スマホ向けのゲーム「腐ったミカン」。木箱の中のミカンの一個が腐りだし、近くのミカンにどんどん広がる。傷んだミカンを素早く回収し、健康なミカンを守る。たわいないゲームだが、人気を集めているらしい。
大阪市教育委員会がこのゲームを連想させる取り組みを始めると表明した。悪さを繰り返す小中学生を学校から引き離し、校外に新設する「個別指導教室」で集中指導を施すそうだ。「腐ったミカン」を手っ取り早く放り出すように映る。効果は期待できるのか。
この隔離指導構想が出てきた背景には、学校教育法で定めている出席停止制度の機能不全がある。ひどい暴力を振るったり、授業を妨害したりする子どもの保護者に対し、市町村教委が出席停止を命令できる仕組みだ。
でも、めったに発動されてこなかった。子どもから居場所を奪い、追い詰めることになりかねないし、校外で勉強や立ち直りの面倒を見るのは、学校にとって重荷だからだ。
ならば、問題行動に走る子どもを一手に引き受ける場をつくろう。責任も負担も軽ければ、学校はためらいなく出席を差し止められる。大阪市教委はそう考えたのだろう。
だが、「腐ったミカン」を取り除くようなやり方では、自暴自棄にさせて逆効果ではと心配になる。落ち着いて学べる環境を守るのは学校の役割だが、その主役である子どもを選別し、分断する影響は大きい。 (大西隆)
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