(2014年6月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス大統領〔AFPBB News〕
アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス大統領が16日に国民に向けて行った演説により、ソブリン債務のデフォルト(債務不履行)がまた1つ発生する公算が強まった。
アルゼンチン政府は米国の最高裁判所に対し、アルゼンチンの債務再編に応じていない債権者への支払いを命じた下級審の判決を見直すよう求めていたが、これが退けられたことを受け、大統領がアルゼンチン政府は「ゆすり」には決して屈しないと述べたのだ。
Q: 米最高裁の決定により、いわゆる「世紀の債務裁判」は終結するのか?
A: ほぼ終結する。この決定は、ニューヨーク連邦地裁のトーマス・グリーサ判事が2012年に下した判決が有効であることを意味している。
2012年の判決では、2005年と2010年の2度にわたる債務再編に応じて新しい債券を受け取った債権者(新債券保有者)にアルゼンチンが支払いを続けるのであれば、債務再編に応じなかった債権者(不服債権者)の保有債券についても、負っている金額を全額支払わねばならないとしている。
ホールドアウト(ゴネる人の意)債権者とも呼ばれるこの不服債権者を主導しているのはNMLキャピタル。米国の富豪ポール・シンガー氏が支配するヘッジファンド、エリオット・キャピタル・マネジメントの子会社だ。
Q: アルゼンチンはなぜすべての債権者に支払いをしてこの問題を決着させないのか?
A: アルゼンチンがデフォルトした950億ドルの債務のうち、約93%の債権者は債務再編に参加した。この結果、アルゼンチン政府によれば、デフォルト状態の債務の残高は未払いの利息も含めてざっと150億ドルになっている。
今回問題となっている金額はこれより小さく、NMLとそのパートナーが持っている債権は約15億ドルだ。これだけならアルゼンチンは支払えるが、同国には外貨準備が280億ドルしかないため、すべての不服債権者に対して150億ドルの支払いを同時に行う余裕はない。
アルゼンチンの4つの選択肢の実現可能性
Q: アルゼンチンにはどんな選択肢があるのか?
A: 大きく分けて4つある。第1に、NMLへの支払いを拒否するという選択肢がある。ただこれを選べば、かつて債務再編に応じた新債券保有者に対しても自動的にデフォルトすることになるだろう。
そうなれば、国際資本市場へのアクセスを回復しようというアルゼンチンの動き――パリクラブ(主要債権国会議)と先日和解したこともその1つだ――は後退を余儀なくされる。大規模なシェールガス田の開発資金を新規借り入れで調達したいアルゼンチンにとって、これは大きな代償だ。
実際、フェルナンデス大統領は16日、再編された債務に関する支払いは続けると約束している。