連敗で大会を去る前回王者
「ティキ・タカ」の死が確認されたのに続いて、スペイン代表チーム「ラ・ロハ」自体もマラカナン・スタジアムで壮絶な死を遂げることになった。昨年にはコンフェデレーションズカップ決勝でブラジルに敗れ去った場所で、今度はチリにサッカーのレッスンを施されてしまった。実際のところ、この試合と前回のオランダ戦で見られた戦いから判断すれば、過去2回のEUROと前回のワールドカップを制覇した伝説的なチームの面影はほとんどと言っていいほど見られなかった。しかし、時代の終わりを宣言するには慎重にならなければいけない。いくつかの副次的な周辺事情も考慮に入れる必要があるためだ。
まず最初に、ほんの数週間前にはスペインのクラブが(少なからずスペイン人選手を擁して)チャンピオンズリーグ(CL)とヨーロッパリーグを制していたという事実だ。その結果にふさわしい素晴らしいサッカーも見せていたし、CLに至っては決勝を戦う前からスペイン勢の優勝が確定していた。
だが、まさにこの長くなったシーズンがスペインの選手たちにマイナスの影響を及ぼしたこともあるかもしれない。ビセンテ・デル・ボスケ監督は豊富な才能を有していたとはいえ、選手たちの多くは疲労し、気持ちが乗り切っていない様子だった。彼ら全員が欧州の舞台での長いシーズンを戦ってきただけでなく、国内のラ・リーガにおいても、アトレティコ・マドリー、バルセロナ、レアル・マドリーが5月まで接戦を繰り広げるという過酷なシーズンを戦い抜いたばかりだった。
加えて、デル・ボスケ監督による采配にもいくつか疑問を挟む余地があった。もちろんその中でも最も大きな議論の対象となるのは、ジエゴ・コスタを帰化させて起用するという決断だ。ここまでの大会の中で最も期待を裏切った選手だと言っていいかもしれない。
彼の代役として、デル・ボスケ監督は2試合ともフェルナンド・トーレスをピッチに送り出した。彼の衰えは近年のサッカー界における最大の謎の一つだ。2年前のEURO決勝では数滴不利のイタリアに対して効果的な攻撃を食らわせて大会のゴールデンブーツ賞を獲得したが、それ以外の多くの試合では、リヴァプールを離れた日以来ほとんど毎回のようにごく希薄な存在感しか感じさせてこなかった。
一世代前のスペイン最高のストライカーであったダビド・ビジャは無視されているが、それ以上に、フェルナンド・ジョレンテが登録メンバーにすら含まれなかったのは本当に不可解なことだ。彼はユヴェントスで素晴らしいシーズンを過ごしただけでなく、スペインの攻撃的MFたちにスペースを生み出すためにも理想的な存在だと感じられる。
いずれにしても、2002年のフランスと2010年のイタリアに続いて、前回大会の優勝チームがグループステージ敗退に終わったのはこれで最近の4大会で3度目だ。これはごく単純な事実を示している。ワールドレベルにおいては、同じメンバーで勝ち続けるのは4年分歳を取ればほぼ不可能になるということだ。
これが世界的なサッカー強国としてのスペインの終わりになるかどうかは疑わしいと思うが、この屈辱的な敗退につながった保守主義の終わりとなることは期待したい。
文/チェーザレ・ポレンギ
GOAL JAPAN編集長。ツイッターアカウントは@CesarePolenghi