2014年06月19日

本田圭佑のはじまり

 ギリシャ戦。大変陳腐な言い方になってしまうが、鍵を握っているのは、本田圭佑のプレイにある事は間違いない。

 コートジボワール戦の先制点は、個人能力による得点という視点から言うと、日本代表史に残る一撃だった。スローインからの長友と香川の巧妙なつなぎを受け、非常に深い右足の持ち出しで、利き足の左足で強いインステップキックができるポイントに正確にボールを置く事に成功、一瞬バランスを崩しながらも強烈にゴールキーパのニアサイドを破った。本田と言う選手の、繊細な技巧と体幹の強さが、組み合わされた実に美しい得点だった。
 そもそも、過去の日本代表において、このような個人能力の冴えだけで、敵DFを粉砕し得点できるタレントは、過去もカミカゼ釜本とドラゴン久保しかいなかった。しかも本田は、この強烈な一撃を、よりによってワールドカップ本大会で決めてくれたのだから。

 いや、この時点で感じた未来への極めて明るい雰囲気は、中々よかったですよね。

 しかし、物事はそううまくは続かない。
 前半30分過ぎから、コートジボワールの攻勢に押し込まれる時間帯が続く。そして、この時間帯の本田のプレイ選択には疑問が残った。
 日本は、この日序盤から非常に慎重な対応で後方を厚くしていた。また、チームとして安全策を取るつもりだったのだろう、最終ラインから細かくつながず、前線へのロングボールを多用した。これは、初戦を大事に戦いたいと言う、ザッケローニ氏の意図だったのだろう。前線でのボールキープがうまい大迫をスタメン起用したのも、その現れだったと思う。実際、大迫は屈強なセンタバックにマークされながら、相応に空中戦を取りボールを収めた。
 それを受けた本田は、再三単身で突破を狙う。けれども、懐の深いコートジボワール選手を抜き切れず、逆にボールを奪われる事が多かった。そのため、日本は一層押し込まれてしまった。同点ゴールも、そうやって本田がボールを奪われたのが起点となったもの。この場面に限らず、本田はサポートして来る岡崎や長谷部を使い、チームとしてゆっくりしたボールキープを狙うべきだった。
 一方で、35分くらいだったか、本田が単身突破を成功しかけた場面は鮮やかだった。本田らしい技巧と強さを発揮して、単身中央突破、最後DFにブロックされたものの、素晴らしい前進だった。おそらく、本田は大事な大一番、押し込まれた苦境を、自らの能力で打開しようとしたのだと思う。そして、この場面に代表されるように、状況に恵まれれば、本田は1人で全ての問題を解決し得る能力を持っている。しかし、サッカーは90分間フルタイムで無理をし続ける競技ではない。時間帯によってはテンポを落とし、状況によっては我慢が必要だ。この日の本田のプレイは、決して悪い意味で独善的とは言わないが、過剰な責任感による無理のし過ぎに思えた。

 その他の場面でも、本田の無理し過ぎは散見された。
 後半立ち上がり、日本は久々に攻勢が取れた。本田を筆頭に大迫、岡崎がよいフォアチェック。日本らしいパス攻撃が奏功しかけた。さらに遠藤を投入、よい攻撃が続いた。ところが、この時間帯、本田が凝ったラストパスを狙い過ぎ、結果的に崩し切れなかった。これは以前から本田に見受けられる課題でもあるのだが。
 前半、麻也の判断よい前進から作られた攻撃、本田はちょっと溜めて進出してくる内田に渡し、その後の内田の個人技による決定機を演出した。このように、いつも凝った攻撃を選択せずに、ちょっと絡んで変化を付けるだけで、本田はもっと好機を演出できるはずだ。

 ドログバは登場した直後、日本の左サイドを強引に突破しようとした。それに対して本田は並走してショルダーチャージでドログバのバランスを崩し、自らの身体を入れる事で止めようとした。しかし、これは相手が悪く、逆に飛ばされ突破を許してしまった。結果的に日本の守備ラインはドログバの前進を恐れ引いてしまい、状況を一層悪いものにしてしまった。ドログバのような選手を止めるためには、まずよい体勢でボールを渡さない事、もしそれに失敗したら粘り強く複数の選手で押さえ込む事。だから、この場面も本田は1人で無理をせずに、後方からカバーする長友あたりと落ち着いて連係すべきだった(そう言う意味では、終盤逆襲から単身突破を狙ってきたドログバに対して、外側から並走しスライディングタックルで止めた内田は秀逸だった)。
 敵の大エースを自ら封じ込めようとした本田の意気は素晴らしかったのだが、ここはもう一段の冷静さが欲しかった。

 先制点なり、前半の突破の場面で見せてくれた本田の個人能力は格段のものだった。そして、こう言った鮮やかな場面を見せてくれながらも、この日の本田のプレイには、上記クドクドと講釈を垂れてきたように、不満も多かった。
 いつも無理をする必要はないのだ。常に頭を働かせ、チームメートと連係し、本当の勝負どころで格段の個人技発揮してくれればよいのだ。
 そして、本田はこのコートジボワール戦で学習したはずだ。過剰な責任感による無理のし過ぎではなく、適切な責任感による冷静な判断で、本田はもっともっと輝く事ができる。
 人間を最も成長させるのは失敗経験だ。そして、ワールドカップ本大会での手痛い失敗経験は、最大の糧となるはずだ。このコートジボワール戦の一連の失敗経験は、本田圭佑と言うインタナショナルクラスのスタア選手を、本当の意味でのワールドクラスのスーパースタアにするものだったのではないだろうか。

 ブラジルに向かう飛行機で、この雑文をしたためている。
 サッカー王国におけるワールドカップ。
 ギリシャ戦、そしてそれ以降。さらに大化けした本田圭佑が、私にかつてない歓喜を提供してくれる事を信じて疑わない。
posted by 武藤文雄 at 06:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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