権力を道具に! 変化に対応できる組織に必要な「独裁力」とは

印南敦史 | ライター
2014.06.19 07:30

独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門


独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門』(木谷哲夫著、ディスカヴァー・レボリューションズ)の冒頭で著者はまず、「権力」に対する新たな認識を提示しています。いくら意思決定ができたとしても、権力がなければ組織を動かすことは不可能。それどころか権力がなければ、そもそも意思決定すらできない。だからこそ、決めるためには「権力」が必要だという考え方です。

とはいえ、権力は非常に魅力的なものなので、権力欲にとりつかれ、それを追い求める人たちがいるのも事実。だから、組織を通じてなにかをやり遂げたい人はまず、「権力亡者」に勝たなければならない。そのためには権力を乾いた視点で合目的的に活用し、なにかを実現するための道具として使いこなす必要がある。

つまりはそれが、本書の言う「独裁力」。組織を率いて意思決定を行ない、実行し、結果を出す力だということです。その重要性について「序章 独裁力とは何か?」にまとめられているので、正しく理解するためにご紹介しておきたいと思います。

           

いまなぜ、「独裁力」か?


組織が生き残るために独裁力が必要なのは、組織を取り巻く環境が、国内外ともに急激に変化しているから。だとしたら、コンセンサスを重視しすぎる重たい組織や、安全を狙って変化を嫌う人たちばかりの組織では生き残れないわけです。いわば強い組織や大きな組織ではなく、変化に対応できる組織だけが生き残れるということ。

どんな組織も、創業から何十年も断つと老化し、組織の慣性が支配するようになるもの。だとしたら、組織の生き残り能力は、慣性を打ち破れる権力の強さによって大きく左右されることになります。

ここで意識しておくべきは、独裁力は、自分が出世するために必要なだけではないということ。いま求められているのは、乾いた視点で組織の権力メカニズムを設計できる「権力エンジニア」というべき人。

そして組織の生き残りのためには、


◯あるべき姿についてのビジョンではなく、それを実現するための独裁力が重要だということを理解する
◯権力欲で動くのではなく、乾いた視点で、道具として権力を活用する
◯「正しい権力者」を見出し、その人の能力を最大限生かす仕組みをつく
◯権力者を有効にサポートするフォロワーシップを育成する


といったことが重要になるといいます。(6ページより)


コンセプトを現実にする


組織でなにかを成し遂げたいという強烈な思いのある人こそ、独裁力を身につける必要があると著者は記しています。実現したいことや成し遂げたいコンセプトがはっきりしている人は、あるべき姿を具体的にイメージできているはず。しかし、なにより重要なのは、それを現実化すること。

そこで大きな意味を持つのが、軍事力を準備、輸送、展開して、軍事作戦を遂行することを意味する軍事戦略用語の「戦力投射(プロジェクション)能力」だとか。PC内部のスライドをプロジェクターに投影するように、机の上に書いた戦略を、実際の戦場で映し出す能力。いかにいい戦略があって、戦力が揃っていても、それを現実世界に投影する能力がなければ無意味だという考え方です。

そして現実世界に「投射」する際に必要となるのが、権力を掌握し、組織の持てる力をフル動員することで、つまり、これが独裁力。「あるべき姿を頭のなかで構築できるだけではなく、組織を使って実現する能力」ということにもなり、次のように考えるとわかりやすいそうです。


リーダー力=コンセプト力(構想力)+独裁力(組織を動かす力)
(9ページより)


リーダーにとっては、構想力だけではなく、独裁力も重要。そして対立する意見が渦巻くなかで意志を貫徹するためには、原理原則をまず頭で理解し、汚い手段にも免疫をつけ、肝心なときに力が発揮できるよう、常にトレーニングする必要があるといいます。(8ページより)


独裁力の2つのステップ


反対意見が渦巻くなか、自分の望みどおりに意思決定を行なって実行するには、気合いや根性論ではなく、権力のメカニズムについて理解し、権力リテラシーを鍛えることが必要。そして独裁力を発揮するためには、2つのステップが大切。


ステップ1 権力基盤を構築する
ステップ2 動員力を高める
(13ページより)


ステップ1が大切なのは、権力を行使するためには安定的な権力基盤を構築することが先決だから。そして権力基盤を構築するために役立つのは、自分の支持グループを「1 コア支持層」「2 コア予備軍」「3 一般メンバー」に分ける考え方。コア支持層を特定し、その人たちを完全にモニターしてコントロールできれば、権力基盤を安定させることが可能になるわけです。そしてステップ2は、組織をフル動員するために広範な支持連合を構成すること。(12ページより)

この考え方を基盤として、以後の章では、反権力との向き合い方、権力基盤の構築法、裏ワザなどがこと細かに解説されています。組織をなんとかまとめたいと考えている人にとっては、大きな助けになるかもしれません。


(印南敦史)

  • 独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
  • 木谷哲夫|ディスカヴァー・トゥエンティワン
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