野村 謙二郎
- ホーム
- ライブラリー
- スペシャルインタビュー
- 野村 謙二郎
カープの偉大なるチームリーダー 野村 謙二郎
今年最後のMONTHLY SPECIAL INTERVIEWで「プロ野球チームをつくろう!ONLINE」を体験したのは、広島のチームリーダーとして活躍した野村謙二郎氏。 90年代半ばに“ビッグレッドマシン”と異名をとった強力打線を牽引していただけに、当時をもしのぐ超強力打線を組むかと思いきや・・・・・・?
この広島市民球場には、野村さんもたくさんの思い出があると思います。
- 野村
- プロに入ってから引退するまで、ずっとここが本拠地でしたから、いいことも悪いことも、本当にいろいろありました。この球場も来年限り。寂しいですが規格や施設面など問題もありましたからね。
また新球場で新たな歴史を築いてくれると思います。
期待したいですね。さて今回は「野球つくONLINE」の世界を体験していただきたいと思います。
- 野村
- ここに来るまで、自分ならどんなチームをつくりたいか考えていたんです。
それで思ったのが、やっぱりまず投手陣を強くしたいなと。野球は点を取るスポーツですが、それよりも点をやらないことが大事ですからね。
常に3割を打つ打者、40本塁打する打者はいますが、そういう打者でもいい投手にかかれば、そうそう打てはしない。
3割5分以上打っても好投手には2割台、年間40本塁打でもカモにしたのは防御率の悪い投手、ということがよくあります。
- 野村
- そうなんですよ。
それともう一つ、投手が良ければチームの守備も良くなると思うんです。
いい投球をする投手であれば、打者も芯で捕らえることが難しいので、同じ内野ゴロでも強烈な打球は減ってきます。また、コントロールのいい投手であれば、守備体系もとりやすい。
捕手が右打者の外角球を要求すれば、当然センターから左へ飛んでいく打球はないだろうと予測できます。
確率の問題ですが、右への打球をイメージしていてその通りであれば、野手も信頼して守れるんですよね。
でも逆球を投げてしまう投手だと、予測の逆を突く打球が来てしまい、長打になる可能性が高い。
そうすると、信頼して守ることができなくなるんです。
投手と野手との信頼関係ですね。
- 野村
- いい投手の時は四球も少ないし、投球のリズムもいいですよね。
守備があまり長いと集中力も切れますし、野球とはいかに相手を諦めさせるかというスポーツでもあるので、いい投手だと相手は試合前からいろいろ考えて、ちょっと構えてしまうもの。
そういう心理的な面での効果もあるんですよ。
野村さんが入団された頃のカープは、ひじょうに強力な投手陣でした。
- 野村
- ショートを守っていても、投手が「三遊間に寄ってくれ」とか指示を出していましたよね。
そこに打球が行くように投げるから、重視して守ってくれということ。
いま、そういう投手はほとんどいないんじゃないかな。
投手がそこまで気が回らないのか、それとも投手は投手、野手は野手という分業化が進んだせいなのかは分かりませんが。ただ、それで野球のレベルが落ちたかといえば、そうではないんですけどね。
本当に野球は奥深い。
- 野村
- 深いですよ(笑)。
野球に対する考え方はそれぞれですが、ただ投げるだけ、バントもできない、リードもできないという投手よりも、場面によって何をすれば自分の力が最大限に発揮できるかを考えられる投手だと、僕ら野手もとてもやりやすい。
打線はどういう感じで組みたいですか?
- 野村
- 走攻守とありますが、それが全部Aだったらスーパースター。
AAC,ABBでもいい。でもBBBだとレギュラーになるのは難しいでしょう。
走るのがとても速く、打撃か守備がまあまあの人は、レギュラーになれると思う。
もちろん長打力を軽視するわけではありませんよ。
ただ、本塁打は少なくても、全員足が速い選手で揃っていたら、投手も野手もすごく嫌なんです。
いつ走ってくるか分からないし、1本の安打を盗塁で三塁打と同じにしてしまえる。
走者一塁で二塁打が出ると、簡単にホームに還ってくる。
安打を二塁打、二塁打を三塁打、三塁打をランニング本塁打にできる・・・・・・これはとても嫌ですね。
本当ですね。面白いチームです。
- 野村
- 今年のセ・リーグでも、巨人は典型的な攻撃型で走ってはこない。
中日は投手も打者もバランスがとれたチームで、阪神はJFKを中心に逃げ切る野球と、まったくカラーが違いました。だから僕のチームみたいなのもいいんじゃないかなと思って。
捕手も含めみんな足が速い。本塁打は一番少ないけれど、得点力は高いみたいなね。
なかなか盗塁の多い捕手はいないですけど、みんながシーズン30盗塁ぐらいできたら面白いなぁ。
よく足にスランプはないと言いますが。
- 野村
- 言いますね。
でもそれはあまり盗塁してない方が言ってるんじゃないかな(笑)。
実際はありますよ。
もちろん100メートルを12秒で走る人が、調子が悪くて14秒かかるなんてことは、ケガでもない限りはない。
メンタル面が大きいんです。アウトになってはいけない、無理してはいけないという場面でのプレッシャー。
そういうところからも、微妙に影響が出たりする。
だからいろいろ考えて、わざと走らないようなこともありますし。
スタート勘なども影響しますね。
- 野村
- それとは逆にアウトになっていい場面もあるんです。
例えば二死一塁で、打席はクリーンアップ。
投手との相性はあまり良くない。
次の回には代打などで投手が代わりそう・・・・・・
そんなときはギャンブルで走ってもいい。
成功すれば得点圏に進めるし、失敗しても次の回はその打者から。
しかも投手が代われば一発も期待できる・・・・・・となる。
もちろん進んでアウトにはなりませんけど。
俊足の選手だと守備範囲が広くなります。野村さんもそういうショートでした。
- 野村
- 多分、誰も言ってくれないので自分で言っちゃいますけど(笑)、僕は現役時代、結構エラーが多かった。
人からも多いと言われたりしましたが、自分の中の自負というか慰めは、普通は追いつけない打球に届いて、グラブに当てたこと。
公式記録はエラーにされたけど、自分ではそう思っていないんです。
解説者の方にも「せっかく追いついたのに送球が悪い」と言われたけど「あの体勢で捕って、重心も崩れているんだから仕方ない」って思ったり。
自分でも止めるだけで投げなきゃ良かったって思ったこともありましたけどね(笑)。
でも野球選手って、そういう反発心もないとやっていけないものなんですよ。
もちろんそうでしょうね。
- 野村
- ですから僕も、ショートが一番楽しかったし好きでしたよ。
後にサードにまわったときなんて「このぐらいでいいの?」って思ったし、
ファーストになったら景色も全然違うし。
会社員でいったら、内勤の人が外まわりになるぐらいの違いでしたよ(笑)。
野村さんがトリプルスリーを達成された95年頃のカープは、超強力打線でした。実は今回、その再現もあるのかと思っていました。
- 野村
- 結局、僕がこういう考え方になったのも、あの時期の経験からなんですよ。
96年はチーム打率が.281もあったのに巨人に逆転されました。
序盤の5点を逆転できる野球より、最初からその5点がなければ、勝っていたんですよね。
いくら打つと言っても、いい投手がきたらそうは打てなかったわけですから。
だから「野球つくONLINE」では投手力と機動力。
そういうチームがいたら、僕かもしれないと思ってください(笑)
- 野村 謙二郎(のむら・けんじろう)
- 1966年9月19日、大分県佐伯市出身。
佐伯鶴城高、駒沢大を経て89年ドラフト1位で広島入り。
三拍子揃った名遊撃手として活躍し、2年目の90年から2年連続盗塁王(計3回)。
最多安打も3度獲得した。
95年は長打力でも魅せ史上6人目の3割30本本塁打30盗塁“トリプルスリー”を達成。
オリックス(当時)のイチローと並び、
球界を代表するリードオフマンとして国内外から高い評価を得た。
05年6月23日のヤクルト戦で2000安打を達成し、この年限りで現役引退。
通算成績は1927試合で打率.285、169本塁打、765打点。