日本Nginxユーザ会が発足。開発者Igor Sysoev氏が語る、Nginxが生まれ、商用化された理由

2014年6月19日

軽量で高速なオープンソースのWebサーバとして知られるNginx(エンジンエックス)のユーザー会「日本Nginxユーザ会」が18日発足し、都内で最初のユーザ会が行われました。

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ユーザ会をバックアップしたのは、Nginxの商用版である「Nginx Plus」の国内販売パートナーとなったサイオステクノロジーと、コミュニティ活動の経験が豊富なハートビーツ。

来日中の、Nginx.incのCEO、Gus Robertson氏、CTOでNginxの開発者でもあるIgor Sysoev氏、ビジネス開発担当のAndrew Alexeev氏の3人がユーザー会に登壇し、日本でのコミュニティ活動に期待する発言が相次ぎました。

HTTPの世界は爆発的に成長している

Nginx,Inc. CEO Gus Robertson氏。

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Nginxは世界中で1億4000万ものサイトで使われています。もともとはIgorが一人で作っていたものがここまで育ったのは、コミュニティが助けてくれたからです。

HTTPの世界は爆発的に成長しており、Nginxはさらに成長する機会があると考えています。

Business Development担当Andrew Alexeev氏。

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NginxはモダンWebサーバだと考えています。開発されてから10年以上経過しているソフトウェアがモダンだというのは、いつもその時代に合った機能を加えてきたからです。

モダンなWebサーバとは、性能が予測可能な形でスケーラブルで高速でなければならず、クラウドや仮想環境にも対応していなければなりません。Nginxが目指すのはHTTPの処理についてはNginxが引き受け、アプリケーションにはビジネスに集中してもらう、ということです。

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Nginxはいわばユーザーコミュニティと一緒に進めていくプロジェクトであり、実際に使っている人たちの意見に注意深く耳を傾け、機能を実装していきます。ぜひみなさんの要望を寄せていただきたいと思います。

会社を作るのは簡単な決断ではなかった

Nginx,Inc. CTOでありNginxの開発者Igor Sysoev氏。

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私は1970年、カザフスタンに生まれました。はじめて手にしたコンピュータは日本のヤマハ製MSXで、1985年のことです。私は歴史や生物学、物理学などいろんなことに興味を持っていたのですが、大学でコンピュータサイエンスを選んだのはこのマシンを手にしたことが理由の1つでした。

今回初めて日本に来ました。日本文化には以前から興味があり、といってもアニメのような最近の文化はよく知りません。伝統的な日本文化、日本庭園、生け花、盆栽、俳句といったものに興味があり、好きな俳人は松尾芭蕉と与謝蕪村です。もちろん俳句はロシア語に翻訳されたものを読んでいますが、それでもこの二人の俳句はお気に入りです。

言い忘れましたが、妻と15歳の子供がいます。

2000年頃に、あるデベロッパーから「ApacheのProxyは高速化の役に立っていないのではないか」という話を聞いて、調べてみたら実際にそうでした。また、その頃はApacheの能力が、サーバあたり同時接続数が1000程度だったりもしました。

当時も軽量なWebサーバはありましたが、扱えるのはスタティックなコンテンツのみで、商用製品ではダイナミックコンテンツも扱えましたがオープンソースではありませんでした。そこで自分でオープンソースで軽量なWebサーバを作ろうと決心したのです。

軽量かつコンフィグレーションが容易で、オンラインアップデートの機能も最初から入れようと思っていました。開発を始めたのが2002年で、並行して名前を考え始めました。「エンジン」という発音が好きだったので、そこから紆余曲折を経て思いついた「Nginx」という名前は見た目もかっこいいしエンジンという音も含まれているので、これにしました。

2011年に会社を作った最大の理由は、開発をもっと迅速に行いたかったためです。

2009年、2010年頃はバグフィックスなどに追われて新規機能の開発がほぼ止まってしまっていました。ドキュメントもロシア語版しかなく、英語版を作る必要があるとも思っていました。

私は保守的な人間で、しかも10年も1人でNginxを開発してきたのですから、会社を作るというのは簡単な決断ではありませんでした。私はビジネスマンや起業家といったタイプではありませんから、会社を立ち上げるのも苦でした。しかしいまでは、共同創業者やビジネス担当者やマーケティングなど、助けてくれる人たちと出会えています。

以来、弊社には数人のデベロッパー、システムエンジニア、QA担当、ドキュメントのテクニカルライターもいます。ユーザーコミュニティ担当もいます。私はあまり社交的な人ではないですし、メールの返事を出すのも手間がかかると思うタイプなので、こうした人がいることはたいへん助かります。

そして昨年、はじめての商用製品「Nginx Plus」をリリースしました。

(そろそろ予定時間を過ぎることに気がついて)

おっと、僕は普段はこんなに長く話すことはほとんどないので、自分でも驚いています。では質疑応答にしましょう。

(質問)HTTP 2.0への対応予定はありますか?

(回答)すでにHTTP 2.0に似ているSPDY 3.1をサポートしているので、それほど大きな変更を加えなくてもHTTP 2.0のサポートが可能で、予定しています。

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タグ : HTTP , オープンソース

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