検察改革:取り調べ可視化拡大 目撃者聴取も対象

毎日新聞 2014年06月18日 21時08分(最終更新 06月18日 23時46分)

 検察の取り調べの録音・録画(可視化)について、最高検は18日、罪名に関わらず、供述が立証の中心となる事件の容疑者の取り調べと、犯罪被害者や事件の目撃者などの事情聴取を、新たに試行の対象に加える方針を明らかにした。裁判員裁判の対象事件や特捜部の独自捜査事件など、以前から試行対象としてきた事件は「本格実施」に移行する。全国の地検に通知を出し、10月から実施する。対象事件の限定を解き、裁判員事件や独自捜査事件以外に広げることで、録音・録画の件数は大幅に増える可能性がある。

 2010年の大阪地検特捜部の証拠改ざん・隠蔽(いんぺい)事件を受けた検察改革から3年が経過したことを受け、新たな方針を明らかにした。

 最高検は録音・録画について、公判で取り調べ状況に争いが出た場合に、録画した映像で供述の任意性や信用性を立証できるほか、録画内容そのものが有罪を証明する証拠として使えるケースもあると指摘。一方、容疑者が萎縮したり、組織犯罪では報復を恐れて関係者が供述を変えたりするような問題点があるとしている。

 今後は、従来の対象事件以外でも、物証などの客観的証拠が十分でない自白事件や、捜査段階で容疑者が否認したり、主張が変遷したりした場合など、供述が立証に重要となる事件では、試行的に録音・録画を実施する。被害者や参考人についても、幼児が事件に巻き込まれた事件や、容疑者の親族への参考人聴取などを念頭に、供述に揺れが生じる疑いがあるケースも対象に加える。

 一方で、供述が得られなくなるおそれがあるような場合などは録音・録画は行わないとしており、どのような事件を試行対象とするかは個々の検察官の判断に委ねられる。

 検察は裁判員制度の実施を前に08年から全国の地検で、裁判員裁判の対象事件について録音・録画の試行を開始した。証拠改ざん・隠蔽事件後に設置された法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」の改革案の提言を受けた検察改革で、11年3月以降、独自捜査事件や、容疑者に知的障害や精神障害が疑われる事件に対象を拡大した。

 記者会見した最高検の三浦守・公判部長は「本格実施とは、検察の運用として後戻りはしないという意味。今後さらに積極的に実施していく」と述べた。【吉住遊、近松仁太郎】

 ◇解説 有効な「武器」に

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