5 小須田部長とワンダーフォーゲル部
が〜んばれ〜。
まけ〜んな〜。
ち〜から〜の、かぎ〜りぃ〜生きてやれ〜。
とほほほ…… てやんでぇ……。
小須田部長のテーマソングを口ずさむあたしから白いエクトプラズムめいた物が漂っている訳ですが、拝啓父上母上――――その後、如何お過ごしでしょうか。
る〜る〜。るるるる〜る。
「父さん……富良野の冬は段々厳しさを増し、僕は未だ、この田舎での暮らしに中々慣れない訳で……」
純〜。蛍〜ゥ。
る〜る〜。るるるるる〜ぅ。
「――時に僕は、どういう訳なのか霧島と真夜中の校舎を探索中な訳で……」
『おーい石川石川』
「相方の霧島のアホーは、全く僕の話を聞いてくれない、所謂。空気読めない痛い子な訳で……」
『石川石川』
「父さん、正直僕は、さっさとこんな奴と分かれ正しい青春を……素敵な彼と謳歌するべきな訳で――」
『だから石川』
「なにさッ!?」
あたしが倉本聰ワールドへ現実逃避することに一体何の不満があるのしょう?
こやつは。
あたしゃ全身から不機嫌のオーラぷりぷりと発散。
霧島の方へ向く。何故か彼の表情が青い。
「足下」
「あし?」
そこに何らかの意図を感じ、彼が指すその指先を辿ると。
おっや〜あ? 床がねェなぁ〜?
「そこ、階段なんだけど……」
おK。
皆まで言うな。
この場合あたしが取れるリアクションは一つだ――。
期待通りに逝ってきますorz
「――ぐべらぼげらべべらバキュラッ!?」
何故か某STGで登場した256発弾を当てないと壊せない強敵の名をそこに交え。
あたしは世界最速のハリネズミ。ソニック・ザ・ヘッジホッグも顔まっつぁおな勢いをもってして、階下目がけて超☆転☆落。
どっかーん!
衝撃! ベスト! プラァーイィィィッスっっ!
やがて踊り場へ激突。
見事リノリウムの床をぶち抜き、派手に人型に陥没。
そのまま気絶する。まんまトムとジェリーだ。
葱少なめ、赤いおつゆはだっくだくだく……カ○メ野菜生活。リコピンがデコピン。あたしピクミン。
意味など聞くな、あたしにもまっこと分からんですたい。
「お、おい石川……大丈夫?」
上から身を案じて霧島が声を掛けてくる。わぁ亨くん意外と優しいのね惚れちゃいそうだわ――ってんな訳ねぇだろっ!
ぴくりぴくぴくとアニメの演出さながらに痙攣し、「ぷしゅうぅぅ」と全身からは謎の音声発生。サイヤ人でもこうはいかねーし。
「い……生きてる? 生きてたら返事くらいしろよな……」
大丈夫生きてます生きてます。上から聞こえてくる霧島の声に、ヘロヘロガクガクな腕をどうにか真上へと揚げ、勝手に殺すなと無意識にサムズ・アップ。
人間中々死なないもんですね。
正に動物奇想天外。……あべし。
「あ、逝った」
すんません今の全力で撤回。
涙ながらにあたしは思った。これで大丈夫なら人生大半の事には耐えられる気がするよっ!
ほんと凄げーよあたしっ!
今ならセクシーコマンドーでマサルさんにさえ勝てる気がする! よっしゃキャシャリンばっち来いッッ!
意味不明なまま血がどばどば出まくってるけど死ぬの!?
……あかん。意識が朦朧としてきた。
もうゴールしても……いいよね……?(異論は認めない)
「おーいいしかわー?」
へんじがない ただのしかばねのやうだ
「墓石には『ヘタレ』って刻むぞ」
――うんそいつぁなかなかグッドセンスだね霧島。後はよろしく頼んだ。あたしゃポックリ逝く。
「お。白か」
……もとい。
いくら不可抗力とは云え、捲れたスカートの中身を覗くコイツは何なのっ……。
こめかみがまたぴくりぴくクミンく。
あたしのぷりちーな下着を拝む(ついでに触る)このセクハラ馬鹿を本当どうにかしてしろ!
おちおち死んでもいられねーヨッ!
「う〜んホントええケツやな嬢ちゃん」
霧島があたしの臀部をすりすりやらモミモミやら。
……触り方がやけにおっさん臭いのが無性に腹立つわ。ブチ切れたわ。
「あっ……いやん――らめぇ///」
――等と現在進行形で桃色わんだほーな痴漢行為をされとるあたしですが、いかんせん頭のCPUがショートしてそれどころでは無いのだ残念だったなおめーらよっしゃ腹筋しようか?
斜線に萌えるな騒ぐな。
あんたら四十五度マニアかそうか変態か――って訳が分からんわ程よくゲシュタルト崩壊そうかナニの角度か。
「いやん。石川さん破廉恥///」
台詞に三本線入れんな! うぜぇぇッ!!
じゃあかぁしいわっ!! ――の一括と共に、黄泉から舞い戻る大魔神石川が全力デスシャウト。
「痴漢は犯罪じゃぼけぇぇぇっ!!」
ぜーはーぜーはー。HPゼロでMPも底を尽きたわ! どないせぇっちゅうねん!
「おや、おかえり石川」
空気読めない奴こと霧島はなんの悪びれもなく爽やかに歓迎のハグ包容。
……あああ頭が痛ぇ超ー痛ぇ豊川悦司みたいにボンバヘッしちゃうぞ?! 超能力発動しちゃうぞ!?
……若干ネタが古いな。
「武田真治と共演してた奴な」
「人の脳量子波に干渉してくんなぼけえええっ!」
人革連のデコちゃんみたいにあたしが叫んだ後、ぴしっと柱に亀裂が走った事については最早言うまでもない。
断じてあたしの所為ではない。
すべて霧島の所為だ。
とりあえず一発殴っておこう、げしっと。
そしてあたしはまた拳を振り上げるのであった。
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