政府・自民党は19日、集団的自衛権の行使容認に向けた閣議決定文案について、国連の集団安全保障措置に自衛隊が参加して武力行使できる内容を盛り込むよう公明党に非公式に提案した。国連決議に基づくシーレーン(海上交通路)の機雷除去を可能とするのが狙い。公明党は海外での自衛隊活動がさらに広がりかねないとして強く反発している。
国連の集団安全保障は侵略行為などをした国に対して、加盟国が一致して制裁する措置。現在の憲法解釈では、武力行使を伴う集団安全保障への自衛隊の参加は認められていない。政府が17日に自公両党に提示した閣議決定文案は「他国の武力行使と一体化」しない範囲で多国籍軍などへの後方支援を拡大するとの内容にとどめていた。
課題となるのは、集団的自衛権の行使として自衛隊が機雷除去に参加しているときに、国連の安保理決議が出て集団安全保障措置に移行した場合だ。機雷除去は武力行使と位置付けられるため、集団安全保障の枠組みでは日本は実施できず、結果的に自衛隊を引き揚げざるを得なくなる。政府内には集団的自衛権の行使として活動を続けられるとの解釈もあるが、法的な根拠はあいまいだ。
自民党の19日の会合では「集団的自衛権でできることが、国連決議があるとできないのはおかしい」と異論が噴出。集団安全保障でも武力行使ができるよう公明党と調整することで一致した。日本が攻撃を受けていない段階での武力行使は「国際法上は集団的自衛権または集団安全保障が根拠になる」と閣議決定文案を修正する案が有力だ。
自衛隊の活動範囲が一段と広がる懸念について政府関係者は「集団安全保障での武力行使にも『日本国民の権利が根底から覆されるおそれがある場合』などの要件が課せられ、戦闘行為はできない」と説明。「集団安全保障で武力行使を目的に戦闘に参加することはない」とする安倍晋三首相の従来発言と矛盾しないと述べた。
首相は国会答弁で、機雷除去は「受動的かつ限定的な行為だ」として一般的な武力行使とは異なると主張している。自民党幹部は集団安全保障のなかで武力行使を可能とするのは機雷除去だけだとも強調した。
公明党はもともと集団的自衛権行使としての機雷除去にも慎重だ。集団安全保障での武力行使への反発は必至。公明党幹部は19日夜、自民党案について「あんなのは無視していい」と否定した。
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