集団的自衛権:国連集団安保での武力行使 政府与党調整
毎日新聞 2014年06月19日 22時07分(最終更新 06月20日 06時22分)
政府・与党は、集団的自衛権の行使を容認する自衛権発動の「新3要件」案を適用し、国連の集団安全保障での武力行使も可能にする調整に入った。自民党幹部が19日、明らかにした。政府は現在、集団安保での武力行使は憲法が禁じた「国際紛争解決のための武力行使」に当たるとして認めていない。新3要件に基づく憲法解釈変更を閣議決定した場合、自衛以外の目的で海外での武力行使が可能になる。これまでの憲法9条解釈を逸脱し、安全保障政策の大転換につながる。
憲法9条は「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」と規定しており、政府は集団安保での武力行使には参加できないと解釈してきた。しかし、国際平和への貢献を理由に解禁を求める意見は政府・自民党内に根強く、安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は5月15日の報告書で、集団安保に「憲法上の制約はない」と主張した。首相は同日の記者会見で「これまでの政府の憲法解釈と論理的に整合せず、(報告書の)考え方は採用できない」と明言したが、集団安保での武力行使容認を探る検討は続いていた。
自民党の高村正彦副総裁が与党協議で示した新3要件案は「他国に対する武力攻撃が発生し、国民の権利が覆されるおそれがある」場合に限って日本の武力行使を容認するものだ。同党幹部は19日、要件を満たす武力行使には「集団安保での武力行使」が含まれると指摘。「自衛隊が武力行使を目的として、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加することはこれからも決してない」という首相の会見での発言についても「海上交通路(シーレーン)での機雷掃海は法的には武力行使に当たるが、戦闘行為ではない」と述べ、政府・与党の議論と矛盾しないとの見方を示した。
こうした見解に基づけば、集団的自衛権を行使して機雷掃海に参加した自衛隊は、国連安全保障理事会決議で集団安保に移行した後も、現場で活動を継続できる。しかし、戦時に設置された機雷を除去する活動は国際法上は戦闘行為とみなされ、日本が「戦闘行為ではない」と主張しても理解を得られる可能性は低い。