(2014年6月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アベノミクスの第3の矢は、矢というよりは1000本の針?〔AFPBB News〕
安倍晋三首相は今週、日本経済を再生させるための戦略の「第3の矢」を放った。その矢が見事に的に命中したバシッという音が聞こえなかったとしたら、それは、そんな音がしなかったからだ。
構造改革に関して言えば、安倍首相は、一発でリンゴを真っ二つにしたウイリアム・テルにはあまり似ていない。むしろ、1本か2本の針が実際に効くことを願って、1000本の針を国に刺している見習い鍼師に似ている。
忘れてしまった人のために言うと、第3の矢は日本の潜在成長率を高めることを目指している。労働人口が年間0.5%減少しているため、ほぼすべての成長は生産性の向上によってもたらされなければならない。
特に女性や年金受給者の労働参加率を引き上げたり、(理論的には)より多くの移民を受け入れたりすることによって数字を作り出すような手も打てるかもしれない。行動しなければ、日本は0.5~1%程度の低成長に甘んじる運命にある。
第1の矢、第2の矢は妥当な効果を期待できるが・・・
安倍氏の第3の矢――あるいは筆者が好む呼び名である「1000本の実験的な針」――は、安倍氏の金融政策と財政政策を補完するように作られている。これら2本の矢は、それなりに冷静沈着かつ妥当な効果を持って放たれた。
約2年間でマネタリーベースを2倍に増やし、2%のインフレ目標を達成するという約束によって物価は息を吹き返した。4月のコアインフレ率(消費税引き上げの影響を除く)は、円安の結果として輸入エネルギー価格が上昇したことが主因ではあるものの、1.5%という以前より高い上昇率を示していた。
それでも、低価格で有名な日本の衣料店ユニクロは今月、全商品を5%値上げする。これは企業の価格決定力の高まりを示す兆候かもしれない。
機動的な財政政策という第2の矢も、かなり真っ直ぐに飛んだ。昨年は、1100億ドルの追加支出が成長率を1.5%超まで押し上げる助けになった。日本は今年、経済を景気後退に逆戻りさせる恐れがあると一部の人が不安視していた、4月の5%から8%への消費税増税を乗り切っているように見える。
確かに今四半期は経済が縮小する可能性が高い。だが、それが、消費者が買い物を前倒しした結果、6.7%(年率)に高まった第1四半期の成長を帳消しにすることはないだろう。