- 日時 :
- 2014/07/01 18:30 to 20:45
- 定員 :
- 200 人
- 会場 :
- グラントウキョウサウスタワー 41Fアカデミーホール (東京都千代田区丸の内1-9-2)
- 管理者 :
全脳アーキテクチャ勉強会
- ハッシュタグ :
- #wba_meeting
第5回 全脳アーキテクチャ勉強会
「意思決定 - 深いゴール探索と深い強化学習の技術をヒントにして、前頭前野の機構の解明を目指す - 」
脳を構成する主な器官(大脳皮質、大脳基底核、海馬など)の動作原理を説明する計算論的モデルは、不完全ながら出そろってきています。これらの器官がどう連携して脳全体のアーキテクチャを形作っているかを解明し、人間のような知能の実現を目指すべき時期に来ています。
全脳アーキテクチャ勉強会では、毎回脳の機能の一部に注目し、神経科学、認知科学、人工知能などの関連分野の専門家をお呼びし、脳の機能の実現方法の何がわかっていて何がわかっていないかを、明らかにしていきます。
今回は脳の意思決定の機能に注目します。
脳の大脳皮質-大脳基底核ループという解剖学的構造は、脳がある種の階層的強化学習を行っていることを示唆しています。そして、その階層構造の一部である前頭前野は、「深い思考」の一例である行動計画に関与しています。
これらの神経科学的知見は、脳が行う柔軟な意思決定・行動計画の機構の解明に重要なヒントを与えてくれるはずです。
今回の全脳アーキテクチャ勉強会では、関連する神経科学的知見を簡単に紹介した後、深く関係する人工知能技術として、BDIアーキテクチャと強化学習について、それぞれの専門家にご講演いただきます。
終了後は,会場周辺にて有志による気軽な懇親会をおこないます.(詳細未定)こちらについても,みなさまのご参加をお待ちしております.
オーガナイザー
◎産業技術総合研究所 主任研究員 一杉裕志
1990年東京工業大学大学院情報科学専攻修士課程修了。1993年東京大学大学院情報科学専攻博士課程修了。博士(理学)。同年電子技術総合研究所(2001年より産業技術総合研究所)入所。プログラミング言語、ソフトウエア工学の研究に従事。2005年より計算論的神経科学の研究に従事。
◎富士通研究所 研究員 山川宏
1987 年 3 月東京理科大学理学部卒業。1992年東京大学で神経回路による強化学習モデル研究で工学博士取得。同年(株)富士通研究所入社後、概念学習、認知アーキテクチャ、教育ゲーム、将棋プロジェクト等の研究に従事。フレーム問題(人工知能分野では最大の基本問題)を脳の計算機能を参考とした機械学習により解決することを目指している。
◎東京大学 准教授 松尾豊
東京大学で、ウェブと人工知能、ビジネスモデルの研究を行っています。 ウェブの意味的な処理を人工知能を使って高度化すること、人工知能のブレークスルーをウェブデータを通じて検証することを目指しています。
勉強会開催詳細
日 時:2014年7月1日(火) 18:30-20:45(開場: 18:15)
場 所:〒100-6640 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー 41Fアカデミーホール
(※株式会社リクルートテクノロジーズ様のご好意による会場ご提供)
http://www.jebl.co.jp/building/southtower/
当日1Fエントランスでゲスト入館証を配布する予定です。
定 員:定員200名(定員に達し次第締め切らせて頂きます)
参加費:無料
申込方法:本イベントに参加登録のうえ,受付にてお名前(IDなど)をお知らせ下さい。懇親会に参加される方は、参加登録時に『懇親会に参加する』にチェックを入れて下さい。
講演スケジュール
18:30-19:00 「Deep Learning とベイジアンネットと強化学習を組み合わせた機構による、 前頭前野周辺の計算論的モデルの構想」(産総研 一杉裕志)
まず前頭前野に関係する神経科学的知見を簡単に紹介した後、脳の意思決定機構は、状況の違いや発達に応じて異なる方法を用いて報酬期待値最大化を近似計算するのではないか、という仮説を提案する。
19:00-19:40 「BDI ―モデル、アーキテクチャ、論理―」(奈良女子大 新出尚之)
Bratmanによれば、人間は「意図」をもって目標達成のための行為を決めるとされる。この考えに基づくRaoらのエージェントモデル「BDIモデル」について紹介し、これが人の脳の理解にどのように寄与できるかを考えてみたい。また、人間の行為決定においてこれと併用されていると考えられる、強化学習や確率推論などとの融合についても触れる。
19:40-19:50 休憩
19:50-20:30 「強化学習から見た意思決定の階層」(グーグルジャパン 牧野貴樹)
強化学習は、機械学習の分野で研究されている行動計画最適化のための計算理論である。複雑な環境でも、試行錯誤を通して最適な行動系列を学習できることから、工学的応用にとどまらず、認知科学における意思決定機構の理解のための枠組みとして注目を集めている。
しかし、複雑な環境においては、強化学習をそのまま適用すると試行錯誤のコストが大きくなりすぎるため、実際には、様々な工夫が必要になる。ここでは、強化学習の基礎的な考え方を解説したあと、人間の意思決定機構として興味深い研究分野である、モデルベース強化学習とシミュレーション、階層型強化学習と内的動機付けについての話題を紹介する。
20:30-20:45 自由討論
全脳アーキテクチャ実現に関する参考資料
第1回全脳アーキテクチャ勉強会 〜機械学習と神経科学の融合の先に目指す超知能〜
- 勉強会開催の主旨説明
- AIの未解決問題とDeep Learning
- 脳の主要な器官の機能とモデル
- 脳を参考として人レベルAIを目指す最速の道筋
- 勉強会概要と発表資料
第2回全脳アーキテクチャ勉強会 〜大脳皮質と Deep Learning〜
- 「大脳皮質と Deep Learning」
- 「視覚皮質の計算論的モデル — 形状知覚における図地分離と階層性」
- 「Deep Learning技術の今」
- WBAの実現に向けて: 大脳新皮質モデルの視点から
- 勉強会概要と発表資料
第3回全脳アーキテクチャ勉強会 〜海馬:脳の自己位置推定と地図作成のアルゴリズム〜
- 「SLAMの現状と鼠の海馬を模倣したRatSLAM」
- 「海馬神経回路の機能ダイナミクス」
- 「人工知能(AI)観点から想定する海馬回路の機能仮説」
- 勉強会概要と発表資料
その他関連情報
- 全脳アーキテクチャ勉強会Facebookグループ(現在300名以上が参加中!)
- 全脳アーキテクチャ勉強会公式Twitterアカウント
全脳アーキテクチャ勉強会の開始背景(2013年12月)
人間の脳全体構造における知的情報処理をカバーできる全脳型AIアーキテクチャを工学的に実現できれば、人間レベル、さらにそれ以上の人工知能が実現可能になります。これは人類社会に対して、莫大な富と利益をもたらすことが予見されます。例えば、検索や広告、自動翻訳や対話技術、自動運転やロボット、そして金融や経済、政治や社会など、幅広い分野に大きな影響を与えるでしょう。
私達は、この目的のためには、神経科学や認知科学等の知見を参考としながら、機能的に分化した脳の各器官をできるだけ単純な機械学習器として解釈し、それら機械学習器を統合したアーキテクチャを構築することが近道であると考えています。
従来において、こうした試みは容易ではないと考えられてきましたが、状況は変わりつつあります。すでに、神経科学分野での知見の蓄積と、計算機速度の向上を背景に、様々な粒度により脳全体の情報処理を再現/理解しようとする動きが欧米を中心に本格化しています。 またDeep Learning などの機械学習技術のブレークスルー、大脳皮質ベイジアンネット仮説などの計算論的神経科学の進展、クラウドなどの計算機環境が充実してきています。
こうした背景を踏まえるならば、全脳型AIアーキテクチャの開発は世界的に早々に激化してくる可能性さえあります。 そこで私達は、2020年台前半までに最速で本技術を実現できるロードマップを意識しながら、この研究の裾野を広げていく必要があると考えています。 そしてこのためには、情報処理技術だけでなく、ある程度のレベルにおいて神経科学等の関連分野の知見を幅広く理解しながら、情熱をもってこの研究に挑む多くの研究者やエンジニアの参入が必要と考えています。
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