アドビは製品紹介イベントAdobe Creative Now 2014にあわせて、iPad用スケッチアプリAdobe Sketchと、iPad用製図アプリAdobe Lineを公開しました。iTunes App Storeから無償でダウンロードできますが、使用にはAdobe Creative Cloud(CC)のメンバーシップ登録が必要です(無償版のメンバーシップでも使用可能)。

なお、この2アプリは同日発表のデジタルペンAdobe Inkとデジタル定規Adobe Slideに対応しますが、指によるタッチ操作も可能です。

Adobe CC 2014 Mobile Apps

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Adobe Sketch and Line screenshots

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鉛筆やマーカーツールの書き味にこだわったSketch




Sketchは、いわゆるフリーハンド描画を中心としたイラストやデッサン用のアプリ。主な描画ツールとしては鉛筆、インクペン、2種類の混合マーカー(ブラシチップ、チゼルチップ)、消しゴムを使用できます。



アドビの売りは、実際の鉛筆やマーカーに近い書き味。たとえば鉛筆は紙に描く際にできる細かなかすれなども表現し、ブレンドマーカーは実際のマーカーで発生する混色も表現します。
こうしたシミュレート自体は他のアプリでもありますが、会場ではこれらの精度の高さについて強調していました。



また、いわゆる無段階のアンドゥとリドゥ機能を搭載。作業手順がすべて記録されているため、作業の修正は比較的容易な点、そしてまた3本指で画面を左右にスワイプするだけという操作性の高さもポイントとしています。



さらにデザイナー・芸術家向けのポートフォリオ(作品集)共有サイトBehance NetworkやFacebook、Twitterへの作品投稿機能も備えています。

定規機能やスタンプで精密な図が描けるLine



もうひとつのLineはSketchとはある意味対極となる、製図デザインを前提としたアプリ。アドビは「世界初の精密描画および製図用iPadアプリ」と称しています(余談ですがメッセージアプリのLINEとは違い、表記はLだけ大文字です)。



その性格を特徴づけるのが描画補助ツール。直線定規やT定規、雲形定規や形状テンプレート、パース用ツールなど、製図板で使われる道具を模したものとなっています。さらにスタンプとして、人物や動物、家具など、製図で使用頻度の高い図形のテンプレートが用意されています。



ちなみにInkとSlideの記事でも紹介しましたが、Lineは現状でSlideに対応した唯一のアプリ。そのため併用すると便利なように作られてはいますが、必須ではありません。



なぜなら、タッチ操作用のツールとしてSlideの代替となる機能があり、2本指でタップすることで各種の定規ツールが使えるため(上の写真で赤く表示されている2点がタッチ箇所で、その左右、非常に薄く表示されているのが定規の補助線です)。ただし、ツールの切り替え手順や2本指でタッチし続けている手間がSlideを使うことで省けるため、操作は快適になります。

フォトレタッチアプリPhotoshop Mixも追加



なお、他にもiPad用のCCシリーズとして、フォトレタッチアプリPhotoShop Mixが登場しています。モバイルでのPhotoshopシリーズはPhotoshop Touchがありましたが、これはタブレット用の機能限定版的存在でした。対してPhotoshop Mixは、デスクトップ版Photoshopの補助となるアプリです。





デスクトップ版の補助として作られたため、レイヤーを含むPSDファイルの読み込みと保存が可能な点にはじまり、写真の切り抜きや合成といった編集機能や「コンテンツに応じた塗り」「手ブレ補正フィルタ」といったデスクトップ版でも比較的新しい機能なども使えます(上の写真はコンテンツに応じた塗り機能で犬を消すデモ)。

なおコンテンツに応じた塗りなどの重い処理に関しては、CCサーバー側と演算を分散して実行するため、iPad上でも実用に耐える速度を確保するとアピールします。編集後の画像はカメラロールに保存するだけでなく、CC会員用のストレージを経由してデスクトップ側へ送信し、さらに編集を重ねることも可能です。

また同時に、iPadのみだったLightroom mobileがiPhoneにも加わったこともトピックです。
これはLightroom mobile発表時に予告していたもの。当時は2014年中をめどに、という予定でしたが、想像以上に速い登場となりました。

これまではモバイルアプリには比較的消極的なイメージさえあったアドビですが、ここへ来て一転して特徴的なアプリを続々と公開しています。同社の動きはデザイン・写真家向けソフト業界全般に波及するため、この動きがどう評価されるのか、アドビ製品ユーザーでなくとも面白い情勢ではないかと思います。