「これは年齢差別では?」---。6月10日付の朝日新聞朝刊を見て、一瞬絶句した。来年4月入社の新規採用についての社告の中に、次のような文言を目にしたからだ。
〈 2015年3月に大学または大学院を卒業・修了見込みの方が中心ですが、生年月日が1985年4月2日以降であれば応募できます。 〉
年齢制限を設けて20代の若者に応募資格を限定しているわけだ。他社はどうなっているのかと思い調べてみたら、似たり寄ったりだった。読売新聞は原則として1987年4月2日以降に生まれた人に限定し、毎日新聞は「2015年4月1日入社時30歳まで」としている。社会人経験者の枠も別に設けているとはいえ、新卒一括採用を今も中心に据えているのである。
新卒者を中心とした若者に応募資格を限定するのは、事実上の年齢差別を招く慣行ではないのか。2007年の雇用対策法改正で年齢制限は禁止されたというのに、新聞社は新卒一括採用という形で堂々と年齢制限しているのである。
プロパー偏重で専門家不在の新聞社
改正雇用対策法では新卒一括採用は「例外事由」として認められており、新聞社の採用方法に法的な問題があるわけではない。だが、新聞社は日ごろ紙面上で性別や人種などによる差別全般に批判的な論調を掲げている。法的に問題かどうかに関係なく、率先して差別的な慣行をやめるべきではないのか。
そもそも、新聞社にとって多様な人材を採用するのは競争力維持に欠かせないはずだ。特に福島原発事故をめぐる報道の反省から、豊富な経験を積み、専門性を高めた人材はますます重要になっている。そんな人材を採用するうえで年齢制限は足かせになる。
新聞社では、新卒一括採用で入社した新人記者はまず地方支局で「サツ回り」を経験する。警察に夜討ち・朝駆けを仕掛け、捜査情報を誰よりも早く聞き出すスキルを身に付けるのだ。そのような慣行が長く続いているため、本社幹部の顔触れを見るとサツ回り経験を積んだプロパー(生え抜き)ばかりだ。
- 専門家不在が問題視されるなか、新卒一括採用にこだわる新聞社の謎 (2014.06.20)
- 朝日新聞とNYタイムズの書評欄は似て非なるもの ~スノーデン本の扱いに見る彼我の隔たり (2014.06.13)
- スノーデン本『暴露』は「内部告発冬の時代」を変えるきっかけになるか (2014.06.06)
- 朝日の「吉田調書」特報を無視し続ける大手各紙 (2014.05.30)
- 「吉田調書」で特報を放った朝日はエゴスクープと決別できるか? (2014.05.23)
-
-
木暮太一の「経済の仕組み」「超入門 資本論」【第6回】 企業が利益を生み出せる理由~剰余価値の種類~ (2014.06.20)
-
SEIJUNプレミアム二宮清純「伊良部秀輝にカーブを教えた男」 (2014.06.20)
-
牧野 洋の「メディア批評」 専門家不在が問題視されるなか、新卒一括採用にこだわる新聞社の謎 (2014.06.20)
-