麻生財務大臣の4年前の国債に関する解説が話題になっているそうです。
- 麻生太郎氏による「日本の借金」の解説が超わかりやすい! 「経済をわかってない奴が煽っているだけ」 (logmi)
- 政府はいくら借金してもいい、に反論する (BLOGOS)
どちらにも問題があるので、簡単に説明します。詳しくは【国債がデフォルトしないことの常識的な説明】などを参照してください。
このテーマが難しいのは、
ことが、
などの一般人の経済常識とは相容れないからです。そのような誤解は、上の二つの記事双方に見られます。
みなさんはお金を銀行に預けておられる。銀行にとって預金は借金ですから、帳簿の上では借金ですからね。だからその借金を誰かに貸して、その”さや”を稼がないと金貸しという商売は成り立ちません。
家庭で考えればわかりやすいよ。父ちゃんが「会社で困ってるんだ。母ちゃん金貸してくれ」って母ちゃんに言って、母ちゃん金利とるか? なかなか父ちゃんに貸した金って取り立てもしにくい。そんな具合。だって郵便局にお金預けて、その郵便局が国債を買っているのだって、相手が国なら同じことでしょう。左のポッケから右のポッケに入れ替えたって。
確かに日本政府にお金を貸してくれる人がいる以上、つまり国債を買ってくれる人や企業がある以上、今すぐ日本が破たんすることはありません。
下のグラフを見ると、「家計が(金融機関を経由して)企業や政府に貸している」ように見えるので、「家計にお金がある間は破綻しない」と考えてしまいがちですが、因果関係は逆向きで、銀行の貸出や国債購入によって創造された預金がいったん企業や政府の資産となり、その後に家計に移転・蓄積しています。
「失われた20年」においても家計金融資産が増加しているのは、政府が負債(主に国債)を増やした結果であってその逆ではありません。
国債残高の増大にもかかわらず、国債金利が低位で推移しているのは、企業部門の資金需要が弱いことの反映です。企業部門は1998年度以降、資金余剰を続けています。
下の「解説」もいらぬ誤解を招きます。
それと、当然円で賄われているから、いざ満期になったときどうすればいいかって、日本政府がやっているんですから、日本政府が印刷して返すだけでしょうが。だって日本円なんだから。簡単なことだろうが。
政府はリスクフリー金利で国債を発行して預金を調達できるので、日本銀行券を印刷する必要はありません。
日本は自国通貨を持たないギリシャのようになる心配はない、という結論は正しいのですが、その論拠はよく理解されていないようです。結論が正しければ、ロジックが誤っていてもよいことにはなりません。
「超わかりやすい!」ということですが、一体何を分かっ(た気になっ)ているのでしょうか。