■おじさんのズレたしなめる
著者は『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)で、惨めな弱者に成り果てたと思われていた現代の若者が、実は過去40年で最も生活満足度が高い若者でもあったというデータを紹介して話題となった。本人が弱冠20代ということもあって、当事者性のある若者論の語り手として人気がある。
本書で古市は、そんな「若者」の立場から、日本の「おじさん」のズレ方を目の細かいヤスリのような皮肉でたしなめる。「クールジャパン推進会議」やスマホ家電のズレ具合に突っ込みまくる章などは実に痛快だ。溜飲(りゅういん)を下げたい若い世代と他人事のように説教されたい「おじさん」世代のニーズに、本書はみごとに答えている。
「社会学者としては掘り下げが甘い」「ズレた原因の解明がない」「朝井リョウへの謎のこだわりがうざい」などの不満もあろうが、エッセイ集として読めば新鮮な視点も多い。女子力の高い文体は親しみやすく、「コンサマトリー(自己充足的)」に「やさしい革命」を、という提案もなかなか素敵(すてき)だ。
それだけに、皮肉の効いた未来予測、「2040年の日本」の姿は妙にリアルだ。ズレが放置された結果到来する、「幸福な階級社会」というディストピア。
ではそのズレをどうするか。本書では「おじさん」を「今いる場所を疑わなくなった」人とみなす。「おじさん」は、年齢や性別とは無関係に存在する。しかし、社会を変えるパワーを持っているのも彼らなのだ。
今やそんな「おじさん」に愛される識者の一人となった古市は、自らも彼らの仲間入りをしつつあることを自覚する。だからこそ「若者」の気持ちを忘れない「おじさん」として、ズレの橋渡しを担おうとするのだ。願わくはその困難な航海に幸多からんことを。
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新潮新書・799円=7刷9万部