STAP細胞の論文問題をめぐり、小保方(おぼかた)晴子氏の採用にも関わった理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(再生研、神戸市中央区)の林茂生グループディレクター(54)が、神戸新聞社の取材に応じた。理研の改革委員会が再生研解体を提言して以降、再生研幹部が個別取材に応じるのは初めて。林氏は「組織運営への批判は率直に認めるが、組織全体が否定されるのは心外。誠実に科学に向き合う研究員や日本の将来のためにならない」と訴えた。(岩崎昂志)
改革委は12日に提言を発表し、「(再生研に)不正行為を抑止できない構造的欠陥があった」と指摘。林氏は、小保方氏の採用時の審査や実験ノートのチェック、論文内容の精査で慎重さが欠けていた点を認め、「私を含めた執行部は大いに批判されるべきだ。(論文に疑義が出た後の)対応がもっと迅速だったらと悔やむ気持ちもある」と批判を受け止めた。
しかし、今回の事態は「特殊なケース」だったと強調し、再生研の解体に対しては疑問を投げ掛けた。林氏は「生ぬるい対応では納得は得られない」と危機感を募らせる一方で、「(再生研が)10年以上積み重ねてきた研究成果や、今回以外の問題対応への調査もなしに解体を提言するのは、さすがに不当ではないか」と反論する。現場の研究員からは提言への不安や憤りの声も出ているという。
林氏は「5年後、10年後の国際競争力を維持するためにも、冷静に組織を改革しないといけない」とし、今後、研究者としての思いを社会に示すための署名集めなどの取り組みも検討している。
STAP論文をめぐっては、16日に共著者の若山照彦山梨大教授が「STAP細胞があることを示す証拠はなかった」との見方を公表。林氏は「自身の成果を否定するのはつらいが、若山さんは間違いを公表することで責任を果たしたと思う」と語った。
林氏は、再生研の運営主体であるグループディレクター会議でセンター長や副センター長と共にメンバーを務め、今回の問題の自己点検チームにも加わっている。
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