くらし☆解説 「介護や家事に外国人」2014年06月18日 (水) 

広瀬 公巳  解説委員

岩渕)くらし☆解説、岩渕梢です。
   きょうは、介護や家事に外国人、というテーマです。
   担当は広瀬解説委員です。
 
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岩渕)外国人が介護や家事をするという動きがあるんですか。

広瀬)そうなんです。
   日本の成長を支えるための外国人労働力の活用が本格的に検討されています。
   今週素案が発表された政府の成長戦略にも
   外国人人材を生かしていくことが明記されました。
   「高齢者などの介護」や「女性が行っていることが多い家事」といった
   私たちの暮らしにより身近なところでも
   外国人を活用しようという案がでています。
 
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岩渕)外国人があまり働いていなかった分野ですよね。

広瀬)日本ではいままであまりなかったことなので実感がつかみにくいかもしれません。
   そこできょうは、こちら、
    (1)なぜ外国人が必要なのか
    (2)海外ではこの分野で今どんな人が働いているのか
    (3)そして外国人労働者の受け入れにはどのような課題があるのかについて
     みていきたいと思います。
 
岩渕)まず、なぜ必要かということですが
 
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広瀬)まず、介護についていいますと、
   少子高齢化で人材不足がますます加速しますので
   外国人の若い人材を取り入れることが検討されています。
   団塊の世代が75歳を超える目安の2025年には、
   介護の人材が今よりも100万人程度多く必要だという推計もあります。
   先日、技能実習というこれまでとは異なる在留資格での
   受け入れを検討することが法務省の有識者会議で提案されました。
   留学生が介護福祉士の資格を取得した場合、
   日本に残れるようにする措置も検討されています。
 
岩渕)とにかく人がたりないということなんですね。

広瀬)一方、家事のほうでも労働力が必要な事情があります。
   こちらは、アメリカと日本で家事の時間を比較したものです。
   一日の中で日本人の女性が家事に費やすのは
   およそ5時間でアメリカよりも一時間近く長くなっています。
   そのひとつの大きな背景が男性が家事をする時間です。
   日本の場合、男性が家事に使う時間が少なく
   女性に負担が集中することになっています。
   男性の家事も考えていかなければならない問題ですが、
   外国人の家事代行が可能になれば女性が働きやすくなり
   社会進出に貢献できるかもしれません。
   「国家戦略特区」で外国人の家事労働者の受け入れを行う方針が
   これも成長戦略の素案で打ち出されました。
 
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   これから具体的にどのような在留資格を
   どのような条件で出すのかといった議論が行われていくことになります。
   そしてこうした動きは、外国人に働いてもらうのであれば、
   きちんと制度を整えて労働者として受け入れるということを
   あらためて考え直すきっかけにもなるかもしれません。
 
岩渕)実際にどんな人が日本に労働者としてくる可能性があるのでしょうか。

広瀬)それもまだ詳しいことは決まっていません。
   ただ世界ではどうなっているのか
   家事の人材を世界に派遣していることで知られる
   フィリピンの様子を見てきました。
       (VTR)
   こちらは一人暮らしをしている。マリア・ヘロニモさんのお宅です。
   64歳になるマリアさんの世話をしているのは
   住み込みで家政婦をしているビオレッタさんです。
   (ビオレッタさん)
        「掃除をして、皿を洗って、イヌの世話をします」。
   ビオレッタさんは知人の紹介で地方の島から出てきました。
   食事の用意や皿洗い、部屋の掃除や洗濯もビオレッタさんの仕事です。
   毎日血圧を測ったり、マッサージまでしてくれます。
   ビオレッタさんの出身は去年大きな台風に見舞われたレイテ島。
   厳しい生活を続けている田舎の家族に
   わずかな給料のほとんどを仕送りしています。
   (マリア・ヘロニモさん)
   「年をとってくると、家具の下を掃除できなくなるのよ」
   フィリピン政府は、
   ビオレッタさんのような若くて頼りがいのある労働力を
   積極的に活用しようとしています。
   こちらは、外国での就職をあっせんしている業者です。
   若い人たちに次々に海外での働き口を紹介しています。
   人材の派遣を国家政策としているフィリピンでは
   専門の役所が人材派遣の調整にあたっています。
   温厚な性格で英語が話せる人が多いフィリピン人が
   外国で行う職業で多いのは人を相手にするサービス業です。
   「ウエイターです。家事、家事、家事、受付です。」
   「自分にできることなら何でもやりたいと思います。」
   「家政婦さんはどうですか。」
   「OKです、サラリーさえよければ何でもやります」
 
岩渕)フィリピンでは外国で働いている人が多いのですね。
 
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広瀬)その背景はこちらです。
   フィリピンはまだまだ賃金が低く失業も深刻で貧困問題があります。
   一方で国民の半数が25歳以下という若い人口の国でもあります。
   国内の貧困、そして先進国との賃金の格差が背景に
   家事などのサービス業を中心に
   海外への出稼ぎ労働者として働く人が多くなっています。
   フィリピン人からの送金は
   国家予算の半分という規模の外貨獲得源になっています。
   フィリピンでは日本で働きたいという声をたくさん聞きました。
   インドネシアも人材派遣を積極的に行っており、
   ミャンマーやベトナムも可能性が期待されています。
   つまり人材を送りたいという国はたくさんあるということです。
 
岩渕)外国人の受け入れはどうして行われてこなかったのですか。

広瀬)日本人の雇用を守れなくなるのでないかといったことが心配されてきたからです。
   ほかにも様々な課題があります。
 
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   介護については、これまでごくわずかな人材を
   いわば外交上の特別枠で受けいれてきただけでした。
   技能実習やいうこれまでとは異なる受け入れ方が検討されていますので、
   例えば介護の質をどう確保していくのかなどの課題があります。
   介護福祉士の資格をとれたとしても
   言葉の問題はどうするのか、外国人が実際に生活をする地域社会での
   受け入れはどうするのかといった課題がたくさんあります。

   また家事については、
   家の中に他人が入ってくることになるわけですから、
   コミュニケーションを十分にとらないと
   思わぬトラブルにもなりかねませんので注意しなければなりません。
   日本人の場合でも同じことですが、
   雇用主と労働者側の信頼関係、人間関係がとても大切になってきます。
   
   またこの問題は、安易に外国人の力に頼るのではなく、
   日本人の力をどう引き出していくのかということと
   必ずセットで考えていくことを忘れてはならない問題でもあります。   
 
岩渕)どれも大切な問題ですね。

広瀬)このような課題をみていくと、労働力を活用するといっても、
   それは同時に文化も言葉も、ひとりひとり事情も違う人を
   受け入れる意味することになるのがよくわかります。
   特に人を相手にする分野の仕事での
   外国人の活用は決して簡単なことではありません。
   介護や家事といった身近な分野だけに、
   外国人労働者がいつどんな形で入ってくるのか、 
   どのような受け入れが行われていくのか。
   しっかりと見ていく必要があると思います。