集団的自衛権:国連決議での武力行使、全面的に認める余地
毎日新聞 2014年06月19日 23時46分(最終更新 06月20日 01時14分)
政府・与党が国連の集団安全保障措置での武力行使を可能にしようとしているのは、安倍晋三首相が強い意欲を示す戦時の海上交通路(シーレーン)での機雷掃海を、集団的自衛権の行使だけでなく、集団安保としても実施するためだ。しかし、閣議決定は政府の方針を示すもので、武力行使の範囲は機雷掃海に限定されない。逆に、集団的自衛権に加え、国連決議に基づく海外での武力行使を全面的に認める余地が生じる。集団的自衛権の行使をいかに限定するかが焦点のはずだった与党協議は、議論の前提が根本から崩れつつある。
1991年の湾岸戦争で、日本は憲法を理由に、戦闘中に自衛隊の掃海部隊を派遣せず、国際社会から批判された。この経験から、政府・自民党は戦時の機雷掃海参加を長年探ってきた経緯がある。与党協議が大詰めを迎える中、19日の自民党会合では「あらゆる事態に対応して機雷掃海を行うには、集団的自衛権だけでなく集団安保でもできるようにしなければおかしい」との意見が出た。
政府は中東の原油を確保できないことを「国民の権利を根底から覆す」事態と認定し、集団安保で可能にする活動を機雷掃海に絞る形をとることで、国民の理解を得ようとしている。首相は9日の参院決算委員会で「(機雷掃海は)受動的かつ限定的な行為で、空爆や敵地に攻め込むのとは性格が違う」と強調した。
しかし、集団安保を想定して閣議決定した場合、「自衛のための武力行使」に限って認めてきた従来の憲法解釈から大きく逸脱する。安倍政権が当面の活動を法律で機雷掃海に限定したとしても、将来的に海外での武力行使が際限なく広がる懸念は残る。これまでの与党協議でも集団安保は「多国籍軍への後方支援」を巡る議論が中心だっただけに、政府・与党で浮上した新たな論点は、唐突感が否めない。【高本耕太、宮島寛】