今回の騒動について、ある程度自分なりにまとめてみます


※追記

「この程度で仕事した気になってんじゃねえ！」って怒鳴ったのは、編集さんに対してだけです。
てっきり編集が、告知媒体のことをちゃんと伝えなかったのかと思い、怒りの矛先を編集に向けていました。

絵師さんは充分、僕のお願いを真摯に聞いてくれた、素晴らしい方でした。

まず、本を出す前提として

自分のような売れない作家にとって、まず立ちはだかるのが配本という壁です。
はっきり言って、無名の絵師＋無名の作家の本では、配本されたものだけが全部売り切れたところで
増刷および打ち切り回避ができるかすら、微妙な状況に陥ってしまいます。

つまり、配本数という、作家の技術や能力ではどうしようもない壁に阻まれて
このまま出しても打ち切りが確定してしまうというのが、僕が無い知恵絞って出した結論でした。

ここで配本数という壁をまず突破するために、「無名の絵師」は「即打ち切り」という図式を受け止めなければい

けません。
自分がいくら良い物を書こう、良い文章を書こうと頑張ったところで、まず中身どころか本の存在に気づいてもら

えません。

ここに関しては自分以上に、編集さんが一番理解している部分で、きっと勝算のある絵師さんを紹介してくれるは

ずと信頼していました。

そういった前提で去年の夏、半年かかった原稿の初稿ができあがり、そろそろ絵師の候補を挙げてくれるかと思い

きや
全くろくな候補を考えておらず、僕の売れてなさを侮っているとしか思えないことばかり言ってきます。
まあ、そもそもあまり絵師に詳しい人というわけでもないので、仕事の片手間で探してもこんなものかと割り切っ

ていましたが。

結局、自分で誰か、ロボを描けてこれから名前が広がっていきそうな絵師を、候補として探そうと決意しました。

その過程で艦これをやっている友人から、「この人ロボ描けるよ」と教えてもらい、ためしに編集から打診お願い

してみたところ、良好な返事を頂きました。
僕は艦これというゲームをやったことがなく、興味もなかったのですが、まあ最近流行ってるゲームらしいしこの

人も仕事増えてくだろうから
今お願いしてＯＫもらえたのはラッキーだったなあ、という程度にしか状況を認識していませんでした。

それから数ヶ月が経ち、艦これと絵師さんの名前は僕の予想を超えて思った以上に大きな名前になり始め
またそれに伴って、絵師さんや運営に関するヤバげな情報が色んなところから聞こえてきて
「俺みたいな端っこの作家がこの人に描いてもらうの、もう無理なんじゃないか・・・？」
と不安になり始めたところで、音沙汰のなかった状態から一転、急にキャラの設定画が上がってくるようになりま

した。
まあ、向こうの仕事の息抜き程度にやってもらえているのかな、とお花畑なことを考えていました。

一応の発売日が決まり、これから発売に向けて宣伝や告知を展開していくという段になって
僕は編集さんを通して、絵師さんに「twitterかpixivのような、目に付きやすい形で事前に告知してほしい」とお

願いしました

ぶっちゃけこれは、ラノベではごく当たり前の販促活動の一環だと自分は考えていましたし
絵師の絵に興味がある人にダイレクトに情報が届くため、自分のように売れない作家にとっては
作品の命運を左右しかねない重大な要素なので、担当には何度もここを強調してお願いしてもらうよう懇願しまし

た。
また、ここで本の存在が知られれば、書店側の知名度も上がり配本数も伸びるはずという自分なりの読みもありま

した。

しかし編集さんは、やはり僕が売れない作家だということを忘れているのか
「あくまで向こうの善意だから」「良い物を書きさえすれば結果はついてくるから」と暢気な構え。

僕は、良い物を書いた自信があるからこそ、書いた物に対して勝算のある戦略を必死に考えていたのです。
良い物を書くだけでは売れない時代だからこそ、良い物を書く以外に何か方法がないかと焦っていたのです。

この人は、僕の作品に本気になってくれるつもりは始めからないんだな、という温度差を感じ始めたのがこの頃で

した。

それから発売日があと十数日と迫るにつれて、僕の焦りは募りますが、絵師さんからは何の反応もありません。
一応、編集を通して絵の作業が進んでいるという報告などは来るのですが、告知活動の方については相変わらず消

極的な姿勢。

当初こそ、直接電話か何かで絵師さんと話をして、「個人的にお願いしたい」と軽く言ってみるつもりでしたが
編集は決して自分と絵師さんが電話で直接やり取りすることを認めてくれず、ただ「自分に任せろ」というばかり

で
告知関係については、とにかくこちらからは案を出すのみで、実際にやるかどうかは編集の裁量次第という状態が

続きました。

ついに早売りの日（５／３０）を迎えるにあたり、何の音沙汰もないSNSを見て、打ち切りのトラウマが蘇って飯が

喉を通らなくなりつつも
公式発売日（６／２）である週明けまでは待とうと、我慢して編集と絵師さんを信じて待つことにしました。

６／２

作者「結局何の告知もしてもらえてないじゃないか！」

編集「あ。ブログの方は更新してるみたいですよ」

作者「えっ、うそ！？」

確かに更新はされていたのですが、このときの僕の正直な気持ちは「嬉しい」よりも「ヤバイ」でした。
今まで何の更新もなかった、しかも名義の違うブログで告知があったからといって、何人の手に情報が届くのか。
事実、自分の周りの絵師さんのファンは、一切気づいておらず、これで「ちゃんと仕事をした」と思ってるような

ら考えが甘すぎます。

何度も言いますが、俺はそれぐらいに売れない作家なんです。

作家「売れない弱小レーベルのくせになんで余裕ぶって綺麗事ばっかり吐いてるんだあなたは！
　　　作者がこれだけプライド捨てて、ネームバリューに縋るしかないと覚悟を決めてるのに、なんであんたは自

分の手を汚さず結果が出せると思ってるんだ！
　　　このまま打ち切りになったら俺だけじゃなくて向こうも悲しむ・・・かも知れないじゃないですか！」

という旨の電話をして、なんとか編集に対して絵師さんに打診してもらうようにお願いしました。

しかし帰ってきたのは、全く意外な一言

担当「絵師さんが今並行して仕事してる“あっち”の方から絵師に対して告知のNGを出された」

作者「は？　なんで俺みたいな売れない作家の本に“あっち”が口出ししてくるんですか？」

担当「こちらの仕事が滞っているのに、他で仕事をしていたなんて知られたくないからだろう。
　　　まあ、こうなるリスクも最初から込みでお願いしてるんだから仕方がない」

まずそもそもおかしいのは、そういったリスクが発生したとき、作品を守る為に動くのが編集の仕事じゃないのか

。
確かに「そちらの仕事で有名になった」方に、僕が目をつけて仕事をお願いしたのは紛れもなく事実です。
しかし、「フリーの絵師の仕事」について、そちらが勝手に口出しして左右する権利があるのでしょうか。
絵師が他社で仕事をするという選択肢を、暗に閉ざそうとしていることに気づいているでしょうか。

大体、その人の絵が滞っているのは“あっち”の問題に過ぎないのに、どうしてこっちが巻き込まれてるのか。

色んな感情が渦巻きはしますが、とにかくこの時点で、自分の作品の打ち切りが決まったのだと、僕は確信していました。

担当「向こうからも、力になれなくて申し訳ないと、謝られてしまっているぐらいで。一応、最大限の努力という

意味で、別名義のブログだけは更新していただけたようです」

作者「いや、手遅れになってから伝聞でそんなことだけ言われても納得できません。いい加減、直接話させてくだ

さい」

担当「いや。それだけはできない」

作者「お前の仕事が遅すぎてもう信用ができないって言ってるんだ。何を悠長なこと言ってるんだ」

担当「そんな乱暴な言い方をする人の言うことは尚更聞けません」

もっと早い段階でそんな事態になると分かっていれば、まだ色々と対応策を考えられたはずだとか
（あちらの仕事が落ち着くまで発売日を延ばしてもらうとか、別の宣伝方法を考えるとか）
どうしてこの人を信じて、待つという選択肢しかとらなかったんだろうとか
この本が売れることを願っていたのは俺だけだったんだろうかとか

昼間は会社員として働きながら、仕事の最中、そんな激しい後悔と担当への不信感だけが募り、発売後の初週が過

ぎていきました。
はっきり言って、この時点で配本されていた数は当初の予想通り、かなり絶望的な数字であり
やはり「誰か分からない作家と絵師」の本では、打ち切りにならないという希望すら、垣間見る余地がありません

でした。

結局二週間が経ち、打ち切りが決まる段になって編集が僕に言ってきた第一声は
「まあ、これに懲りず次も頑張りましょう」というクソみたいな励ましですらない励ましでした。

はっきり言ってその時の僕は、編集という他人に自分の作品の命運を預けざるを得ない商業の現実と
他社からの文句に対して「仕方ない」としか言ってくれないレーベルに対して、もう懲りてしまっていました。

編集は別に、会社員として本に関わっているだけですから、俺の本が打ち切られたところで
収入が下がるわけでも、会社をクビになるわけでも、毎日泣きながらゲロを吐くわけでも、ショックで頭をおかしくすることもありません。

作品の今後が、確実に閉ざされていくのを、僕は担当が何かしてくれているはずだと祈りながら待ち続け
担当はどうやら、「まあ仕方がない」と手遅れになるのを黙って見過ごしていただけのようです。

この時点で僕の精神は完全に糸が切れてしまい、編集に一応の了解を取った上で気休め程度にtwitterなど始めてみましたが
艦これの名前に釣られてきた２ｃｈの住人に見つかってボコボコにされて、もう完全に精神が疲弊しきってしまっていました。

それでもなんとか、僕はまだ２巻を出せば評判が良くなって１巻が売れる可能性を信じようと思い、筆を執り続けました。
ただ、担当を信じることもできず、自分が書いたものが良い物だったどうかもよく分からず、確実に精神がおかしくなっていく気配を感じながら
最後に思い付いたのは「この作品を信じてくれた絵師さんの為に書こう」という考えに縋ることでした。

きっと打ち切りの事実を知ったら、平気な顔をしている編集とは違い、一緒に悲しんでくれるだろう。
それで、辛いけど一緒に頑張ろうと励まし合えれば、それで気分を変えて２巻をなんとか出して作品を終われるだろう。

こうした考えを編集に伝えましたところ、件の会話につながるわけです。

作者「日ごとに精神状態がおかしくなっていってる。立ち直るチャンスが欲しいから、絵師さんと話がしたい」

担当「繊細な絵師さんを絶対に傷つけるし、今のお前は頭がおかしいから話をさせない」

作者「明確に今、潰れそうになってる俺には、何もせずに黙って潰れろっていうんですか？」

担当「そんなことは言ってない」

作者「そんな綺麗事だけで、自分はリスクを全く負うこと無く、今後も俺みたいに潰れていく作家を見過ごすだけですか。
　　　この程度の助けすら聞き入れてもらえないなら、自分は今回のあったことを全部ネットに書いて、自分の精神の安定を守ります」

担当「それは脅迫だ。脅迫なんて卑怯な真似をする人間の言うことを聞く気は一切ない」

作者「そんなつもりはなかった。でも、俺にも意地があるから、今言った言葉を絶対に引っこめるつもりはない」

落ち着いた今だからこそ、冷静な口調で書いていますが、実際はかなり僕の口調は乱暴なものでした。
この時点で自分の心が、結構取り返しのつかない状態になっており、頭がおかしいと言われても仕方なかったと思います。

ただ、今まで信じてきた担当から「脅迫をする頭のおかしい人間」としか取り合ってもらえなかったことで
溜めるに溜め込んだ被害妄想や怒りや悲しみや憎しみが、全て堰を切ってしまって、自暴自棄になり、今回の騒動に至りました。

まず何より、今回の騒動に全く関係がないのに、巻き込んでしまったコニシさんに対しては非常に申し訳なく思います。
謝罪のメールを何度か送らせていただいたのですが、返信そのものがなく、最後まで話をする機会もいただけませんでした。
このブログを見ている可能性も、まずあり得ませんが、謝罪する機会すら最後までもらえなかったのが残念でなりません。

次に担当さんへ。「見捨ててはいない」「本当に残念に思っている」と耳障りのいい言葉を並べつつ、あなたは結局何の対応も行動も取ってはくれませんでした。
俺が潰れていくのをただ黙って見過ごし、最後になって「お前は頭がおかしい」とトドメを刺しました。
僕はそのことに対して、未だに許す方法が自分の中でもまだみつけられていません。

そして全く無関係な絵師さんのファンの方々へ。
正直、僕が仕事をお願いしたことによって、仕事のスケジュールが切羽詰まってしまったのは、事実なんだと思います。申し訳ありません。
ですが直接やり取りをしているわけでもない僕に、絵師さんの精神状態を左右するような行動は、何一つ取れませんでした。

最後に、告知というただそれだけのことを止めに入った他社の方について。
誰が、どのように、どういった形で、NGを出したか、編集から伝聞でしか聞いていないので僕には解りません。
ですが、僕はその告知活動に対して過剰に期待してしまっており、そこに口出しを受けたことに怒りが収まりませんでした。
どっちみち打ち切られる未来に変わりはなかったかもしれません。けれどこの告知だけでも上手くやってもらえていれば
そのときは「全て目論見通りにやったけど、自分の実力不足だった」と認めるつもりで居ました。

「売れるためには売れなければいけない」という現実に自分が立ち向かうためには、一体どうすべきだったのか。
まだ答えは分かりませんし、今となっては考えること自体、無意味かも知れません。
少なくとも売れない新人として、売る気のないレーベルから本を出すこと自体が、間違っていたのでしょうか。
自分は、能力の無い人間から能力のある人間だと褒められて、勘違いして、作家ゴッコをしていただけの、無価値な物書き気取りだったんでしょうか。