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女性に急増 アルコール依存症

6月19日 21時10分

久米兵衛記者

仕事のあとに「一杯」という方も多いのではないのでしょうか。
こうしたなか、気になるデータがまとまりました。
自分の意思で飲酒をやめることができないアルコール依存症の患者が増え続け、去年、全国の推計で初めて100万人を超えました。
特に急増しているのが女性の患者で、この10年間で2倍近くに増えています。
問題の背景について社会部の久米兵衛記者が解説します。

患者が初の100万人超

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治療が難しく、心身の健康を悪化させるアルコール依存症。
去年、厚生労働省の研究班が行った調査で、患者の推計が109万人となったことが分かりました。
10年前の80万人から、29万人増え、初めて100万人を超えました。
このうち女性は8万人から14万人と2倍近くに急増しました。

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女性患者急増なぜ

都内で30年間、アルコール依存症の患者を支援しているNPO法人「ASK」にはここ数年、女性からの相談が急増し、先月の相談件数は男性と女性が同じだったということです。

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特に目立つのが働く女性からの相談で、女性の社会進出が進み、仕事のつきあいなどで飲酒の機会が増えたことが背景にあるとみられています。
相談記録からは「朝から飲酒しないと家事も仕事もできない」、「15年間、毎日飲酒しているが、どうしていいか分からず、怖い」などと、依存症から抜け出せずに苦しんでいる女性たちの切実な状況が伺えます。

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今月、電話で相談を寄せた関東に住む20代の営業職の女性は、仕事上のつきあいで酒の席に出ることが多くなり、次第に飲む量が増えたといいます。
女性は多い時で一晩に500ミリリットル入りのビールの缶を10缶も飲み、記憶をなくすこともたびたびあるということで、不安を訴えたといいます。

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NPO法人「ASK」の代表、今成知美さんは、「働く女性は仕事をしながら、結婚や出産、子育て、介護などさまざまなことに対応しなくてはならず、ストレスやジレンマを抱えて飲む酒の量が増えてしまうケースが目立つ」と話しています。

依存症陥りやすい女性

アルコール依存症を専門に治療する神奈川県横須賀市の久里浜医療センターでは女性患者がこの20年間で3倍に増加しています。

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樋口進院長は、「女性の場合は男性に比べ体や肝臓が小さく、体質的に依存症を引き起こしやすい。少ない量で健康を損なう危険性も高いため対策が必要だ」と指摘しています。

求められる支援

アルコール依存症の患者を支援しているNPO法人「ASK」代表の今成さんはアルコール依存症から抜け出すには専門の医療機関での治療とともに同じ境遇の人たちと悩みを分かち合うことが必要だとしています。

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しかし、仕事と育児、それに介護に追われるなど忙しい女性は患者どうしの集まりに参加する余裕はなく、特に地方にはそうした場も少ないといいます。
今成さんは女性たちが不安や悩みを率直に打ち明けられる場を広げることも必要だと訴えています。
政府は「女性の活躍」を成長戦略の柱の一つに掲げるなど女性の社会進出は今後、さらに進むと予想されています。

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女性のアルコール依存症の問題はひと事ではありません。
政府は女性の社会進出を後押ししていく以上、責任を持って急増する女性のアルコール依存症への対策にも力を入れていくことが必要です。