎖反応するみたいに喜びを訴えてきているんだ。
更にはアソコも、すでにグツグツに煮込んだ鍋みたいに熱くなっている。

男なんて、手でしごくその一点でしか楽しめないってのにねぇ・・・
やっぱり、女の人はズルイや。
(まあ姉さんが、人一倍敏感なのかもしれないけどさ)

「あ・・・ん・・・あ・・・はぁ・・!」

視界を閉ざした暗闇の中で、姉さんの喘ぎ声だけが漏れ聞こえてきた。
ふふふ・・・僕が発している、姉さんの声だ。
まるで僕がオナニーしている横で、姉さんも一人エッチしているみたいじゃないか。
目を開いて、姉さんの痴態を見てみたいけど・・・今は我慢我慢。

鏡に自分の姿を映して、乗り移っている女性のあられもない格好を披露するのもいいけど、たまにはこんな楽しみ方も面白いよね?
ハジメテ他人に乗り移った頃、肉体を探索する事に夢中だった頃じゃ、とても考えられない趣向だ。

でも想像力を駆使して他人の体で遊ぶと言うのは、精神を鍛えあげる事にも繋がるような気がする。
これも精神の強化を計る上では、必要な特訓なのさ。

ともあれ、僕の――姉さんの股間ではすでに何かが爆発寸前だった。
・・・もういい頃合だろう。

ゆっくりと、
お尻を揉んでいた手を前に移動し、ジーンズのジッパーを下に下げる。
そしてベルトを解き、止め具を外す。

ゴトリ、とベルトの金具のついた先端が床に落ちた音が響く。
ジッパーを境に、姉さんの腰を覆っていたジーンズが少し開放された。
下半身に、外の空気が流れこんでくるのがハッキリと感じられる。

その刺激が、益々敏感に、姉さんの秘所を獰猛にしていく。
まるで体の中に、野生の虎でも飼っているみたいだ。

どうどう、落ちつけって・・・
じっとしていようと思ってるのに、腰が激しく前後に動き、パンパンと床板を打ち据える。

分かったよ・・・
さあ・・・今、静めてやろう!
ジーンズの奥で暴れまわる獣を静めようと、サーカスの団長のような気分で、僕は開かれたジーンズの中に、指を侵入させた。

・・・うわ!
姉さん・・・ビショビショだよ!
指を侵入させた先は、もう下着の上からでも分かるくらい、グッショリと濡れていた。
汗じゃない。
姉さんの・・・イヤらしい液だ!

姉さんが・・・
あの姉さんが、アソコを濡らしているんだ!

花織姉さんが僕の気持ちに同調し、体を反応させている。
あの姉さんがこんな事をするなんて、とても信じられないよ。
でも信じられないその出来事が、今目の前で起きているんだ。

肉体は同じでも、中身が違うだけで・・・
意識を支配するものが違うだけで、こんな事だってさせてしまえるんだ。

凄い・・・
凄すぎる・・・!

体の中で高まる感情に耐えられなくなり、意識しなくても腰が勝手に激しく動き出す。
指を動かす事も忘れ、僕は腰の動きに身を任せた。
股間に忍ばせていた指が、腰を突き出すことで内奥へと食い込み、勝手に快感を増幅してくれる。

「あっ、はっ、あはぁっ!」

予想外の快感に、姉さん自身も喜びに打ち震えているみたいだ。
僕は、床の上をのた打ち回る姉さんのあられもない姿を夢想した。

ああ、姉さん・・・
姉さん・・・
姉さん・・・
姉さん、姉さん、姉さん・・・!

「花織姉さん・・・・・・っ!」

再び僕は、姉さん自身の声で姉さんの名を叫んでいた。
衝撃に耐えられず、閉じていた目が、大きく開かれる。
その瞬間――姉さんのアソコも、大きく咆哮を上げていた。

「・・・・・!・・・・・・は、あぁぁ・・・っ・・・」

ぶるぶると全身が震え、叫んだ形のままの口から、凝縮されていた全ての力が吐き出されていく。
お風呂に入った時のような高揚感が、体の内側から沸き上がってきた。


どうやら僕は―――イッてしまったらしい。
自分でも信じられないが・・・パンツの中に広がっていく生暖かい感触が、それを物語っている。

・・・・・・何て事だ。
もうちょっと、姉さんの体を楽しむつもりだったのに・・・
ちょっと妄想に興奮しすぎたらしい。
精神よりも、体の方が耐えられなかったのか・・・?
くそっ!こんな事ならトバすんじゃなかったよ。

こんなんじゃあ、とても物足りない。
まだまだやりたいけど・・・・・・どうしよう?

・・・・・・・・
一度、ゆっくりと深呼吸する。

・・・・・・ふう・・・
・・・よし。
ひとまず――ここでやめておこう。

今日はまだまだ時間もあるし。
何よりそろそろ乗り移りの限界時間だろう。
ハッキリ言って欲求不満だけど、逆に言えばそれだけ後の楽しみが増えたって事だよね。

僕はゆっくりと体を起き上がらせた。
目を瞑っていたから分からなかったけど、僕は完全にキッチンの床に寝そべっていたらしい。
ちょっと汚かったかな?
ゴメンね姉さん。

下を見ると、寝そべった姉さんの形に、床に汗の跡が残っていた。
へへ・・・僕たち、こんなに激しくヤってたのか?
シャツも汗でベトベトだ。
脇の下の匂いを嗅いでみる。

う〜ん、汗ばんだ姉さんも・・・なんだかイヤらしくていいなあ。
っとっと、また色々と妄想が膨らんできちゃったよ。

とにかく――今はこの体を離れよう。
近くにあったタオルで姉さんの体を拭き、僕はリビングを出た。

元の体に戻って姉さん本人が目を覚ました時、自分の部屋以外にいたら混乱するだろうからね・・・
階段を上り、姉さんの部屋へ戻る。
僕は素早く机に座り、机の端に立て掛けられていた、スタンドミラーを手に取った。

「へへへ・・・レッスン2はこれで終了だ・・・姉さん・・・また後でね♪」

そう口に出しながら、頭に手を添える。

「どうも、失礼しました・・・!」


呟くと同時に、視界に違和感を感じ、瞬きを繰り返す。
――すでに僕は、一瞬の内に自分の体に戻っていた。

眠っていた体を起こし、時計に目をやる。
おお、今回は1時間近くも乗り移っていたんだ!
でもちっとも精神が疲弊した感触はない。

つまり・・・僕は確実にレベルアップしているって事なのかな?
へへへ、やったね!

憑依術はひとまず休憩だけど、僕はニヤニヤしながら再び目を瞑ってみた。
今や何の造作もなく、姉さんの存在を頭の中にイメージする事が出きる。

姉さんは机に座ったまま、キョロキョロと辺りを見回していた。
さっきまで夕食の献立を考えようと本を読んでいた筈なのに、いつの間にか1時間も経っているのに驚いている。
知らないうちに眠っていたのか?と、不思議な様子だ。
まさか自分の意識が僕に乗っ取られていたなんて、考える筈もないよね。

へへへ・・・知らないうちに自分が一人エッチをしていたと知ったら、姉さんはどんな顔するんだろう?
やはり気だるいようで、熱でもあるのかと額を手で抑えている。

僕がさせた事にまったく気付いていない――
その姿に、僕は再び支配欲を昂ぶらせていた。

今や姉さんは僕のもの。
姉さんと僕だけのこの世界で、姉さんをどうするか、姉さんに何をさせるかも、僕の思い通りにできるんだ。

さあ今度は・・・何をしようか?
ニヤニヤとほくそ笑みながら、僕は次のトレーニングのメニューをゆっくりと考え始めた――


(つづく)



考察〜肉体の違い

みなさんこんにちは、チャー・佐藤です。
今回、十郎君は中々面白い試みをしましたね?

――そうです、『味覚』です。
他人に乗り移った人間がまず感じるのは、五感が本来の自分のものと違う事についてです。
目が悪い人が、目の良い人の体になる――
耳の悪い人が、耳の良い人の体になる――
または、その逆になる――

普段とは違う感覚に、うろたえるものです。
皆さんも是非、他人になる楽しさを色々な角度から、存分に味わってみてください。
それでは。

あ、次回のレッスンでは憑依術の応用が登場しますので、お楽しみに。

チャー・佐藤

・本作品はフィクションであり、実際の人物、団体とは一切関係ありません。
・当作品の著作権は作者が有するものであり、無断に複製、転載する事はご遠慮下さい。
・本作品に対するご意見、ご要望があれば、true009@mail.goo.ne.jpまでお願いします。

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