和食の腕に就労ビザ1号 韓国人調理師の福岡市・朴さん
「本物の和食、世界に広げて」-。和食を日本で学んだ外国人調理師に、政府から就労ビザが初めて発給された。農林水産省によると16、17日に全国で数人が取得したという。そのうちの一人が、中村調理製菓専門学校(福岡市)を今春卒業した韓国出身の朴勝昊(パクスンホ)さん(26)。朴さんは、福岡市博多区の「たつみ寿司(すし)」で働きながら、母国で店を構える夢を描いている。
これまで政府は、イタリア料理や中華料理など外国料理専門の外国人調理師に限ってビザを発給してきた。だが和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことや、調理師学校からの要請を受け、規制を緩和し、2月から和食調理師のビザの申請を受け付け始めた。
海外には約5万5千の和食店があるとされるが、見よう見まねで調理している店も少なくない。日本で修業するにも留学生資格だと週28時間までのアルバイトしかできず、十分な実務経験を積むのは困難だった。
朴さんは、すし職人を目指して3年前に福岡市に来た。語学学校で1年間、日本語を学び、同専門学校で2年間和食を勉強し、調理師免許を取った。
たつみ寿司には昨年3月からアルバイトとして働いてきた。自主的に早朝の魚市場に出向いて魚の知識を深め、休日も自宅で和食の調理の勉強に励む朴さんの熱心さに、店側も就労ビザの取得を後押しした。
朴さんは「これからは日本人と同じ条件で、フルタイムで働ける。現場で技術を体に覚え込ませたい」と目を輝かせる。
たつみ寿司総本店の田上一成店長(39)は「今のまま頑張って、韓国で店を開いてほしい」とエールを送る。同専門学校の中村哲校長(60)は「海外での和食店の開業を目指す留学生の受け皿になりたい」と話している。
=2014/06/19付 西日本新聞朝刊=